代替肉のシェア拡大に挑むスイスのスタートアップ「Planted」 ベジタリアンの悩みにアプローチ

スイスの代替肉メーカー「Planted」

Plantedは代替肉のハードルに向き合う

 代替肉のシェアはまだまだ狭く、シェア拡大のためにはいくつかのハードルを超えなければならない。味、イメージ、そして価格だ。

 代替肉は、”肉を食べたくないけれど肉を食べたい”というワガママなニーズに応えるアイテムだ。筆者は元ヴィーガンだから、このワガママをよく理解していると思う。

 動物や環境のことを考えれば肉を食べたくないが、肉が美味しい事実は知っている。人は美味しいものを食べたい欲求が本能レベルで強い。それと向き合うのは想像以上に辛く、そう言った人やこれからベジタリアンになろうとする人たちにとっての代替肉は最後の砦であり希望なのだ。

 だから必然的に期待値が上がる。

 Plantedは、ブーニー氏自身が同じ過程を歩んできたことから、味へのこだわりが強いのだ。

 試食として提供された肉の断面は、いくつもの層になっていて、口に入れると鶏肉のような弾力が感じられた。噛むとモモ肉を食べているようなザクザクと繊維を切り裂く音が口から脳へと響く。「肉だ……」と、ツアー仲間の口から次々と驚きの声が漏れる。

 ブーニー氏は「代替肉を肉に近づけるためには繊維質が必要」と言う。

 食感を重要視しているだけあって、そのテクスチャーは本物と変わりなく、満足度は非常に高かった。味は、豆の香ばしい香りが残っているが、気になるほどではない。それよりも、噛んだときの歯応えと繊維の間から溢れる旨味の方が印象強かった。

 もうひとつのハードルは、イメージ。つまり”人工っぽさ”だ。代替肉と聞くと、なんだか実験室や研究成果といったサイエンス的なものを感じてしまわないだろうか。

 できるだけ健康的な生活を送りたい人は化学調味料を避けてオーガニックを選ぶ傾向があるので、実験室で生まれたイメージがつきまとう” 代替肉”は、いくら「ヘルシー」や「サステナブル」をアピールポイントとしていても手に取ってもらいにくい側面がある。

 Plantedに限っていえば、この部分は、ガラスの壁が解決の糸口になってくれるかもしれない。

 というのも、工場を見学したからわかるが、代替肉の製造過程は拍子抜けするほど単純に見えた。

 Plantedの代替肉の原料はエンドウ豆やオーツ麦をはじめとする植物由来のもの。そういった材料が大型の機械で細かくされ、発酵過程を踏み、特定の形状に形成されていく。できたものは人の手によってパッケージングされる。主な工程は大きく分けて3つか4つに見えた。美味しさの担保や、口に入れたときの” 肉感の再現”といった技術的な部分はサイエンスが駆使されたのだろうが、製作工程はシンプルだ。

 代替肉はPlantedのものに限らず安価ではないが、消費者は” 美味しくて安全”なものを求めている。シェアが広がれば、価格は反比例して下がっていくだろう。

Plantedの代替肉を使ったメニューを含むバッフェプレート。どれも本当に美味しかった。

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