地域や次元、そして事務所すらも さまざまな"壁"を飛び越えた2022年・にじさんじタレントらの名配信・名シーン(前編)

2022年のにじさんじを振り返る(前編)

 現在のVTuberシーンにおけるトップランナーの一つであるにじさんじ。そのなかにおいてもタレントの活躍する分野は日々拡がっている。

 メインとなる生配信に加え、事務所が主導する企画への参加や監修、主に一人ひとりのライバーが主導となって進む歌ってみたなどの動画のほか、ここ1年ほどはエンターテインメントのフィールドでアーティストとして日の目を見る者も増加している。

 2022年も12月を迎え、2023年へと向かう真っ只中。にじさんじは今年大きな転換期を迎えたと断言できる。

 まず、運営会社であるANYCOLOR社が東京証券取引所グロース市場に新規上場し、株式市場を大いに沸かせ、ビジネスメディアを中心に注目を集めたことは記憶に新しい。

 所属タレントに目を移せば、2022年5月21日に壱百満天原サロメがデビューし、VTuber史上に残る驚異的な伸びを見せ、YouTube登録者数でトップに君臨することになる。数か月後には2021年11月1日に本格的に始動したバーチャル・タレント・アカデミーからRanunculus・VOLTACTIONとして計7名がデビューを果たした。

 海外でも大きな動きがあった。インドネシアVTuber事業『NIJISANJI ID』と韓国VTuber事業『NIJISANJI KR』を『にじさんじ』へと統合したのだ。

 2022年4月15日に統合されると、少しずつではあるが日本国内で活動するメンバーとも交流がはじまり、『Minecraft』を皮切りにして配信上でのコラボ・交流が積極的になっていった。

 2021年5月よりスタートしていた英語圏のVTuber事業『NIJISANJI EN』も、今年徐々にその強い支持が目に見えるようになっていった。7月24日にVox AkumaがNIJISANJI ENおよび海外事業内で初となるYouTubeチャンネル登録者数100万人を突破したのを皮切りに、軒並み大きく登録者数を伸ばしたのだ。

 9月30日〜10月2日に開催された『にじさんじフェス2022』は、VTuberシーン史上でもっとも大きなイベントとなり、幕張メッセで開催されたほかカルチャーのイベントと見比べても遜色ないレベルの盛り上がりを見せてくれた。

 「PR事業」としてゲーム作品のみならず、多彩なジャンルとのコラボ商品やPR配信も増加し、もはやその姿は「インフルエンサー」といっても過言ではないだろう。

 では彼らの本分・本業とはいったいどこにあるのか?150名を超えるメンバーのほとんどが、「日々の配信」「動画投稿」と答えるだろう。2022年、彼らはどんな配信をし、どんな名シーンを見せてくれたのか。今回は特集「2022年・にじさんじタレントらの名配信・名シーン」を前編・後編と2回に分けてお送りする。

 2022年の年明け。1月3日に緑仙のチャンネルから投稿されたのは、当時3Dボディを持っていた総勢64名のメンバーによるなわとび企画だった。

 緑仙・葉加瀬冬雪・星川サラの3人による3D企画「動けないおれたち図鑑」から派生したスペシャル企画であり、3分間のなかで連続で跳べた回数を競い合うというシンプルな内容。

 優勝賞品はなく、撮影時期もバラバラ。緑仙曰く「人によって熱量がバラバラ」というユルいな企画でありつつ、64人それぞれのキャラクターが約30分にわたって、しっかりと撮影されている。

#にじなわとび 第一回にじさんじなわとび大会

 2021年に本間ひまわりと舞元啓介によって収録・投稿された「ローション」系企画にも通じるフィジカル系な企画であり、3Dボディを十二分に活かしたものでもある。

 跳べる者もいれば跳べない者もいて、「あの人が跳べないなんて意外だ」「当然この人はこれくらい跳べるよね」から「跳べないし腕立て伏せするわ!」「(始めて数回で」もう無理!!」まで、さまざまなリアクションや結果を見せてくれる。

 小刻みにジャンプする3Dボディをかなり高精度に捉えて表現できており、高速に動き続けるなわとびのトラッキングはまだ甘いかもしれないが、今後数年に渡ってより向上していく余地があるのが分かる。今後どこまで進化するかが見ものだ。

 2022年にほとんど更新されなかった3人による「動けないおれたち図鑑」、次回動画を待つファンは多いはず。心待ちにしておこう。

 今年、にじさんじメンバーのなかではショート動画の投稿も流行した。これまで多数あった切り抜き動画だけでなく、TikTok・Instagramでのショート動画が大きく普及したことで、それまでにないファン層へとリーチし、切り抜き・ショートいずれかの動画でVTuberを知った方も少なくないはずだ。

キルパク😁❗️美味しいヤミー感謝感謝 #shorts

 2021年には葛葉を中心にした人気メンバーの配信がショート動画となって若い視聴者層に流れていき、数十万~数百万もの再生をもたらした。にじさんじきっての動画投稿者であるグウェルを筆頭に、配信上でのモノマネや名言でリスナーが増えた樋口楓やえるなど、生配信上の名シーンをうまく編集した動画、事前に収録した踊ってみた・歌ってみた動画、YouTuberやTikTokerらの流行に乗っかった動画などなど、その内容もにじさんじメンバーによって様々だ。

20秒で分かるえるの表情筋【にじさんじ/える】

 筆者が驚かされたのは笹木咲・椎名唯華による「さくゆい体操」だ。2人による映像だけでなく、「踊ってみた」ネタとして大きな支持をうけ、主に若い女性を中心にしてさくゆい体操を踊る動画の投稿も増加した。

【3Dで#踊ってみた 】さくゆいたいそう 【笹木咲 / 椎名唯華】

 その勢いも相まって「さくゆい体操」はSpotifyのデイリーバイラルチャートに上位にランクイン。チャートインの指標として「TwitterやInstagramなどのSNSに楽曲がどれだけシェアされたか」「Spotifyサービス内で直近の再生回数がどれだけ上昇したか」などが重要視されており、YouTubeやTikTokなどの外部サービスにおける再生回数や、そこからリンクを辿ったクリック数などが直接カウントされているわけではない。

 とはいえ、さまざまなところで同曲を耳にした方々がこの曲を知り、心も体も躍らせているのは事実。視聴回数にはあらわれない「目に見えるムーブメント」を引き起こしたのだ。

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