深津貴之×バーチャル美少女ねむ対談 メタバースはAIのために、AIはメタバースのためにーーその共振が“世界”を拡張する
メタバースとAIは、互いを補いながら成長していく
ねむ:逆に深津さんは、メタバースがAIにもたらす恩恵はあると思いますか?
深津:AIとメタバースがきちんと接続されたら、データセットの収集はめちゃくちゃ効率化されると思います。たとえばいま「LoRA」でイラストを生成しようとしたら、モデルデータを何十枚と集めなければならないわけです。それって結構な手間じゃないですか。けれどたとえば、VRカメラでねむちゃんの活動ログを24時間記録しておけば、そこから何万枚というデータセットが簡単に作れます。
ねむ:たしかに! その視点は見落としていました。
深津:「この世にあるデータセットはもうすぐ枯渇する」という人がいますが、それは「世界」の捉え方が狭いだけです。メタバースの精度が十分に上がって、そこから適切に情報を吸い出せるようになれば、ほとんど無尽蔵のデータセットを手に入れたも同然です。
現実では集めにくい空間データを簡単に収集できることも、メタバースの強みです。リアルに再現した東京のメタバースのなかで、車を何百万台と走らせ、ビルに突撃させたり、逆走させたりして、そこで集めたデータで自動運転車のAIをトレーニングする、みたいなこともできると思います。
ねむ:なるほど。メタバースには何百万人という人が暮らしていますが、彼らが日々生み出しているあらゆる活動ログも、AIを成長させるための糧になりそうですね。
深津:GPT-5くらいになると、そうせざるを得ない気がします。AIはメタバースからデータを回収して、それを学習したAIがさらにメタバースの精度を高めていく。そんなキャッチボールで、AIとメタバースは互いを補完しながら、今まで以上の速度で進化していくのではないでしょうか。
ねむ:その世界観は、すごく面白いですね。実は正直なところ、ここ最近のAIの急速な進化に、メタバースはどうやって追いついていけばいいんだろうと思っていたので、「AIとメタバースが相互にアップデートしながら成長していく」というビジョンが聞けてよかったです! 本日はありがとうございました。
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