連載:100万回再生される「笑い」の法則(第二回)
「バズる法則を知らない」のにYouTube・TikTokで大人気 ラバーガールに聞く、ショート動画やSNSとの“距離感”
芸人がYouTubeやTikTokなどで発信することが増えた要因は、主にコロナ禍の影響であったが、いまやお笑いの表現の場の1つとして大きなプラットフォームとなった。動画コンテンツが盛り上がるいま、SNSで拡散され、話題を呼ぶような「お笑い動画コンテンツ」はどのように作られたのだろうか。連載「100万回再生される『笑い』の法則」」では、企画や制作を手掛ける人物たちにインタビュー。スマートフォンのなかで起きる“笑い”を生み出す秘訣を探っていく。
今回登場するのは、結成22年、プロダクション人力舎所属のラバーガール。YouTubeチャンネル『第2ラバーガールChannel【公式】』の登録者数22万人超、TikTokフォロワー約60万人。『エンタの神様』などのお笑い番組や、ライブシーンで活躍し、根強い人気を誇る2人。彼らにとってSNSとは、どのような場所なのか。(於ありさ)
TikTokスタートのきっかけは『エンタの神様』の切り抜き動画
ーー2020年にYouTubeチャンネル『第2ラバーガールChannel【公式】』を開設したおふたり。チャンネル開設の経緯を教えてください。
飛永翼(以下、飛永):コロナ禍の影響は大きいですね。ライブ活動ができなくなったことや、テレビへ呼ばれる機会が減ったことなどもあり、社長から「自由にSNSで発信していいよ」「やりたいことをどんどんやってください」というお達しが出たんです。
大水洋介(以下、大水):暇だし、やるか……って。わりと軽い気持ちでした。
ーーそこから1年半後、2021年11月にはTikTokアカウントを開設しました。こちらはなぜ始めたのでしょう?
飛永:TikTokは、YouTube Shortsが始まったタイミングで「良いきっかけだし始めるか」っていうのが1つ。もう1つはTwitterでファンの方から「TikTokでラバーガールさんの動画がバズってますよ」って教えていただいたからでした。誰かが投稿した『エンタの神様』やネタ動画の切り抜きだったのですが、30万回ぐらい再生されていたんです。それを見て「あれ? もしかして若い人たちにも受け入れられるの?」と思いました。それに公式から動画を出せたら違法動画も減るかなって(笑)。
大水:始めるまではTikTokにほとんど触れてこなかったのもあり、若い子たちが音楽に合わせて踊ってる場所というイメージだったので驚きましたね。僕らがおもしろいと受け入れられていることもそうですけど、そもそもネタを見てもらえる場所なのかと。
ーーなるほど。受け入れられること自体が意外というのはなぜですか?
飛永:若い人が好きなお笑い=EXITのような若い芸人だと思い込んでいて、第七世代が登場したときに、それが明確になったなと思っていたんですよね。実際、僕らのライブって30代よりも上の人が中心だし、将棋教室みたいな題材がウケるから。
大水:そうそう。土佐兄弟のあるあるは学生さんでも共感できるけど、将棋教室は共感できないだろうなって(笑)。
飛永:でも、それはいまに始まったことじゃなくて『エンタの神様』に出ていた時から思っていたことでした。だから『エンタ』でやるネタは、ライブでやるネタよりも全世代が笑いやすいものに変えて出していたんですよ。だからテレビでやらずにライブでだけやっているネタもウケているというのを知った時は「こういうのをやってもいいのか」って自信になりました。
動画のネタは『ミヤネ屋』から生まれることも バズる法則を知らないからできること
ーー芸人さんのYouTubeチャンネルを見てみると、ネタ動画を投稿している方もいれば、トーク番組のような動画を載せている方、モーニングルーティーンや購入品紹介のようないわゆるYouTubeらしい動画を投稿されてらっしゃる方もいます。『第2ラバーガールChannel【公式】』はコント動画が中心かと思うのですが、どのようにして方向性は決まったのでしょう?
飛永:YouTubeを収益化するには、最初に登録者1000人と視聴時間4000時間を達成させないといけないのですが、始めた当初はそれを達成させるためにお互いの家からできるZoomを使ったトークの配信と、コントに落ち着きました。そのときにZoomでできるネタっていろいろあるんだなと気づき、そこから徐々に方向性を広げていったんです。
大水:それでやってみた結果、コント以外、やりたいことがないというのが本音ですかね。たぶんモーニングルーティンを投稿するとしたら、そのままやるのは恥ずかしいから、ふざけたくなっちゃうと思うんです。でも、YouTubeを見る人に、それは求められていない気がして。
ーーなるほど。ネタ作りについてお伺いしたいのですが、時事ネタやトレンドを動画に反映するまでが早い印象です。そこは意識されてらっしゃるのでしょうか?
飛永:うーん……結果的にそうなっていったというのが近いかもしれません。撮り溜めはせず、平日の空いている日は出来るだけ集まって、YouTubeを撮ることにしているのですが、だいたい『情報ライブ ミヤネ屋』が放送しているので、それを参考にしているだけ(笑)。昔から電気屋でテレビを買ったから、テレビを買うネタを作ろうっていう決め方なので、それを今もやっているという感じですかね。
大水:『ドラマ「silent」の時間にプロ野球が放送されたけどそのまま「silent」だと思って観てた人【ラバーガール新ネタ】』も、僕がちょうど『silent』を見ていたからできたネタなんです。野球の試合の打順以外はとくに下調べをせず、台本も作らずにほぼアドリブで撮影した動画になりました。
飛永:基本的に2人ともめんどくさがりなので、『silent』を見ていなかったとしてもどういうストーリーかを調べてまでは作らないでしょうね。もちろん人気のあるコンテンツだということは知っているのですが、それを動画にしたところでどれほど伸びるかは予想できていないし、そこまでしてやろうとは思わないんです。
大水:集まったからと言って、しばらく考えて思いつかなかったら「今日は無理だな」って解散することもありますからね(笑)。
飛永:そうそう。おもしろくない動画は出したくないっていうプライドはあるので、無理な時は無理しないんですよ。撮ってみて、おもしろくなかったら載せないこともありますし。
ーーYouTubeの場合、時間制限がない上に、見ている人の反応も投稿するまで未知数だと思います。アドリブ中心の動画の場合、終わりはどのように決めているのでしょう?
飛永:だいたいこういうボケをするということを、ブロックごとに決めているのですが、動画が8分以下だとYouTubeの広告が1個になってしまうので、7分で終わりそうなときは無理くり質問したりします(笑)。でも、それをいれることでおもしろくなくなってしまいそうなときは潔く辞めていますね。
大水:逆に相方から巻きを入れていることもあります。それはカメラの充電が残り少ないか、メモリーがいっぱいのとき(笑)。撮りながら決めている部分も多いです。
飛永:アドリブだとおもしろくても、狙いで入れてみたらおもしろくないことってよくあるので、撮り直しはしたくなくて。毎度探り探りですね。
ーーTikTokはフル尺ではなく、数秒で終わらせている動画が多い印象です。そういった面でも斬新さを感じます。
飛永:そんなつもりはなかったのですが、TikTokの中では、前例がない新しいことになりましたよね。昔、ライブで東京03の飯塚さんから「ラバーガールはネタのつかみが早くておもしろいよね」って言っていただいたことがあって、つかみだけを披露していたことがありました。そのときの反響が大きかったのでTikTokに上げようかって。普段から「ネタのつかみは、めちゃくちゃおもしろく作ろう」という気持ちでやっていたので、無理もなく、あの形になったのかなと。
大水:短ければ短いほど良いんですよ。会話のターンを少なく、1ボケ入れて、そこで終わりたい。でもこれは僕らがTikTokをあまり見ていなくて、TikTokのバズる法則を知らないからこそ、やれていることなのかも。
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