LGBTQの認知を広めるYouTubeクリエイター・かなたいむ。の奏太が挑戦を語る 「自分の動画が誰かのなにかのきっかけにつながればいい」

YouTubeクリエイター・かなたいむ。インタビュー

実体験に基づいているから視聴者も自分事化してくれる

――かなたいむ。さんの動画をきっかけにしてジェンダーに関する悩みを吐露しやすくなった方も多いと思います。そういった方に対して情報を発信する際に気を付けている点はありますか?

かなたいむ。:カミングアウトに関する情報発信には、特に気をつけていますね。風潮的に認知度が高まるにつれて、職場や学校でカミングアウトをしなければならないんじゃないかと思う方もいるんです。僕もそうだったのですが、自分や周囲に対して「隠すことは嘘をついていることなんじゃないか?」と思ってしまう当事者の方は多くて。

 でも、カミングアウトは「しなければならないもの」ではありませんし、「カミングアウトをしないこと=嘘をついている」わけではないので「誰になにを伝えたいかを選んでいいんだよ」ということは伝えるようにしていますね。

――実体験に基づいているからこそ、視聴者の方も自分にあてはめて考えやすいですよね。

かなたいむ。:もちろん、僕も当事者の方々の気持ちが全て分かるわけではないですし、LGBTQのT以外の方々とは社会的な困りごともまったく違うんですよね。だからこそ、当事者だからといって悩みは一緒というわけではないよっていうのも伝えるようにはしています。それはもちろんみんな違う人だから当たり前だよと。

耳が聴こえない両親との生活からマイノリティを実感

――また、ご自身のお話からは少し内容が離れてしまうんですが、耳が聴こえないご両親との動画もかなたいむ。さんのチャンネルのひとつの軸になっていると思っています。その動画の中で「手話中心の会話なので食事中は静かな傾向がある」というお話をされていて、驚きました。ほかにもご両親との生活の中で「これは自分の家庭ならではだな」と感じるものがあれば教えていただきたいです。

かなたいむ。:そうですね。食事のシーンで言うと、話すときに手話を使うのでお箸を置いて話します。なので、食べるのがめちゃくちゃ遅いです。特に母はずっと喋ってるので「早くごはん食べなよ」みたいな(笑)。

――なるほど。それは知りませんでした……!

かなたいむ。:あとは生活音がかなり大きいですね。衝撃的だったのは、母がガラスのまな板を買ってきたことがあって、大きな音を立てながら、食材を切っていました。「流石にやめてくれない?(笑)」と言ったんですが、不思議なことに慣れてしまって。そんなことの積み重ねで僕自身の生活音も大きくなっていきました。僕の自宅の机がガラステーブルなんですが、パートナーに「コップを置く音が大きいから、ガラスを割らないか心配…...」と言われて。家族以外の人と一緒に過ごすと、当たり前だと思っていたことが、意外とそうじゃないんだと気付かされました。

――学校などで友だちと話をしたときに、自分の家と周りとは少し違うのかなと思うこともありましたか?

かなたいむ。:そうですね。両親の耳が聴こえないのが当たり前だと思っていたので、友だちの両親の耳が聴こえているのを知ったときは「みんな聞こえるんだ」って思いましたね。祖母とか祖父は聴こえているので、両親はみんな聴こえてなくて、おじいちゃんおばあちゃんは聴こえてるみたいな勝手な思い込みもあって。友だちの家庭を見たときに、僕ってマイノリティなんだと気づきました。

――動画を拝見して素晴らしいご両親だなと感じました。周囲の家と違う部分に気づいた時もマイナスな捉え方にならなかったのは、ご両親との関係性による部分も大きいでしょうか?

かなたいむ。:そうですね。すごく愛されて育ってきたなと感じています。もちろんぶつかる時もありますが、本当に大切に育ててくれたなというのを感じています。両親も耳が聞こえないことで、いろいろなことを体験してきたと思いますし、僕には想像ができないようなこともあったと思います。社会的に「障がい」を持っているという部分で、諦めてしまわなければいけないこともあったんじゃないかな。それでも「違うことは違う」という母の姿勢、「あなたはあなたがしたいように」と見守る父のスタンスに救われています。

――最後にYouTube活動を含めた今後の展望を教えてください。

かなたいむ。:僕自身は映像を作りたいという思いがあるので、YouTubeを通してもっと映像の幅を広げていきたいです。そして、映像の枠を越えて誰もが諦める必要のない社会になるために行動していきたいと思っています。

 あとは、僕自身のアイデンティティの1つでもある「トランスジェンダー」というところで、いままで諦めてたことがたくさんあったんだなと気付いたんですよ。でも、それは自分だけが原因ではなく、社会的な問題が理由になっている場合もあるじゃないですか。たとえば、同性婚の話になってくると、国の制度が整っていないことによって、当たり前の権利を奪われている。

 だから、「それってあなたたちのせいじゃないし、諦める必要はないんだよ」っていうことは伝え続けていきたいですね。だれかのなにかのきっかけになりたいっていうことがずっとあります。そういうことをみなさんに動画を通して、また違う形でも伝え続けられたらいいなと思っています。

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