オカルトとネットはどう交差している? 志倉千代丸原作アニメ『オカルティック・ナイン』の現代性
現在放送中の、志倉千代丸原作アニメ『Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-』。筆者が視聴を進めていく中で抱いた印象は、「これは、オカルトを取り巻く環境をうまく描いているな」というものだった。タイトルの通り、オカルトをテーマとした本作だが、インターネットとオカルトの色濃い関係性を示唆する点も、とても興味深く感じられる。
現代日本のオカルトを語るに、1979年に発刊されたオカルト雑誌『ムー』の存在は外せないだろう。本誌では、UFOや超常現象に関する記事のほか、「戦士、巫女、天使、妖精、金星人、竜族の民の方、ぜひお手紙ください」というような、非常に独特な文通相手募集が掲載されていたことも特徴的だ。
そうした70年代以降のオカルトを巡る状況について、オカルトに詳しいライター・初見健一氏は、「今でこそオカルト的なものはサブカルチャー扱いですけど、当時は完全にメインストリーム。テレビにも雑誌にもその手の話題があふれかえっていました」と、2015年5月掲載のダヴィンチニュースのインタビューで語っている。(参考:ダ・ヴィンチニュース「日本中がどうかしていた! スゴすぎる昭和のオカルトブームをふり返る」)
特に、テレビを中心としたオカルトブームは、90年代まで続くこととなる。当時はUFOや心霊特番なども多く、科学者たちによるトークバトルも頻繁に繰り広げられていた。そうした状況をパロディ化していた作品のひとつとして、『地獄先生ぬ〜べ〜』が挙げられる。作中に、当時オカルト番組に多数出演していた大槻義彦教授をモデルにした、大月良彦というキャラクターを描いていた。
しかし、技術革新によって、映像・写真の捏造ややらせ疑惑が多数浮上し、2000年以降、オカルト番組はテレビから徐々に姿を消していくこととなる。そして新たに台頭したのが、インターネットだ。様々な情報がテレビからネットへと移行していく中、オカルト愛好家もそれに続くように、ネットへと住処を変えていった。それと同時に、オカルト情報は、これまでテレビが報じてきた写真や映像とは打って変わって、大型掲示板を中心とした文章の伝聞型へとシフトチェンジしていった。
オカルトにまつわるそうしたメディア変遷が顕著に現れているのが、2011年に放送されたアニメ『Steins;Gate』だろう。本作は、2000年にアメリカの大手掲示板に現れた、自称タイムトラベラーのジョン・タイターから着想を得たストーリーとなっている。現実世界に現れたジョン・タイターは、2036年から訪れた未来人を自称し、2000年以降のアメリカ国勢や世界情勢について、様々な予言を残したことで、大きな話題となった人物である。
海外のみならず、国内の巨大掲示板、2ちゃんねるも負けてはいない。「オカルト板」も、オカルトファンを中心に、大きな影響力を持っているのだ。オカルト板に現れた、ポスト・ジョン・タイター的存在「2062年氏(2062年から来た自称未来人)」に対する大きな反響は、2ちゃんねる内に留まらず、SNSでも広く拡散された。ほかにも、書き込み主が自身の恐怖体験を語った「八尺様」のエピソードは、思わぬ方向で人気を呼ぶこととなり、その後「八尺様」がpixivで萌え絵化されたり、漫画化されるまでにも至った。
このように、インターネット上で一定の話題を呼んだオカルト情報は、その後二次創作化されたり、アニメや漫画作品の元ネタとして、ストーリーの一部に組み込まれていくことも少なくはない。