『Ingress』開発陣インタビュー エージェントとコミュニティが象徴する、10年の軌跡

『Ingress』10周年記念 開発陣インタビュー

ーーNianticには『Ingress』以外にも『ポケモンGO』や『ピクミンブルーム』といったゲームがありますが、そのなかであらためて、Nianticにとっての『Ingress』はどういうものなのかを教えていただけますか。

Brian:『Ingress』は、ほかの多くのタイトルにとっての大元のような存在です。ほかのゲームと違い、ユーザーから寄せられたすべてのPOI(Point Of Interest)が含まれていることも特徴的ですね。Nianticで提供しているゲームをご覧いただくと、必ず3つの要素があります。まず「エクササイズ」、体を動かす。そして「エクスプロアレーション」、探索をする。最後に「リアルワールドソーシャル」、現実世界での交流です。

『Ingress』は弊社が作った最初のゲームであり、いま挙げた3つの要素すべてが含まれるゲームです。たとえば今回のイベントでは、体を動かしていただきながら横浜のいろいろな場所に行って探索をしていただきます。 そしてすでにお話ししたとおり、ゲームを通じた交流のために、このように集まっていただいています。ほかのゲームのチームと交流するときも、やはりこの3つの要素の話をよくしていますし、NianticがNianticらしいサービスを提供するためにも重要なことなのです。

Michael:日本に来て『ピクミンブルーム』や『ポケモンGO』のチームの人に会えたのも、すごく嬉しいと思っています。 よくゲームのチーム同士で話し合ったり、情報共有を積極的に行ったりしているのですが、やはりそれぞれのゲームの味を大切にしながら開発を進めていて、それがとてもいいものだなと感じています。

Brian:私もNianticのほかのゲームも大好きですが、そのゲームができたのも『Ingress』があったからです。すなわち、『Ingress』を遊んでくださっているエージェントのみなさんがいるからこそ、新しいゲーム開発が実現できたとも感じています。『ポケモンGO』がローンチされたときに、「ポケストップやジムはどういう風にできたのか?」と訊かれたことがありました。私はそれに「基礎となるものは『Ingress』のエージェントのみなさんが作ってくださいました」とお答えしました。

たとえば『ポケモンGO』のルアー(編注:ポケモンを引き寄せるどうぐ)は、『Ingress』のフラッカーが元になっています。それに 『ピクミンブルーム』にも、『Ingress』の機能や似た要素が使用されているんです。Nianticのゲームの仕様についての考え方や、それにともなう哲学を共有しながら開発を進めているからこそですね。

情熱的な日本の『Ingress』エージェントたち

ーー日本のエージェントに感じることなどあれば教えて下さい。

Brian:日本のエージェントのみなさんはもっとも情熱的であり、つながりが強いと思っています。Twitterでも『Ingress』のことをお話しているエージェントの方はたくさんいらっしゃるのですが、 日本ではそれがとても活発で、『Ingress』は本当は日本のゲームなんじゃないかと思ってしまうほどです。

Michael:実は日本のエージェントのみなさんは、先だって行われたロサンゼルスのイベントにも参加してくださっていました。そこで「ぜひ横浜にも来てください」と、ロサンゼルスのエージェントたちにお話していたのです。このように日本のみなさんが積極的に、楽しそうにしているので、ほかの国のエージェントのみなさんも「日本に行って一緒に遊びたいな」と思ってくださったはずです。

写真右=Thia Hightower(コミュニティ担当者)

ーー今回のイベントについて、開催地を横浜にした理由は?

Brian:『Ingress』にとってユーザーベースのマーケットが非常に大きいものであることから、まずはどうしても日本でイベントを行いたかったという背景があります。なかなか実現できなかったのですが、ようやく実現することができました。

イベントを行うからには、日本のみなさんにとって新しい発見や行きたいと思ってもらえるような場所であってほしいなと思いました。さらに、海外からお越しになる方もいるので、国際空港からのアクセスが良いのも決め手でした。横浜には美しいものがたくさんあり、港や電車も便利で、冬でもある程度外で遊ぶこともでき、みなさんに見ていただきたいと思える場所として選ばせていただきました。

イベントのさらなる活性化を目指す

ーー次の10年では、どんなことをしてみたいですか。

Brian:まずミュンヘン、ロサンゼルス、そして今日の横浜みたいなイベントをもっともっとやりたいと思っています。この数年間、世界的な悪い状況があった中で、エージェントのみなさんからの「イベントがなくて寂しいな」という意見を聞いていました。私たちも本当にいつでもエージェントのみなさんとお話ができる、できるだけ近い存在でありたいという風に思っているので、歯がゆい気持ちでした。

Thia :私もBrianが言ったとおり、たくさんのイベントをやりたいと思っています。それはNianticが主催するものであっても、エージェントのみなさんが主催されるものであっても良いので、積極的にサポートしたいと思っています。たとえばNL1331(編注:XM研究を行うためのNIA特別仕様車。NIAの工作員が世界中を回り、NXの研究を世界中で行っている)のツアーであったり、ミッションデーであったり、とにかくみなさんが楽しんでいただけるイベントで、自分ができることがあればなんでもしたいです。

Michael:イベントの話をThiaがしてくれて、すごく嬉しいです。いま、イベントをより円滑に進められるようなサポートができるような開発も進めているんです。2023年は、『Ingress』にとって再成長の年だと考えています。

Brian:技術的なお話をすると、エージェントのみなさんにご協力をいただいていたポータルスキャン、POI(Point Of Interest)の周りのデータをスキャンして3D化するものが、まもなくLightshipのVPS(ビジュアルポジショニングシステム)にデータとして搭載される予定です。エージェントのみなさんが一生懸命集めてくださったデータなので、必ず良いものにして提供したいと思っています。今はすでに何千ものVPSのPOIが世界中にありますが、『Ingress』でもPOIを活用した仕様を作りたいと思っています。

また、イベントに来てくださるエージェントのみなさんは非常にハイレベルで、長い間遊んでくださっているのですが、やはり新しいエージェントのみなさんにもたくさん仲間になっていただきたいと思っています。そのために『Ingress』の新機能や遊び方、そして『Ingress』をプレイする意味や意義などを、もう少し分かりやすくご案内する機能も考えています。そうやってゲームに慣れてもらったあとで、コミュニティに参加をしていただき、次回のイベントに来ていただけるような機能も検討中です。

数年前に行った「ヘキサスロン」というフィールドテストから得られた研究結果をもとに、HEXQUEST(ヘックスクエスト)という新しい機能も準備中です。HEXQUESTは、ゲーム内ではIQテックの技術として提供される予定なので、楽しみにしていてください。

Michael:エンジニアとしては細かい仕様についてお話するのがためらわれるのですが、BrianがHEXQUESTの話をしてくれて嬉しいです。いま開発していてとっても楽しいので、みなさんにもぜひ楽しみにしていただきたいと思います。

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