圧倒的な勢いで、あるいはゆっくりと自分のペースで「さまざまな成長」を遂げた にじさんじタレントらの2022年名配信・名シーン(後編)
最後に紹介するのは、この1年届けられたにじさんじの3Dお披露目配信のなかから、周央サンゴの3Dお披露目配信をあげよう。
開始してすぐに謎のお姉さんの声で「ミュージカルとは?」とリスナーに問いかけ、「周央サンゴちゃんの3Dお披露目を通じてミュージカルについて学ぼう!」とアナウンスして配信がスタートしていく。
同期である世怜音演劇同好会の5人で楽曲「レッスン」を披露し、「インターネットをキメる」ために配信中にも関わらず引用RTでツイートをしている(!)と、いつの間にかインターネットの世界へと迷い込んでしまう。
「インターネットだぁ!」とすぐに悟り、思わず楽曲「おねがいインターネット」を歌い始めるサンゴ。過去のアーカイブへと飛んで文野環とゲームを楽しんだり、一人合唱コンクールの世界では『テトリス』で使われているテトリミノが降り注ぎ、健屋花那、黛灰、でびでび・でびる、栗山やんみ、もこ田めめめらにTRPGの世界でポージングをさせられたりと、さまざまに楽しませてくれる。
さらに、サンリオの協力のもと自身が愛してやまないポチャッコと出会うことができ、感極まる周央サンゴ。その後なぜか塔になってしまったり……。
「ミュージカルの最後といえば〜? カーニバル!!」といって流れ始めたのは、「マツケンサンバⅡ」。しかも本人が7人に分裂し、それぞれにダンスして歌って踊ってみせる。そのあともライブステージに立って「初音ミクの暴走」の替え歌「周央サンゴの暴走」を歌って大団円を迎えた。
しかもエンドロールには、彼女が愛してやまない志摩スペイン村のBGM「きっとパルケ・エスパーニャ」が流れ、歌とともにサンゴによる歌詞朗読というオマケつきだ。
さて、簡単ながらにまとめてみたが、まとまっているように思えないほどにカオスな流れである。
インターネット、ミュージカル、レトロゲーム、TRPG、サンリオ(特にポチャッコ)に志摩スペイン村と繋がっていく流れは、彼女がなにを愛してきたかがギュっと詰めこまれている。
「ミュージカル」という事前の前振り・段取りで展開していくので、いかに大げさに騒いで画面上がうるさくなっても、エンターテイメントショーとして受け取りやすくなっている。次々飛び出してくる表現もかなりトガってはいるもののポップで受け取りやすい質感で整えられ、視聴者も振り回されそうになるが、決して置いてけぼりにしないように天の声・ナレーターもついている。こうした濃縮・過剰・飽和したネタの数々にうまく筋道をつけて楽しませるのは、彼女の流儀でもあり配慮であろう。
細かく挟みこまれているネットミームやネタも含めて息つく間も与えないエンタメの連打、息が詰まるほどに飽和したポップで楽しいインターネットショーとなった周央サンゴの3Dお披露目配信に、「2022年のインターネット」らしさを感じたのは筆者だけかもしれない。
ここまでが筆者が挙げたい、2022年におけるにじさんじの名動画・名配信・名シーンである。前後編でお届けさせてもらったが、読者のかたがたはどんな配信・シーンが思い出深いだろうか。