松原達也×林直孝に聞く、“科学アドベンチャーシリーズ”の過去・現在・未来
「新しいアドベンチャーの形を貪欲に追求していきたい」
――『ANONYMOUS;CODE』について、アニメ化など、現時点で見据える展開はありますか?
松原:アニメ化して頂けると嬉しいですね。そのために現在、関係各所と調整中です。
林:とは言っても、アニメ化とは相性の悪い部分も多くて。今作で採用したセーブ&ロードのシステムはプレイヤーと主人公・ポロンの関係性によって成り立っているので、アニメにしたとき、プレイヤーの立場をどうするのかという問題があります。また、テーマの一部になっている「メタ」は、アニメでは表現が難しい。この2点を理由に制作が頓挫しそうになったこともありました。結局、志倉の判断として、アニメ化はとりあえず置いておいてゲームとしてきちんと面白いと思える作品にしようとなったんです。
――今作に対する世の反応を見ると、個別のキャラクタールートがあるタイプの作品ではなく、一つのエンディングを目指していく物語になっていたため、「もっとプレイしたかった」という声が少なくなかったように感じました。本来ゲームとアニメには、プレイ・視聴にかかる時間の差がありますよね? 何十時間というボリュームを持つことも珍しくないゲーム作品を、30分×12話というアニメのフォーマットに落とし込むためには、大幅なシナリオの凝縮が必要なはずです。つまり裏を返すと、『ANONYMOUS;CODE』のアニメ化では、本来ゲーム作品のアニメ化に必要だったシナリオの凝縮が最小限で済む。この点は、前向きな材料とも考えられます。
林:インタラクション性とメタ要素さえクリアできれば、ボリューム感やテンポの良い展開、派手なアクションシーンなど、アニメ向きの要素も多いんですよね。
松原:そこが解決できれば、きっと良いアニメ作品になるのではないかと。ハードルは高いですが、クリアしがいがありますよね。
――次作の制作についてはいかがでしょうか。
松原:すでに始まっていますよ。いくつかの企画があって、その中には全編マンガ演出なんてものもあったりします。さすがに全編は厳しいんじゃないかなと考えていますが。
――どのような作品になりそうですか?
松原:まだ企画段階なので、具体的なところは全然決まっていませんが、ただ私自身、セーブ&ロードのシステムには可能性を感じていて。もちろんこのシステムは『ANONYMOUS;CODE』ならではという印象がありますので、次作にそのまま取り入れられるかはわかりません。もしスピンオフの制作が実現するなら、日常を描く少しゆったりした展開でのセーブ&ロードを活用したシナリオにもう一度取り組んでみたいですね。
――もう少し広い視点で、今後のゲーム制作について考えていることがあれば教えてください。
松原:動画コンテンツが全盛の時代に、いかに時代に合った形でアドベンチャーを提供できるかはずっと考えています。これだけゲーム配信の文化が盛り上がっているのに、テキストを読み進めることが主な体験となっているせいで、時代に逆行してしまうようなところがアドベンチャーにはありますよね。2018年に発売された『Detroit: Become Human』では、インターネットを通じて集計された世界中のプレイヤーの行動傾向を、自身の選択の判断材料とすることができました。このようにオンラインと共存できるようなシステムを、シリーズに取り入れていくのも面白いかなと感じています。
林:スコア制を復活させて、オンラインで世界ランキングとか?(笑)
――松原さんの得意分野に集約されてきますね(笑)。
松原:検討してみます(笑)。
――少し意地悪な質問かもしれませんが、新たな作品を出すたび、『STEINS;GATE』と比較されるのを散見します。このあたりに思うことは?
林:当然プレッシャーはありますが、なるべく意識しないようにしています。あえてシュタゲに寄せるような選択を取ることはまずありません。私としては、個々の作品で勝負したい、楽しんでもらいたい気持ちが強いです。
松原:同じですね。それぞれに持ち味があるからこそ、別のタイトルとして世に発表されているので、比較されることはまったく気にしていないです。
林:とはいえ、共通項があったりすると、シュタゲの設定やキャラクターを登場させようと志倉が提案してきたりもします。たとえば『ANONYMOUS;CODE』で言うなら、2036年はジョン・タイターがいた時代なんですよね。シナリオが交差するほど、その部分での葛藤はあります。悩み抜いた結果、今作にも関連するキャラクターを登場させています。
――それらを踏まえて、シリーズのファンに向けて改めてお二人が伝えたいこととは?
松原:「99%の科学と1%のファンタジー」をテーマに、今後もみなさんに楽しんでもらえるような作品を作り続けていきます。先ほども少し触れましたが、すでに次回作の制作も進行しています。ぜひご期待いただければと。
林:科学アドベンチャーシリーズには、ワクワクできる設定・シナリオと、ちょっとだけ頭が良くなったような気がする雑学が詰まっています。このコンセプトはきっとこれからも変わりません。そんなゲームを探している方、過去のシリーズ作品が好きな方、『ANONYMOUS;CODE』でファンになってくれた方は、きっと次回作も楽しめるはず。私たちも妥協せず制作を続けていくので、長い目で待っていてもらえると嬉しいです。
■商品概要
『ANONYMOUS;CODE(アノニマス・コード)』
ジャンル:メタ科学アドベンチャー
機種:Nintendo Switch™PlayStation®4
発売日:2022年7月28日(木)(発売中)
価格:通常版:8,580円(税込)
限定版:11,880円(税込)
ダウンロード版:7,700円(税込)
『ANONYMOUS;CODE(アノニマス・コード)』公式サイト:http://anonymouscode.jp/
CERO:C(15才以上対象)
〈コピーライト〉
『ANONYMOUS;CODE』©MAGES./Chiyo St. Inc.
『CHAOS;HEAD NOAH』©MAGES./NITRO PLUS/RED FLAGSHIP
『STEINS;GATE ELITE』©MAGES./NITRO PLUS 協力 未来ガジェット研究所
『ROBOTICS;NOTES DaSH』©MAGES./Chiyo St. Inc. ©MAGES./NITRO PLUS
『OCCULTIC;NINE』©MAGES./Chiyo St. Inc.