『ゼルダの伝説 TotK』という“自由で面倒な遊び場”に、なぜ我々は没頭してしまうのか

“自由で面倒”な『ゼルダTotK』に没頭する理由

移動すらパズルにしてしまうゾナウギアとウルトラハンド

 また、本作では広大なフィールドを「どう移動するか」も試行錯誤することとなる。馬に跨って街道を駆けることも当然できるのだが、川の向こうに行くためにはどうすればいいだろう。崖を登るのにもっと早く、楽な方法はないだろうか。といった風に、ゾナウギアとウルトラハンドを用いて目的地までスムーズに移動する手段を考えることができるのだ。

周囲にあるものを使って移動手段を確保するのは、それだけで一つの楽しみになっている

 ただし、ゾナウギアの扱いには慣れが必要だ。火によって氷が溶け、水は冷やせば凍るといった直感的に理解できる、現実世界の自然由来のギミックとは異なり、ゾナウギアをつかったモノづくりはこなれるまで失敗の連続だ。

 車はタイヤの向きを間違えて後ろ向きに進んでしまうし、翼のゾナウギアで空を飛ぼうとしても扇風機の位置が適切ではなく斜めに飛んでしまう。セグウェイ風の乗り物を作ったはいいが、稼働させるのが難しくリンクを置いてきぼりにして勝手に走っていくなんてこともあり、無数のトラブルが待ち受けている。結果的に、車をつくるより歩いたほうが早かったのでは? と振り返ることも少なくない。それでも、快適な移動手段を見つけられると達成感を味わえるし、設計図を保存すればブループリントで呼び出すことが可能となっているので、長い目で見れば時間をかけたモノづくりも無駄にはならない。

 こうしたゾナウギアを用いた工作は、移動手段の確保をパズルのように変化させている。周囲にある木材やトロッコとゾナウギアをどう組み合わせて乗り物を作るのか、手持ちのカプセルに入ったゾナウギアを使用すればより快適な移動ができるのではないか、というように移動手段を考えるのはそれだけでちょっとした謎解きなのだ。また、道中にある作りかけで放置されたような車や、コログを目的の場所に運ぶミニクエストは、工作のパズル的な側面を感じさせる要素であると同時に、乗り物作りの動機をプレイヤーに与えてくれる。

筆者が序盤に作った乗り物。実用性はほぼないが乗っているだけでテンションが上がる

遊び場として自由だからこそ、幅広く楽しめる

 広大なマップの探索を空から見渡すという形で促進し、移動もパズルのように楽しめる。そこにメインクエストという大きな目的を置くことで、プレイヤーは迷ったり、途方にくれることもなく無数の小さな目標を発見することができる。こうした動機づけの仕組みと、ここでは詳しく紹介しなかったストーリーやNPCの存在や、戦闘・謎解きといった様々な個別の要素が上手く噛み合うことで、本作は面倒だと感じさせながらも楽しめてしまう。むしろ、面倒なことを楽しませてくれるゲームとなっているのではないだろうか。そう考えてみると本作は、プレイヤーに「どう自由に遊んでもらうか」について徹底して向き合い、デザインされた作品だと筆者は感じた。本作でプレイヤーはハイラルという広大な遊び場で、ゾナウギアやウルトラハンドといった様々なオモチャを手にし、想像力を働かせて気兼ねなく、自由に遊びながら攻略を進めることができるという訳だ。

 余談となるが、上述したような本作の自由さはゲーム外での楽しみも促進している。SNS上にはゾナウギアを活用した「超装置」とでも呼べるような建造物がボス敵を蹂躙したり、とんでもない移動をする様子が拡散されている。また、進行の自由さは友人との話のタネにもなる。マスターソードをいつ手に入れられたかや、ずっと地下にこもって一ヶ月が経過した友人の話など、話題にこと欠かない。こうした共有の楽しさも、本作の遊び場としての完成度の高さが生み出しているのではないだろうか。

〈サムネイル:My Nintendo Storeより〉

■関連リンク
任天堂「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム

『ゼルダの伝説TotK』で“動くガンダム”を作ったプレイヤーあらわる 二足歩行でボコブリンの拠点も爽快爆破

5月12日に発売された『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(以下、『ゼルダの伝説TotK』)。シリーズ初のオープン…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる