YouTuberと動画編集ソフトの幸福な関係 アドビ×UUUMのタッグ成立から考える

YouTuberと動画編集ソフトの幸福な関係

 アドビのクリエイター向けイベント『Adobe MAX 2022』。19日に開催された日本の基調講演では、さまざまなトピックが発表された。そのなかでも、UUUM株式会社とAdobe Premiere Proが共同で公開した記念動画「もっと高く、もっと自由に、楽しいを創ろう。全てのクリエイターと共に。」は、YouTuberの活動の変遷と、そのキャリアにおけるツールとの関係性を考えるうえで、面白い取り組みだと感じた。

 YouTuber業界は現在、大きなうねりの中にある。新世代の台頭や、既存の勢力の変動にくわえ、活動形態も多岐にわたるようになってきた。

 たとえば、かつてはクリエイターが自ら編集を手掛けることが当たり前だった。それに加え、毎日動画を投稿して注目を集め続けることもクリエイターがのしあがっていくうえでは当然のこととされており、クリエイター自身への負荷は相当なものだった。

 だが、最近ではベテランYouTuberたちがこぞって毎日投稿をやめ、一本一本のクオリティを上げることに注力する動きが散見される。一人での編集作業についても、ある程度の規模で活動しているクリエイターは、編集スタッフを雇うことで負担を軽減し、チームでの制作を行う動きも多くみられている。

 これについて、2年前の『Adobe MAX 2020』でHIKAKINが登壇した際、「人に編集してもらうとなると事細かく言わないといけなくて、最近はチームを作り始めている」と明かしていたことも象徴的だ。こうした動きの裏側には、動画編集ソフトの進化も欠かせない。

 HIKAKINは先のイベントで「その場にスタッフにいてもらい、撮り終えたらその場で『あそこの動いたとこなんですけど、そのあと編集でつないで。そうするためにやったから』とかを伝える」のが理想とし、「今後もYouTubeを続ける上ではチーム作りも大事。自分と同じ脳の人を育てるための試行錯誤をしている」と述べていた。『Adobe MAX 2022』では、『Adobe Premiere Pro』での動画編集作業における“共同編集機能”にスポットが当たり、『Adobe Photoshop』や『Adobe Illustrator』などでも共同編集をする重要性について説かれていたのが印象的だ。

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 チームでの映像制作がメインになってくると、先のヒカキンのように、自分の意思が編集に反映されないことを懸念するかもしれない。しかし、共同編集機能などを使って逐一状況が把握できていれば、自ら手を動かさずとも良いタイミングで軌道修正することも可能だし、より“自分の脳内”を共同編集者に伝えることができる。これによって、個人で編集していたクリエイターがチームでの制作に移行するハードルは、より下がったといってもいいだろう。

 動画編集ツールがより手軽に使いやすくなったことにより、YouTuberなどの動画クリエイターが増加したといえるここ十数年を経て、現在はその文化から育ったシーンとクリエイターが、こうして新たな取り組みをするに至った。今回の発表や新たな機能・技術も、新たな活動形態・表現形態を行うクリエイターが世に出る一助となるだろう。こうして、技術の発展とともに、クリエイターも進化していくのだ。

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