アクシーで“脱サラ”したNFTプロゲーマーのYUU 世界大会優勝の快挙は「緻密なゲーム攻略の分析」から生まれた
2021年に話題となった「NFT」に続き、2022年は政府が「Web3」を国家戦略と位置づけ、推進していくことを発表。
あらゆる産業や業種でWeb3やNFT、メタバースなどの活用が本格検討されるようになり、「Web3元年」と称されるほど大きなトレンドとなった。
そして、2023年に予想されるのが、ブロックチェーンゲーム(以下、NFTゲーム)の台頭だ。
NFTゲームといえば、2021年に世界的なムーブメントを巻き起こした『Axie Infinity』(アクシーインフィニティ)が記憶に新しいが、ここに来てスクウェア・エニックスやセガ、バンダイナムコ研究所といった大手ゲームパブリッシャーが次々とNFTゲームヘ参入を表明。
従前と比べ、さらにNFTゲームの隆盛が期待されている。
そんな成長著しい業界において、“NFTプロゲーマー”として活躍しているのが、YUU氏(@YUU_AxieLabs)だ。
2022年11月に開催された『Axie Infinity』の世界大会では、日本人4名のグループで参加し、並み居る強豪を抑えて堂々の優勝を収めた。
今回は、会社員からNFTプロゲーマーへ転身した理由や、日本のNFTゲームの未来についてYUU氏に語ってもらった。
最初は趣味から始めたNFTゲームが、いつのまにか虜に
──まずはYUUさんの自己紹介からお願いします。
YUU:現在はカナダを拠点とするゲームギルド「METAT8」に所属し、フルタイムのNFTプロゲーマーとして活動しています。また、「YGG Japan」のアンバサダーも務め、広くNFTゲームの魅力を伝えるために尽力しています。
直近では、NFTゲームの火付け役として知られる『Axie Infinity』の世界大会が2022年11月にフィリピンで開催され、日本人チームとして参加したんですが、僭越ながら優勝しまして。賞金70,000ドルを獲得することができました。
──そもそも、NFTゲームを始めたきっかけは何だったんですか?
YUU:もともとは、SIerとして12年くらい働いていたんですが、2019年に日本発のNFTゲーム『My Crypto Heroes』に初めて触れたのがきっかけです。
ゲームをプレイすることでもらえるNFTのアイテムをトレードしたり、強いアイテムをゲットしたらマーケットで売ったり、キャラクターを育成して強くしたものを売るなど、最初は取引の側面から趣味の延長線で楽しんでいました。
ただ、趣味とは言いつつも売買記録をスプレッドシートに残し、どのキャラクターが売れやすいか、というのを分析していましたね。
実は昔から1つのことにハマると、とことんのめり込むタイプで(笑)。
『桃鉄』も最長の99年までやりましたし、アニメも当時流行っていた作品を何度も見返すなど、深く掘り下げていくのが好きなんです。
また、2020年からはNFTゲーム関連のブログを立ち上げ、海外でトレンドになっているNFTゲームや最新の情報、遊び方などをキャッチアップして発信することも始めました。
ブログを執筆するために、いろいろと情報収集していくなかで見つけたのが『Axie Infinity』でした。
2020年8月くらいからやり始め、そこから通勤の合間やスキマ時間を見つけてプレイを続けたんです。
当時は500円分のトークンをもらえたので、「お昼ご飯代、稼げるじゃん」と思いながら取り組んでいましたね(笑)。
「好きなことをやり続けられる」のがNFTゲームだった
──2021年に脱サラし、本格的に「NFTゲーム1本で食べていく」ことを決めたそうですね。
YUU:SIerをずっとやってきたんですが、肌に合わなかったというか。
嫌なことはやりたくないなと。そう思っていた部分もありました。
一方で、NFTゲームは苦にならずに、好きなこととして取り組めました
『Axie Infinity』にはブリードというキャラクターの育成機能があるんですが、要はゲームで勝てる需要の高いキャラクターを育成できれば、市場で買い手がついて、利益を出すことができるわけです。
2021年にNFTバブルが来て、投機目的で『Axie Infinity』に参入する人も増えるなか、「どんなキャラクターを作れば売れるのか」というのを、ひたすらプレイして研究していました。
市場の売れ行きや、売り手がつくキャラクターのニーズ分析など、ゲームのリサーチにかける時間が膨大になってくるので、その時間というのは楽しく過ごせるわけではありません。
でも、「ゲームに関連することをやっている」というのがモチベーションにつながり、嫌になることはなかったですね。
『Axie Infinity』が最盛期のころは、1日のアクティブユーザー数が280万人を超えていて、キャラクターが足りてなかった。
つまり、供給したら売れる状態だったんです。そこで、自分がブリードしてNFTを発行して売ると言うのを永遠に繰り返していたところ、収入が安定してきて。
家族を養えるだけの蓄えができたタイミングで、サラリーマンを辞めてNFTゲーム1本で生活していくのを決意したんです。
キャラクターの製造販売には「ゲームをやり込む姿勢」が大事
──現在の収入源としては主にどのようなものがあるんでしょうか。
YUU:3つほどありまして、まずはプロゲーマーとしてMETAT8に所属しているので、そのゲームギルドからの給与です。
2つ目は『Axie Infinity』のブリードを使ったキャラクターの製造販売で、3つ目は大会での賞金です。
キャラクターの製造と、大会へ出場して賞金を得ることは、互いに関係性が深く、プレイヤーからの需要が高いキャラクターを生み出すには、自分自身がゲームをプレイし、リサーチして、マーケットの需要を見つけていく必要があります。
『Axie Infinity』で言うと、自分の思う最強の技を持った「アクシー(キャラクター)」の組み合わせが、なかなか市場に存在していないことが多々ありまして。
だったら「マーケットに存在していないなら、自分で作ればいい」というマインドで、キャラクターの育成にコミットしていました。
ただ、単にキャラクターを育成してもそれが売れるわけではなく、「ブリードするためにゲームを攻略していく」という姿勢が肝になるんです。
ブリードを生業にするためには、ゲームをやり込まなくてはならないので。その副産物として、ゲームスキルも向上させることができたと思っています。
また、自分で育成したキャラクターでバトルに出場し、大会で勝つことができれば、そのキャラクター自体の希少性や知名度も上げられるわけです。
こうしたなか、2021年10月に“アクシーの最強セット”というゲーム攻略には抜群のキャラクターを販売したところ、海外のトッププレイヤーからDMが来るほど話題になったんです。
自分で作ったアクシーをTwitterで宣伝し、マーケティングしていくことで、僕自身もフォロワーが増えていったんですよ。
──NFTプロゲーマーとして、ズバリどのくらい稼げるものなんでしょうか?
YUU:振り幅が非常に大きいのが『Axie Infinity』の特徴でして、アクシーの最強セットを製造して販売していた全盛期のころは、月収で1億円の利益を出したこともあります。
一方で見誤ってしまい、大きな損失を被ることもあり、数千万円のマイナスを出したこともありますね。
ただ、前提としてそれなりのマーケット規模がないと成り立たないわけで、現在はマーケットの縮小に伴い、取引規模は全盛期の100分の1くらいになっています。
そのため、現状では毎月100万円くらいを目標にプレイしています。