「美味しいマシンとテクノロジー
「ピエール・エルメ・パリ」とのコラボで改めて深みを知る 美味しいマシン&テクノロジー【ネスプレッソ編】
美味しいものには素材だけでなく、道具や技術も欠かせない。本稿ではボタンひとつで”美味しいを”提供してくれるマシンから、最新の調理家電まで、飲食に関わるマシン&テクノロジーの世界をご案内。第1回は「ネスプレッソ」について。
かつて筆者に、「コーヒーの極みと呼べる存在のひとつはネスプレッソである」と語ってくれた人がいる。関東一円にコーヒー専門店を展開する、サザコーヒーの代表取締役・鈴木太郎氏だ。
東京農大を卒業後に単身コロンビアに渡り、コーヒー界の権威として知られるエドガー・モレノ博士に師事した後に現地でコーヒー農園を開拓。その後はパナマのカップ・オブ・エクセレンスの品評委員などを歴任、今ではゲイシャ(コーヒー)のスペシャリストとしても知られる男が「コーヒー豆の生産からコーヒーを提供するところまでのプロセスは専門店と同じでも、誰でも簡単に味わえるコーヒーメーカーとカプセル式コーヒー、そしてそれらを構成する技術を確立したことは、これまでのコーヒーの世界を一変させた。とネスプレッソを評価していた。
ネスプレッソはこの冬に「ピエール・エルメ・パリ」とコラボしたことでも話題となったが、今回のコラボのために来日したピエール・エルメ氏が記者会見で語った内容は、その独自性を改めて際立たせる内容であった。
ここで本題に入る前に、ネスプレッソについて簡単に触れておきたい。ネスプレッソはもともと、スイスの総合食品メーカーであるネスレ社が開発したコーヒーブランドである。現在では1986年の発売当初から存在する高圧力抽出の「オリジナル」、日本では2020年に新たに加わった遠心力抽出の「ヴァーチュオ」、そしてミシュラン獲得店などでも使われている業務用の「プロフェッショナル」の3システムが展開されている。
一般ユーザーが購入できるのは「オリジナル」「ヴァーチュオ」の2システムで、どちらもコーヒーメーカーに同社独自のカプセルコーヒーをセットして抽出する。そのカプセルコーヒー、実はネスプレッソ本社があるスイスで製造されている。素材となるコーヒーは生産地の選定の時点から厳選され、栽培、収穫、精製を経て、スイスに運ばれた後に品質検査、ブレンド、焙煎、粉砕、、カプセル封入などが行われている。生産地から抽出までを凝縮したかのような存在が、ネスプレッソ独自のカプセルコーヒーになるのだ。
今回、ピエール・エルメ氏はコラボして生み出した「オリジナル」「ヴァーチュオ」両シリーズの数量限定コーヒーについて、カプセルに封入されるまでのこだわりなどを披露してくれた。冒頭では「今回のコラボレーションに魅力を感じたのは素材の選択、品質へのノウハウ、ディティールへのこだわり、というピエール・エルメ・パリが大事にしている価値観をネスプレッソも共有していると感じたからです」「元々、10年位前からコーヒーは研究していてピエール・エルメ・パリにもパティシエ職だけでなくバリスタ職も新設したのですが、両職は実は似ていてディティールにこだわりつつも統一感があって、必ず同じものを提供できる。なのでネスプレッソのコラボレーションの話があった時にも自然と受け入れることができました」とフィロソフィーを振り返った。