『ゾンビランドサガ』を手掛けたアニメ制作会社・MAPPA 3DCGディレクターが語る"魅力的なダンスシーン”を作る秘訣

3DCGディレクターが語るダンスシーン作り

 3DCGの表現力は進化し続けているが、特にアニメのダンスシーンやライブシーンにおいては目覚ましいものがある。3DCG"特有の不自然さ”は減り、三次元のアイドルとはまた違った魅力を楽しむ人達が、アニメファンに限らず増えてきている。中でも『ゾンビランドサガ』シリーズでは3DCGの強みを活かし、ライブシーンが魅力的に表現されていた。『ゾンビランドサガ リベンジ』で3DCGディレクターを務めた、アニメ制作会社・MAPPAの黒岩あいさんに話を聞いた。

3Dと2Dの魅力の違いは?

――黒岩さんが考えるダンスシーンにおける、3DCGが特化している点について教えてください。

黒岩:3DCGは、2Dの作画の描画が困難な場合に活用されることが多いです。たとえば、カメラワークが激しく被写体の角度が継続的に変化する場合や、装飾の多い衣装を着て振り付けを躍るダンスシーンでは有用です。カメラを引いてキャラクターのサイズが小さくなっても、3DCGではディテールが残るので、誰が何をしているのか判別しやすくなります。

――一方、2Dの作画アニメーションの魅力は?

黒岩:表情を豊かに描ける点は作画の魅力の一つです。3DCGの場合、「笑顔」「悲しみ」等の顔のパターンをあらかじめ用意し、そこから表情を作ることが多いです。絵が極端に崩れるリスクは少ないですが、どうしても画一的、ワンパターンな表現に陥りやすくなります。また、立体的に正しくても、アニメの絵としては違和感が出てしまいます。作画ではアニメ絵的なデザインでキャラクターを描けるため、違和感なく作品に没入できます。

 ただ最近では、この作画での表現力を3DCGに反映させて、手描きに近い表情を3DCGでも描けるようになりました。これはここ最近顕著に見られる進化です。『ゾンビランドサガ 』のライブシーンにおいても、表情は一番力を入れました。体の動きはモーションキャプチャーによって情報量が増すので、それに負けないくらい表情も情報量を増やさないと違和感があります。常に作画っぽいデザインになるよう意識して制作していました。

――1つのシーンで3DCGと作画アニメーションを混ぜるケースもあるのですか?

黒岩:『ゾンビランドサガリベンジ』においてメインキャラについては、1カット内で3DCGと作画を混ぜたり、手描きでレタッチすることはありませんでした。ダンスシーンではバストアップの場合は作画、カメラが引きの場合は3DCGと使い分けるケースは珍しくないですが、バストアップでも3DCGでチャレンジさせていただくことは多いです。

――黒岩さんもアニメーターとして携わった『ダンス・ダンス・ダンスール』では3DCGチームが下地を作り、そこからセル画アニメーターがダンスシーンを描いたそうですね。表現手段としてではなく、ダンスシーンを制作する工程の一つとして3DCGを活用するケースも増えているのでしょうか?

黒岩:増えています。ダンスの映像だけで作画アニメに起こそうとすると、動きと音楽を合わせるのは大変です。『ダンス・ダンス・ダンスール』では、カット制作の前に東京バレエ団に所属しているダンサーさんにモーションキャプチャー用のスーツを着て踊っていただきました。

 次に、収録したモーションキャプチャーの動きを作画ガイド用に作成された3Dモデルに流し込み、CGアニメーターが絵コンテに合わせて3Dソフト上でカメラを配置していきます。その後、バレエ経験者のCGディレクターの監修で予めバレエの基礎の動きを3D側で修正し、作画のガイドとして提出しました。ゼロからバレエシーンを手描きで描き進めるより、3DCGで下地を作ることで作画さんの負担は減らせたと思います。

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