圧倒的な勢いで、あるいはゆっくりと自分のペースで「さまざまな成長」を遂げた にじさんじタレントらの2022年名配信・名シーン(後編)

2022年のにじさんじを振り返る(後編)

 今年の上半期において、一番のインパクトを残したのは、やはり壱百満天原サロメであろう。

 5月21日に迎えた初配信で「自身の胃カメラの写真を公開する」という破天荒さで注目を集めると、語尾に「~ですわ」を付ける“お嬢様口調”、ゲーム配信を通してみせる様々なリアクションとマシンガントーク、品行方正さを心がけるマインドネスなど、多彩な魅力でリスナーを魅了。2022年12月中旬時点でにじさんじ内で最多となる約170万人もの登録者数を集めることになった。

 デビュー後数か月の熱狂は破竹の勢いといっても過言ではなく、その後には数々の企業からのPR案件を面白おかしく実施していき、これらに加えてほかのにじさんじメンバーよりも積極的にテレビCMやテレビタレントとも関わることが多かったことも印象的だ。

 それだけに留まらない。12月初めにはYouTube主催のオフラインイベント『YouTube Fanfest Japan 2022』において、「国内トップ登録者増加クリエイター」のランキングで1位となったことも明らかになった。うまく言い換えれば、「2022年のYouTubeにおける最優秀新人賞」とでも言えようか。

 わずか1年足らずでの達成は、彼女にとって望外な境地だったろう。自分のやりたい部分との兼ね合いを詰めつつも、CMのお仕事が来たときには母親にハイテンションで話しかけてしまったなどと雑談で語るなど、あくまで自然体/ナチュラルな姿をリスナーに見せてくれている。

壱百満天原サロメ / Hyakumantenbara Salome | YTFF Japan 2022

 そんな彼女の魅力がグッと詰まった配信といえば、7月1日に配信した「【お部屋公開】初ローテンション💘整理整頓!長時間💯ですわ【ですわ~】 」を挙げたい。

 引っ越し先の部屋と荷物を荷ほどきし、良い感じに部屋に並べていく『Unpacking』をゲーム配信した。普段は1時間ほどで高いテンションのままで配信していく彼女だが、この配信ではググっとテンションを下げ、ローテンションで長時間にわたっての配信をしてくれた。

【お部屋公開】初ローテンション💘整理整頓!長時間💯ですわ【ですわ~】

 実はこのゲーム、引っ越しするごとに主人公がどのような変遷を辿っているのかがうかがい知れるタイトルでもあり、洞察眼が冴えている方ならばすぐにそのストーリーを感じ取って視聴者と盛り上がれる作品でもある。

 そのためか、荷ほどきされて出てくる様々なアイテムに自然と注意が向くことになる。ゲーム、お皿、鍋、大小さまざまな本にぬいぐるみなどなど、そんななかで見つけたのは生理用品のタンポンと見られるアイテムだ。

 「これタンポンでしょう?違うかしら?」と気づいた彼女は、「タンポンを知らない方もいらっしゃるかもしれないですけど、生理用品のもの凄い怖い形状の…」と、タンポンの仕組みや使い方について説明しはじめる。

 ファンからは「生々しい」「センシティブ」といったコメントもありつつ、「保健体育ですわ!知らないといけないですわね」「結婚しておりますが知りませんでしたわ」といったコメントもあり、反応はそれぞれ。なかにはリアリティあるコメントが相次ぎ、それらを拾っていくと今度は女性の生理についての話題へと少しずつスライドしていく。

「女性には女性の大変さ、男性には男性の大変さがありますから。私もね、こういう風に伝えていきます」
「こういうのは言っていかないと、お互い通じませんから。私もわからないことだらけですから、お互い教え合えるのが一番ですわよね」

 後日7月22日には予定していた配信を休むと報告したときには、その理由をハッキリと「生理痛」だとリスナーに報告してもいる。

 女性の生理にまつわる体調問題は、年々社会問題の一つとして捉えられ始めている。生理を「恥」と恐れるあまりに正しい知識が普及しないという流れもあり、これは日本だけでなく海外でも同様のケースが見られているほどだ。

 これらをタブー視する向きに、彼女は臆面もなく「ノー」を突き付ける。たしかに楽しい配信中に生理の話が始まれば、気分を害するリスナーが少なからずいるのかもしれない。

 だがそれ以上に、こういった人間の身体的・精神的な問題を分け隔てなく全員が知ることは、「不自由なく幸せで楽しい生活を送る」ための知識・理解として知るべき点でもある。

 ホロライブ・兎田ぺこらとほぼ同時期に「deleteC」のSNS上キャンペーン(NPO法人deleteCが進めていた癌治療応援キャンペーンのこと)に参加した。それらを含めて伝わってくるのは「健やかな人生・生活を送ってほしい」という願いだ。

 「配信者・壱百満天原サロメ」ではなく、節々に「人間・壱百満天原サロメ」の一面が垣間見える瞬間がある。来年以降の彼女がどんな顔を見せてくれるのかに注目だ。

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