『ストリートファイター6』ヒットの要因は初心者でも味わえる“気持ちよさ”にあり? ドライブシステムが生み出す爽快感と展開の速さ
6月2日の発売以降、対戦格闘ゲーム『ストリートファイター6』はリリース直後にプレイヤー数が100万人を突破したほか、格闘ゲームにおけるSteamの同時接続プレイヤー歴代1位を達成するなど、予想以上の盛り上がりを見せている。
これまで敷居の高いゲームというイメージが持たれがちで、実際に否定できない部分もあった格闘ゲームだが、「モダン」システムを始めとする初心者向けの要素を取り入れることで比較的遊びやすくなったことや、大盛り上がりだった『CRカップ』の影響もあり、今後も多くのファンを獲得していくだろう。
そんな本作を筆者もプレイしているが、歴代の『ストリートファイター』のなかでも最も楽しんでプレイできている。本作はプレイしていて気持ちよく、同時に格闘ゲームらしい読み合いの奥深さを楽しむことができるのだ。
ドライブシステムがとにかく強いゲーム
本作をプレイして真っ先に感じたのが「ドライブシステム」の強さだ。なかでも分かりやすく強いのが「ドライブインパクト」。これは相手の攻撃を受けながら攻撃するシステムで、カウンターヒットしたり壁際で当てるとコンボに繋げることができるので、成功すれば相手に大ダメージを与えることができる。
その反面、相手がドライブインパクトを打てる状態であればインパクトをインパクトで返すことができ、先に使用した側がコンボを食らってしまうリスクもあるし、相手に当たらなかった場合のスキも大きいのだが、リリース初期の現在では、返すのに慣れていないプレイヤーが多いため、リスクよりリターンが多い行動となっている。
格闘ゲームでは、初心者のうちは対処できないリーチの長い技があったり、相手の連携をガードし続けてしまったりといった「分からん殺し」にあいがちだ。ドライブインパクトは、こうした事態を簡単に解決してくれる初心者救済要素として機能してくれる。まれに明らかに格上のプレイヤーに苦し紛れで放ったインパクトが刺さり、まさかの逆転を生み出すこともあるほどだ。一方、上級者にはインパクトをいつ使用するかの読み合いや、リスク管理の要素を求めてくるなど、格闘ゲームの読み合いや差し合いを面白くする要素にもなっている。
ドライブインパクトと並んで強力なのが「ドライブラッシュ」。こちらは相手の攻撃を受け止める「ドライブパリィ」やキャンセル可能な技から発動できる、高速で前進するシステムだ。コンボを伸ばして大ダメージを与えたり、攻めの継続に用いたり、中距離から一気に間合いを詰めて攻めに転じたりと用途が多いため、立ち回りやコンボの幅を広げてくれる、研究しがいのあるシステムとなっている。
ドライブインパクトとドライブラッシュは、どちらも攻撃的なシステムかつ、的確に使用すれば試合を一気に決めてしまえるパワーを持っており、その点で本作は「システムが強い」格闘ゲームといえるだろう。このドライブシステムの強さは、本作に多くの利点を生み出しているのだが、なかでも試合が膠着する時間を減らし、スピーディーな展開を生み出している点は見逃せない。
格闘ゲームは相手のライフを削ること=攻撃することが勝利に直結するし、コンボを決めることで爽快感や、達成感を味わえる。一方で、相手に攻撃するまでの道筋は険しく、何をしたらいいか分からなくなる場面も少なくない。ドライブシステムはそうした敷居が高く感じる部分を理解しやすく、手の届きやすいものにしてくれているのだ。
一方でストリートファイターらしさも感じるシステム
とはいえ、本作は攻め一辺倒のゲームではなく、『ストリートファイター』らしい牽制技の振り合いや差し合い、読み合いの要素がしっかりと存在し、ドライブシステムもその中に組み込まれている。ドライブインパクトはキャンセルの効かない長射程の技に対しては強力だが、無暗に使えば手痛い反撃を受けてしまう。また、ドライブラッシュを用いて距離を詰めようとしても、相手の小技が置いてあれば止められてしまう。そのため、試合のレベルが上がるほど、まず相手に触れることから工夫がいるゲームとなっているのは変わらずといった印象だ。
その一方で、防御行動が攻めにつながりやすいことは本作の展開の速さに一役買っている。ドライブインパクトを返したり、牽制技をヒットさせドライブラッシュをしようしたり、相手のドライブラッシュを小技で止めたりといった、防御のためにとった行動が、そのままコンボに繋がり、大きなリターンを生み出すことも少なくないのだ。
また、本作はドライブシステムの影響で、ゲーム開始時からに一気にダメージをとられ、そのまま倒されることも珍しくないが、同時に逆転や拮抗した試合も生まれやすい。
ドライブシステムを使用するには「ドライブゲージ」を使用するのだが、これは最初から最大かつ、自動で回復するのでバンバン使っていける反面、ドライブゲージが空になってしまうとバーンアウト状態となり、一定時間ドライブシステムの使用が不可となったり、画面端でドライブインパクトを受けるとスタンしてしまったりといった不利を背負うことになってしまう。攻めるためにゲージを使用するほどバーンアウトのリスクも高まるので、攻めていた側が一気に不利を背負う展開も少なくない。
さらに、ドライブゲージの仕様に加え、ガードさせて有利な技が少ないこともあって、攻守が入れ替わりやすくなっている。そのため、ライフの奪い合いも起こりやすく、どちらかのライフがなくなるまで、常にワンチャンスで試合がひっくり返りかねない緊張感を味わえる。
スピーディーな展開で、目まぐるしい攻防が繰り広げられるタイプの格闘ゲームは、『ギルティギア』シリーズのような高難易度の「コンボゲー」というイメージが筆者にはあったが、本作は初心者にも分かりやすいシステムでそれを実現し、同時に『ストリートファイター』らしい地上戦の要素もしっかりと取り入れている。
また、本作はプレイをしていなくても何が起こっているか分かりやすく、ドライブインパクトやスーパーアーツ(いわゆる、超必殺技)の演出の派手さやカメラワークの良さから配信映えするゲームにもなっている。こうしたことから、本作は多くのゲーマーを引き付け、人気を獲得したのではないだろうか。