『Weekly Virtual News』(2022年10月11日号)
韓国のバーチャルアイドルサバイバル番組と、日本のバーチャルモデルへの権利譲渡――バーチャルな活動者に新たなカタチの萌芽あり
韓国のエンタメ業界にバーチャルの波が本格的にくるかもしれない。そう予感させるのは、Kakaoエンターテインメントが始動したバーチャルアイドルデビューサバイバル番組「少女リバース(RE:VERSE)」だ。
番組は、現実世界で活躍するK-POPアイドルが、バーチャルアイドルとしてデビューするための競争に挑むというもの。素顔も素性も隠し、アバターと新たな設定とともにオーディションへ参加する。参加人数は実に30名。番組は11月28日に、YouTubeやカカオページにて配信される。
参加者が用いるアバターは、『VRChat』向けアバターとして流通しているものを、ある程度改変したものだ。フォトリアルなアバターでも、ローポリなアバターでもなく、VTuber然としたアニメチックな姿を採用したのは興味深い。参加者紹介PVでも、フルCGの空間で、VTuberのようにフルトラッキングで動く姿が目を引く。
韓国における『VRChat』向けアバターを活用したバーチャルアイドルには、「異世界アイドル(ISEGYE IDOL)」という大きな先例がある。昨年12月にYouTubeにて発表されたデビュー曲は、ハイクオリティなMVも話題となり、いまや1000万再生を突破している。「少女リバース」への影響を察するには、十分すぎるほどの成功をおさめている。
「異世界アイドル」という「流行の萌芽」に乗っかった可能性も考えられるが、完成された有料アセットを組み合わせることでアバターを用意できるというコスト的なメリットも「少女リバース」での『VRChat』向けアバターの採用理由の一つだろう。
アセット活用は、フルスクラッチのアバター発注よりも手早く、クオリティも一定水準を担保できる。デビュー未定のオーディション参加者のアバター調達に、とりわけ適しているようにも思う。仮に、オーディション参加者自らがアバターを用意するならば、落選したとしても「自身のアバター/身体」として利用し得る。日本の公開サバイバル型VTuberオーディションでしばしば見られる「オーディション落選後に消滅する存在」に持続性を与えることもできるだろう。