“年間トップ”にまで上り詰めたVTuberと、企業の進出が続くソーシャルVR。バーチャルの熱量はまだまだ続くか

“年間トップ”にまで上り詰めたVTuber

 『にじさんじ』のANYCOLOR株式会社と、『ホロライブ』のカバー株式会社が手を組んだ。大きな話ではあるが、エンタメ寄りの話ではない。所属タレントを守るための防衛策の話である。

 タレントでありインフルエンサーでもあるVTuberには、アンチや荒らしなどを抱えている人が少なくない。『にじさんじ』も『ホロライブ』も、現在に至るまで誹謗中傷や配信の荒らしによる営業妨害、そして殺害予告やストーカーといった攻撃的行為の被害に悩まされ続けている。残念ながら、それらが原因で活動休止や、引退に至ったケースも多い。

 こうした行為に両者とも対応を強化してきたが、ここにきてノウハウ共有や各種対策の連携、警察諸機関と両社との連携体制の構築、といった形で共同戦線を張ることを決めたようだ。業界としては喜ばしい連携ではある一方、「そこまでしなければならない状況」になった、という点では非常に憂慮すべきだろう。

 インターネットにおける誹謗中傷・攻撃的行為は、匿名性などもあってハードルが低い。VTuberに限らず、いまや様々な有名人が攻撃を受ける可能性がある。抜本的な対策はリテラシー教育だろうが、当面は各所が毅然とした対応を取るほかないだろう。そうした苦労のない世界になることを望みたいところではある。

 重いトピックから始まった先週ではあったが、もちろん華々しい話題もある。年の瀬を感じさせる「今年の振り返り」の中で、バーチャルクリエイターも存在感を発揮してきた。

壱百満天原サロメ / Hyakumantenbara Salome | YTFF Japan 2022

 まずは、YouTubeが公式発表したランキングのひとつ 「国内トップ登録者増加クリエイター」だ。1位に輝いたのは『にじさんじ』の壱百満天原サロメだった。並みいるYouTuberたちをものともせず、堂々の首位。今年デビューして以後、破竹の勢いで駆け抜けてきた結果として、むしろ納得すらいく快挙だ。

 YouTube公式発表だけでなく、BitStarが発表した「新規開設チャンネルランキング」においても、壱百満天原サロメは1位となっている。この記事を書いている時点で、壱百満天原サロメのチャンネル登録者数は169万人。いまや様々な案件に引っ張りだこな彼女の、来年の活躍にも期待がかかる。

[キャプション]

 YouTubeで話題になったのが壱百満天原サロメであるならば、TikTokで話題になったのはぼっちぼろまる、となるだろうか。今年TikTokで一世を風靡した「おとせサンダー」が、Billboard JAPAN発表の「年間TikTok Songs Chart」にて1位になったのだ。楽曲発表は6月3日、それ以前に先出し部分がTIkTokでバズったとはいえ、その風速は計り知れないものがある。

おとせサンダー / ぼっちぼろまる (Music Video)

 シンガーソングライターでもあり、マスコットな風貌のVTuberでもあるぼっちぼろまるは、今年はソニーミュージック内のレーベル〈FUNSUI〉からメジャーデビューを果たしており、まさに飛躍の年だった。こちらは壱百満天原サロメとは対照的にキャリアは長く、TikTokでのバズをきっかけに大きく注目を集めた形だ。

 いつ、誰が、バズるかわからない。インターネット文化は全体的にそうだが、VTuberだと特にそれが顕著だ。来年も新たなスターが、思わぬ方角から出てくるかもしれない。

Quest単体で動作するHaritoraXの最新映像(開発中)

 VR業界は『mocopi』が駆け抜けた先週に引き続き、せわしない。『mocopi』最大の対抗馬と思われるフルトラッキングデバイス『HaritoraX』は、Quest版『VRChat』との連携動作が確認されたと告知した。

 価格や稼働時間では『mocopi』に勝る 『HaritoraX』は、ユースケース次第では『mocopi』よりも便利だ。なにより、ソニーとパナソニック(Shiftall)の二大企業が、モーショントラッキングデバイス開発競争を繰り広げる、おもしろい状況である。一方、老舗のHTCは「VIVE」シリーズデバイスの値上げを発表し、先行きが不安視される。

Developer Update - Groups

 そして、『mocopi』も 『HaritoraX』も連携を目指す『VRChat』では、「グループ機能」が追加実装された。文字通り、『VRChat』内部に「グループ」という概念を作り、所属者だけが入場できる空間や、所属者への一斉通知など、コミュニティ管理に必要な機能を提供するものだ。これまで、Discordなど外部サービスで管理するのが主流だったVRChatコミュニティのあり方が、大きく変貌するかもしれない注目のアップデートである。

 一方、国内外で高い評価を得ているVRゲームを送り出してきたMyDearestは、「VRコミュニケーター」という新規ポジションを発表した。同社に所属した上で、『VRChat』などのソーシャルVRでプレイヤーとのコミュニケーションや広報活動などを行う人材とのことだ。言うなれば「”現地”に明るい社内スタッフ」だろうか。

 彼らは自分たちの情報発信だけでなく、ソーシャルVRユーザー・コミュニティにも接近し、イベント参加や取材、外部への情報発信も行うという。言葉だけ見ればオウンドメディアのようにも見えるが、その上で「人と人の関係性」をより重視する存在を目指すことが、プレスリリースからは読み取れる。

 プロダクト面でも、ソーシャル面でも、企業のソーシャルVRへの関心は強まりつつある。そして、メタバースを長期的戦略と捉えた組織は、着実に先行投資を始めている。こうした動きは、おそらく来年までは続くだろう。

 裏を返せば、乗り込むならいま、でもある。もちろん、水先案内人はお忘れなく。

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