横浜流星はミステリアスな色男に収まらない“沼男”だ 「語らない」余白すら魅力に昇華

過去作から見る、横浜流星の魅力

 はっきりしないようでいて、どこか優しさが滲む。言葉にせずとも、その瞳に宿る感情の深さで相手の心を掴む。そんな横浜流星の演技は『わかっていても the shapes of love』(ABEMA)の香坂漣役で、視聴者の想像力を刺激し、物語の奥行きを広げていく。

 感情を露わにせず、しかし確かな想いを宿した表現からは、役者としての力量が感じられる。その澄んだ瞳には見る者を惹きつける不思議な力があり、画面越しであっても、一度その眼差しに触れれば、もう逃れられない。

 漣は、大学に特別臨時講師としてやってきた若き天才芸術家。その存在感は、これまでの横浜の出演作品とはまた異なる魅力を放っている。常識外れな言動と色気を帯びた仕草、そして一見クールな印象とは裏腹の柔らかな話し方。さらには、ヒロイン・美羽(南沙良)のトラウマとなっているモデル作品を壊すシーンや、繊細な感情表現が要求される涙のシーンまで、視聴者の心を掴んで離さない演技で魅せる。SNSでは「沼男すぎる」として話題を呼び、その魅力に取り込まれた視聴者たちは、まさに“沼”の住人となっている。

男子高校生から天才ギャンブラーまで…演技力で作り上げた説得力のある人物像

 そもそも横浜のブレイクを決定づけたのは『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)だ。本作の情報解禁時にも「自分が世に広く知って頂いたのは恋愛作品ですし」と振り返るように、不良高校生“ゆりゆり”こと由利匡平を演じ、多くの年上女子の心をさらっていった横浜。5日に1度の頻度でゆりゆりのトレードマークとも言えるピンクの髪を染め直し、髪質がどんどん変化したという徹底ぶりも当時話題となっていた。“舌ペロ”シーンをはじめとした数々の名シーンは瞬く間に話題を呼び、「横浜流星」の名前は若手俳優の最前線に躍り出た。

 とはいえ横浜の実力は、ブレイク以前から着実に築かれていたことは言うまでもない。同級生の妹との初々しい恋を描いた『兄友』から、異色な設定の『彼氏をローンで買いました』、胸キュン必至の『L・DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』、そして切ない青春を描いた『愛唄 -約束のナクヒト-』まで、ときにはギャップを見せながら、徹底した役作りで視聴者を魅了してきた。さらに近年の横浜は、イメージからは一見想像もつかないような狂気的な役柄でも圧倒的な存在感を示している。

 映画『ヴィレッジ』では閉ざされた村を舞台に、ようやく手にした平穏な日常から次第に追い詰められ、ついには狂気へと変貌していく主人公の姿を見事に表現。『嘘喰い』でダークな役柄に新境地を見せる一方で、『流浪の月』では内に秘めた欲望が徐々に溢れ出す複雑な心理を、緻密な演技で描き切っている。爽やかな印象とは真逆の、ゾッとするような深い闇を抱えた人物像までも説得力を持って演じきる横浜の表現力は、着実に進化を続けている。

 『着飾る恋には理由があって』(TBS系)以来、3年ぶりの恋愛ドラマへの出演となる本作。度重なる回数のタッグを組み、信頼を寄せる藤井道人がエグゼクティブプロデューサーを務めることもあり、劇場公開中の映画『正体』と並び、新たな横浜流星の姿への期待が高まっている。

 『わかっていても』に限らずだが、エンタメ作品に登場する“沼男”の本領は、その捉えどころのなさにある。しかし横浜演じる漣は、単なるミステリアスな色男には収まらない。一見すると危うい魅力に満ちた役柄だが、丁寧な演技によって説得力のある人物像が作り上げられているからだ。

 周りが一目置く天才芸術家であり、一見全てを持っているように見えて、儚げな危うさを持つ漣。しかし、軽薄に映りかねない甘い言葉や仕草の奥、美羽への眼差しだけはいつだって本気なのだ。理解し難い言動の先に時折垣間見える確かな想い、そして「語らない」余白すら魅力として形にする表現力は、これまでの横浜流星が積み重ねてきた演技があってこそ。どこかニュアンスで魅せるような作品の雰囲気をそのまま背負った、令和を代表する“沼男”の誕生に拍手を送りたい。

【特別映像】8人が織りなす、愛のかたち。|横浜流星主演ドラマ『 わかっていても the shapes of love 』毎週月曜よる9時ABEMAで無料配信中

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