アウディジャパンが「サステナブル」に取り組む未来。浜松で見た“本気”。

 アウディジャパンと「サステナブル」な未来

 各メーカーが次々とEVモデルを発表するなど急速にクルマの電動化が進んでいるが、その一方で充電設備や充電時間といったインフラ関係も重要となってくる。その中で、環境問題も含めてEV・インフラ・環境・地域などを「サステナブル」な取り組みとしてトータルに昇華しつつあるのがアウディだ。2023年の年頭会見や、先月末に行われた浜松での取り組みについて紹介しよう。

アウディの完全電気自動車「e-tron」シリーズ

 アウディの完全電気自動車(以下BEV)、「e-tron」シリーズ。その象徴的なモデルがレーシングカーの『Audi S1 Hoonitron』だろう。一方、乗用車として市販されたのは2018年にブランド初BEVとして発表した「Audi e-tron」。スポーツ性能と普段使いの利便性を両立させたフルサイズSUVだ。これはコンセプトカーを市販化したもので日本市場にはそのクーペライクなシルエットを持つスポーツバックが先に導入された。また、昨年には『S』といった標準モデルよりも強力な電動パワートレインを持つグレードも追加されたのも話題に新しい。
 それに続く第2弾の『Audi e-tron GT』は4ドアクーペのシルエットを持つ、ポルシェと共同開発したJ1プラットフォームを導入したモデルとなる。ポルシェ版は後輪駆動もラインナップに加えるタイカンになるのだが、アウディの方は前後2基のモーターを持つAWD、いわゆるクワトロのみとこだわりをみせている。そしてこの『Audi e-tron GT』には高性能モデル『Audi RS e-tron GT』も用意された。昨年にはコンパクトSUV『Audi Q4 e-tron』、『Audi Q4 Sportback e-tron』が導入され、高い人気に。

2026年以降の新モデルはすべてがBEV

 アウディによれば2025年で内燃機関搭載車のニューモデル生産は最後となり、2026年以降新たに発表するモデルは全モデルがBEVになるという。また2033年には内燃エンジンの生産を停止(中国は発表時点では例外)する旨の発表がなされている。それを踏まえて2023年の年頭会見でフォルクスワーゲングループジャパン代表取締役社長 兼 アウディジャパンブランドディレクターである、マティアス シェーパス氏は「EVをもっと普及させるには日本市場におけるキーは急速充電の拡大にある」と解説した。公共の急速充電器の現状は2022年現在で全国に約7800箇所だが、その大多数が49kW以下。そして24時間365日営業になると半数以下になるという(アウディ発表)。


 そこでアウディは150kW(数字が大きくなれば充電時間の短縮になる)の急速充電ネットワークを順次強化し、本年中には150kWクラスの充電器を備えた店舗を全国で102店舗に拡大し、そこではアウディとアライアンスを組むフォルクスワーゲンやポルシェのEVも充電可能になる。

どうする未来の「サステナブル」なモビリティ

 さらにシェーパース氏のEV推進には脱炭素社会に向けての強い想いがある。実は長らくアウディジャパンに勤め、2021年に社長に就任したシェーパース氏。彼は就任当時からEVを中心にした「サステナブル」なモビリティメーカーとしての構想を掲げていた。その想いは販売を担当するディーラーにも共鳴している。それが、今回の記事で東海地区においてエネルギー事業を中心に展開するサーラグループの構成企業であるサーラカーズジャパンだ。同社はアウディ浜松の運営を行っている。今回、アウディ浜松では国内のカーディーラーとしては初となるカーボンニュートラルを実現、そのお披露目が行われた。会場にはメーカーやディーラーのみならず東海地方のエネルギーインフラを担うグループ企業や行政も参加。政令指定都市である浜松市の副市長も登壇する程の力の入れ具合であった。

 同店舗の電力を基本的に賄うのは、店舗屋上に設置された400枚のソーラーパネル。これは年間で17万3000kWhを発電する。このうち店舗で必要な7万1000kWh以外は売電、雨天など悪天候時に電力が足りない時は系列会社よりCO2フリーの電力を買ったり、カーボンニュートラルの天然ガスを買ったりして賄う。これにより実質的な店舗のカーボンフリーを実現したという。

浜松市は年間日照時間が日本トップクラス!

 もちろんBEVの充電に使われる電力も太陽光などの再生エネルギーになる。「アウディ浜松で充電する電気はぜんぶCO2フリー。そういう電気をお客さまに提供したい」という考えからスタートした」とサーラカーズジャパンの坂爪社長。また行政側として登壇した長田副市長は「浜松市は、年間2兆円の工業製品出荷額の40%強を輸送用機器が占めており、また一世帯当たりの自動車保有台数も政令指定都市で一番と、クルマに親しんだ街。今回の取り組みは市民から大いに関心を持たれるのではないか」とコメント。そして浜松市は実は年間日照時間が日本トップクラスの都市でもある。シェーパース氏が掲げてきた「サステナブル」なモビリティ社会への取り組みが結実するのに相応しい場所であったのだ。

 またシェーパス氏は会見にて娘から「環境に対して悪い自動車メーカーは格好悪い」と言われたエピソードを披露し「これからはかっこいいからクルマを買う、のではなく環境にいいモビリティを選ぶ、そんな時代になる」と取り組みを締めくくった。アウディが取り組むサステナブルな「モビリティ」の未来。その行く末に今後も注目していきたい。

■参考情報
アウディ
https://www.audi.co.jp/jp/web/ja.html

アウディ浜松
https://www.audi-hamamatsu.jp/ja.html

サーラグループ
https://www.sala.jp/ja/index.html

サーラカーズ
https://www.salacarsjapan.co.jp/

浜松市
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/

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