はじまりは“静と動の対比”だった サウンドディレクター・大谷智哉が語る、「ソニック」シリーズの音楽における新たな可能性

――『ソニックフロンティア』の電脳空間ステージ背景には過去の「ソニック」作品のモチーフがいくつか用意されていますが、それが音楽面に与えた影響もあると思いますか?

大谷:背景に過去のモチーフがあることもそうですし、このゲームでの電脳空間は“過去のすべての出来事が記録されている場所”でもあるので、当然「過去のソニックシリーズ楽曲をアレンジする」という選択肢も考えはしました。

ですが「ソニック」シリーズの場合、過去の楽曲をアレンジし直す機会はこれまでもいろいろあったので、「新曲をつくれる機会ならば、新曲でアプローチしてみよう」と思って制作をはじめました。ただ、ゲームの発売前に楽曲の試聴動画を出したところ、国内外のファンの方々が、古くは『ソニック・ザ・ヘッジホッグ CD』(1993年)でハウスを取り入れていたり、『ソニックフォース』(2017年)でドラムンベースを取り入れたりしてきた「ソニック」シリーズの、エレクトロニック・ミュージックの文脈や背景を感じるような音楽だという感想がたくさんありました。

『ソニックフロンティア』BGM「Cyber Space Mix - Video Remix」

僕ら自身は過去を振り返ろうと強く意識したわけではなかったのですが、「ソニック」シリーズのファンのみなさんはそれぞれ年代もさまざまなので、自分が特に遊んだタイトルと照らし合わせて楽曲を楽しんでくれていたんです。つい最近、電脳空間の音楽をつくった僕を含む4人のメンバーで話したときに、「過去の出来事がすべて記録されている」という電脳空間の設定自体にちょっとノスタルジックな印象があるために、僕らが取り組んだ音楽性からもノスタルジックさが滲み出たのだろう、という結論に達しました。

――電脳空間の楽曲には、テクノ、ハウス、トランス~ユーロビート、ドラムンベース、IDM、ガラージ、ダブステップ、ジューク/フットワーク……など、クラブミュージックの歴史を凝縮するような、さまざまな音楽性が詰め込まれている印象です。その多様性ゆえに、どんな方でも自分の思い出に紐づけることができたのかもしれませんね。

大谷:そうですね。電脳空間の音楽は、僕も含めて、それぞれの担当が好きなことをやっています。まずは僕が半分ほどつくって、残りを若手のメンバーがつくってくれています。彼らは僕が手がけていないジャンルをやろうとしてくれて、その結果、ジューク/フットワークやダブステップ、IDMのようなものも取り入れてくれました。軸となる部分は僕の方で固めつつ、そこに伸び伸びと色々な音楽のバリエーションを加えてくれました。

そういえば、電脳空間の楽曲を聴いてくれたオランダのリキッドドラムンベースの有名レーベル・Liquicityから、「Cyber Spaceの音楽がすごく気に入りました。自分たちのチャンネルで紹介させてもらえませんか?」と連絡をくれて、彼らのYouTubeチャンネルで紹介してもらうことになったんです。こういった広がりも嬉しいですね。

Sonic Frontiers - Cyber Space 1-2: Flowing

――続いて、ゲーム内のボスにあたる巨神戦の音楽についても聞かせてください。ここで流れる楽曲は基本的に歌モノで、メタルコアやポストハードコア的な雰囲気のモダンなヘヴィミュージックで統一されています。

大谷:ソニックがスーパーソニックになって戦う巨神戦はこのゲームでも一番盛り上がる場面なので、それに見合う音楽を用意したいと思っていました。「このアクションの盛り上がりに応えられる音楽性は何だろう?」と考えたとき、ここはバトル用のBGMというよりは、挿入歌を使った演出にできないか、と思ったんです。

『ソニックフロンティア』BGM「Super Sonic - Lyric Video」

――なるほど。それでボーカル曲が採用されたのですね。

大谷:ボーカル曲を入れるアプローチは過去の作品でも色々とやっていますが、今回は“ゲーム的に一番盛りがる場面で一番かっこいい曲がかかる”という基本的なことをきちんとやりたいと思っていました。Sleeping with SirensのKellin Quinnがボーカルで参加してくれた「Undefeatable」「Break Through It All」「Find Your Flame」の3曲は並行してつくっていったのですが、3曲の割り振りで一番考えたのは、ボーカル表現の幅でした。メタルコア~ポスト・ハードコア的な表現として、シャウトやスクリーム、グロウル、ラップを取り入れたオルタナティブ感などをそれぞれに意識しつつ、キャッチーでメロディもしっかりしたものというバランスを考えました。

そもそもこの3曲は、メインテーマ「I’m Here」の音楽性が基盤になっています。「I’m Here」では、『ソニックフロンティア』だからこそ表現できる静と動の要素を1曲に内包した音楽として、静かでミステリアスにはじまりエネルギーのあるサビがくる構成を考えました。冒頭の静かな構成には、クロノス島の音楽と同じようにピアノとストリングスを加えて、そこから9弦のギターを使ったハードなサウンドやハイトーンのボーカルが重なります。巨神戦の音楽は、そこからハードな部分だけを抽出した曲にしようと考えました。

――終盤のボスに当たるSUPREME戦では、メインテーマ「I’m Here」が戦闘用の楽曲として流れるという演出も印象的でした。

大谷:SUPREME戦では「クライマックス感を出したい」というディレクターからの要望もあって使おうということになったんですが、いきなり歌がはじまるのではなく、インストゥルメンタルのパートと組み合わせた別なバージョンにすることで、戦闘がある程度進んだところで歌が入ってくるように再構成しています。島の音楽がゲームの進行度によって変わっていくのと同じように、ボスとの戦闘もフェーズの切り替わりに合わせて曲の構成が切り替わっていくように実装されています。

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