「仕事と家を同時に失った」自給自足生活を送る貧困女子YouTuber・りんの田舎暮らしが語る“過去”と”北海道に対する恩”

りんの田舎暮らしインタビュー

 ミステリアスな雰囲気を醸し出す女性が、北海道で自給自足生活を送るYouTubeチャンネル、りんの田舎暮らし。(2023年1月4日時点)

 22歳のときに自身で立ち上げた会社が倒産したことにより、住む家と仕事を同時に失い、若くして人生の挫折を経験したりん。その足で、北海道阿寒郡鶴居村(つるいむら)に辿り着き、現在はYouTubeを通して、北海道での暮らしを発信している。

 家賃7000円の古民家を借り、自ら「貧困女子」と名乗る謎が多い彼女に、会社の倒産から北海道への移住の経緯やYouTubeで発信する際のこだわり、今後の展望について語ってもらった。(はるまきもえ)

会社の倒産と同時に家を失う人生最大の挫折体験

──りん自身で起業した会社の倒産をきっかけに北海道に移住し、YouTube活動を始めたと拝見しました。なぜ、起業しようと思ったのでしょうか?

りん:大学生のときに体調を崩して、マッサージのお店に行ったのがきっかけでした。私は人と関わるのが得意ではなかったので、お店に行ってもあまり店員さんと話すタイプではなかったのですが、そのとき訪ねたお店は、交わす言葉が少なくてもとても居心地がよくて、素敵な空間だったんです。こんなふうに、安らぎを提供できるお店を私もやってみたいと思い、起業を決意しました。

 お店を立ち上げることを決めてから、大学在学中は資金を用意するために、ずっとアルバイトをしていました。そのおかげで開店はできたのですが、コロナ禍になり、オープンした年の夏にはお店を畳むことになってしまったんです。お店の2階に住んでいたこともあって、そのタイミングで仕事と家を同時に失うことになりました。

──壮絶な体験ですね.....。なぜ、そこから北海道に移住を決意されたのでしょうか?

りん:精神的に落ち込んでおりこれからどうしたらいいのかも分からなかった時期に、ふと思い立って昔家族と訪れたことのある上高地に行きました。そこでこんなふうに自然に囲まれて生きるのもいいかなと思いました。ただ、上高地は、自然が豊かでとても綺麗なところなのですが、観光地として栄えている地域でもあるので、静かな田舎暮らしをするにはもう少し落ち着いたところがいいなと考え、北海道に行こうと決めました。

──なるほど。北海道に移住をする前から、YouTube活動をすることは決めていたのでしょうか?

りん:いえ、YouTubeを始めようと思ったのは、北海道に向かう船の中でした。最初は、自分に起きたことや古民家での生活を見てもらうことをメインに制作していたのですが、今はできるだけ多くの人に、北海道に興味を持っていただけるような動画を意識して制作をしています。

収益が減っても動画制作で音楽を使用する理由

──りんの動画は、北海道でしか撮ることのできないような美しい景色が魅力ですが、撮影や編集はすべて1人で行っているのでしょうか?

りん:基本的に動画はすべて1人で制作しています。ただ、釣りの動画や、出産に立ち会う動画など、撮り直すことができない撮影は、カメラマンの方を依頼することもあります。古民家の中で完結するような撮影は、三脚などを使って1人で撮影しています。1人で撮影するときは、同じアングルばかりにならないように三脚の場所を何度も移し、繰り返し同じシーンを撮影して、それをつなげて動画を作っています。

──動画をよく見ると、かなり細かくカット割りをしていますよね。動画を作るときは、どのような手順で作成しているのでしょうか?

りん:まずはストーリーを考えます。動画の内容は、私の身の回りに起きていることや、日々の生活についてなのですが、見ていただいた方には短い映画を見ているような感覚になっていただけるように、ストーリーを最初に練って、映像を制作しています。

 さらに物語感を強めるために、音楽にもこだわっています。曲は、ただ雰囲気が合うものを選んでいるわけではなくて、曲の歌詞が動画の内容に沿っているものを選んでいます。動画の中に歌詞も記載しているのですが、テロップは映像の邪魔にならないように、基本的に白文字で挿入しています。

──音楽には、かなりこだわっているんですね。

りん:動画で得た収入の大部分は楽曲の使用料でなくなってしまうのですが、それでも音楽はこだわりたいポイントです。また、これは気付きにくいことなのですが、映像の一瞬のシーンが、そのとき流れている曲の歌詞やリズムとリンクしているところがあるので、ぜひそういったところにも注目してみてください。

──りんさんはYouTube以外にも、TikTokで発信をしていますが、そこでは松任谷由実さんの「春よ、来い」をメインソングとして使用しているイメージがあります。

りん:私の動画の視聴者層は、40代〜50代の世代が1番多いんです。邦楽の選曲は、その世代の方たちが『懐かしい』と感じていただけるようなものになるよう心がけています。ただ、最近はYouTubeショートやTikTokから見にきてくださった若い世代の視聴者さんも増えてきたなと、感じています。

──YouTubeショートやTikTokの動画では、どのようなことを意識して発信していますか?

りん:若い世代の視聴者さんを増やしていくことは、意識しています。2022年の夏に、YouTubeショートを毎日投稿していた時期があったんですけど、それをしてからは、かなり幅広い視聴者さんが見に来てくれたと感じました。ただ、YouTubeに投稿している長尺の動画と、YouTubeショートの動画では雰囲気が違うので、そのギャップについてさまざまな反応がコメントで寄せられています。その点をどうしていくのかが、今後の課題です。

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