あの日「サガ」シリーズに感じた高揚が、再び蘇るーーオフィシャルバンドによる至高のリアレンジ盤を聴いた

「サガ」リアレンジアルバム第3弾レビュー

 「サガ」シリーズ30周年を記念して、作曲家の伊藤賢治(Key)、上倉紀行(Key)、森空青(Gt)、坂田善也(Gt)、池尻晴乃介(Ba)、岡島俊治(Dr)といった実力派が集結し、2020年に結成された「サガ」オフィシャルバンド“DESTINY 8”のアルバム第3弾『DESTINY 8 - SaGa Band Arrangement Album Vol.3』がリリースされた。

 『ロマンシング サ・ガ2』『サガ フロンティア』などの楽曲を壮大なバンドサウンドでリアレンジし、新たな「サガ」シリーズの世界へと導いてくれた第1弾。『DESTINY 8 - SaGa Band Arrangement Album Vol.2』ではバトルシーンのサウンドを中心にゴリゴリのロックも聴かせた。

 そして待望の第3弾『DESTINY 8 - SaGa Band Arrangement Album Vol.3』は、イトケンが生み出すメランコリックなメロディはそのままに、心震わせる熱いサウンドにリアレンジ。また、『魔界塔士サ・ガ』の「魔界塔士」や『サ・ガ2 秘宝伝説』の「Save the world」といった植松伸夫の作曲による「サガ」シリーズの名曲も新たな装いで収録。「サガ」シリーズ楽曲を多彩なアレンジでアップデートし、新たな景色を見せてくれている。

 アルバムのオープニングナンバーは、「乱戦の指揮者」(『インペリアル サガ エクリプス』)。もともとヒーローソングのような勇ましいサウンドと哀愁漂うメロディラインが印象的だが、その特徴はそのままに、重厚感と疾走感あふれるサウンドへと変身。ぶ厚いサウンドは、まさしく「乱戦」といったところ。

 ハープの神々しい音色が印象的な「遥なる戦いの詩」(『ロマンシング サ・ガ2』)は、ハープがエレキベースの乾いた音色へと置き換えられ、途中でテンポアップして70年代ハードロック調に展開する。こうした大胆なアレンジは、原曲のもつメロディの魅力があればこそだろう。

 意表を突いたのは、原曲を浜渦正志が作曲した「Roman」(『サガ フロンティア2』)だ。もともとはピアノとオーケストラによる雄大さのある楽曲だったが、シンセとバンドサウンドを融合させたサウンドにリアレンジ。ピコピコしたシンセ音によるイントロに度肝を抜かれ、迫力あるエレキギター、そして80年代っぽい音色のシンセによるメロディ演奏。どこかイエローマジックオーケストラを彷彿とさせる部分もあり、この1曲だけでかなりの聴き応えがある。

 原曲を植松伸夫が担当した「魔界塔士」(『魔界塔士サ・ガ』)、「Save the world」(『サ・ガ2 秘宝伝説』)は、ゲームボーイだからこその、いわゆるゲーム音らしい8bitのチップチューンサウンドが伝説的。

 これがDESTINY8の手にかかると、ハードロック/ヘヴィメタルのサウンドに大変身。重たいリズムにツインギターが絡み合うサウンドは、ロック好きにはたまらないアレンジになっている。同時に、植松による原曲の魅力を再発見することもできるだろう。

 KOCHOによる歌唱と派手なファンファーレによって、どこかダークでゴシックなムードの「女道化師イゴマール」(『ロマンシング サガ リ・ユニバース』)は、ハイスピードのスラッシュメタルで表現。KOCHOによる歌唱も活かされた、怪しい雰囲気は健在だ。

 「最終試練」(『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』)は、原曲ではキャラクターたちが強大な敵に挑む決意や覚悟が、力強く壮大なサウンドで表現されていた。一方DESTINY 8のバージョンは、決戦前夜といった雰囲気。おのおのが静かに決意を固め、そして戦士たちが一人、また一人と集まってくるような様子が目に浮かぶ。

 また、金管楽器と重厚なコーラスが格好いい「死への招待状 -The Battle with Death-」(『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』)は、ド迫力のバンドサウンドへと変身した。ジャキジャキとしたエレキギターやアッパーのビートに体が自然と揺れる。聴き所はなんと言っても、ジャンルがデスメタル調に一変する後半だろう。デスボイスによるコーラスも登場し、「死への招待状」というタイトルが見事に表現された。

 終盤の2曲はアツいロックサウンドで、ゲーム終盤の高揚感が蘇る。「呼び醒まされた記憶 -The Battle with Sherah-」(『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』)は、原曲の時点でアッパーなハードロックサウンドだったが、DESTINY 8のアレンジでも原曲を踏襲。原曲にあるエレキギターとオルガンのソロバトルは、さらに熱くトリッキーに、超絶プレイで聴かせくれている。

 ラストを締めくくる「決戦!サルーイン -Final Battle with Saruin-」(『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』)は、原曲のアッパーなビートと迫力あるバンドサウンド、ギターやキーボードが奏でるメロディアスな旋律が印象的。DESTINY 8のアレンジも同様で、原曲をリスペクトしながらスケールアップした印象だ。アルバムを通して途中で遊びもありながら、最後にはやっぱり原曲の魅力に回帰する。それこそDESTINY8の手腕だ。

 ゲームボーイ、スーパーファミコン、PlayStationなど、ハードの進化によってそのサウンドも進化を遂げてきた。それらをDESTINY 8のサウンドで統一することで、なにが見えたのか。

 それはハードに関係なく音楽に表現された、メロディの素晴らしさや楽曲アレンジの緻密さ、そしてゲーム音楽に人生を賭けた情熱。それらが根底にあればこそ、どんなサウンドになっても楽曲の魅力は損なわれず、むしろ浮き彫りになる。このアルバムを聴いてあの日の高揚感が蘇り、押し入れからゲームボーイやスーパーファミコンを引っ張り出して、改めて「サガ」シリーズを楽しんでいる人も多いのではないだろうか。

■関連リンク
DESTINY 8オフィシャルサイト:https://sqex.to/destiny8

■商品概要

-パッケージ版-
商品名:DESTINY 8 - SaGa Band Arrangement Album Vol.3
発売日:発売中
収録内容:全10曲
品番:SQEX-11004
仕様:12cm CD / 1枚組
価格:¥3,300(税込)

権利表記:© 1989, 1990, 1992,1993, 1999, 2005, 2019, 2021 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

-ダウンロード版-
商品名:DESTINY 8 - SaGa Band Arrangement Album Vol.3
配信先:https://sqex.lnk.to/IrVJhi
※各楽曲の配信状況はリージョンやサービスごとに異なります。
※詳細は各配信サービスをご確認ください。

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