『スプラトゥーン3』の“ひかえめな進化”は期待通りだった? 『あつ森』超え“最多販売記録”更新の行方

『スプラ3』“ひかえめな進化”は期待通り?

 9月9日、『Splatoon3』(以下、『スプラトゥーン3』)が発売を迎えた。

 2022年屈指のAAAタイトルとして、発表以降ずっと注目を集めてきた同タイトル。YouTube上では、数多のストリーマーが配信をおこなっている。

 『スプラトゥーン3』は、ファンの期待に応える仕上がりとなっているのだろうか。プレイから得たインプレッションをまとめていく。

好みのブキを片手にインクで戦うシューティングアクション『スプラトゥーン3』

スプラトゥーン3 紹介映像

 『スプラトゥーン3』は、2015年にリリースされたWii U専用タイトル『Splatoon(スプラトゥーン)』を初作とするシリーズの第3作。任天堂が開発・発売を手掛ける、三人称視点のシューティングアクションだ。プレイヤーは特性の異なるさまざまなブキのなかから1つを選択し、敵プレイヤーを倒したり、ステージをインクで塗りつぶしたりすることで、バトルでの勝利を目指していく。

 任天堂のほかの看板作品とくらべるとまだ歴史の浅い『Splatoon』シリーズだが、すでに同社の主力コンテンツのひとつとなりつつある。第1作は全世界495万本(※)、第2作は全世界1,330万本(※)を販売。満を持してリリースされた今作も、発売から3日で国内345万本を売り上げた。これは歴代最高だった『あつまれ どうぶつの森』(全世界累計で3,864万本※)の約268万本の記録を大幅に更新する数字。第2作の国内累計販売本数の約7割を3日で販売したことになる。今回のスタートダッシュにより『Splatoon』シリーズはあらためて、その実力を界隈に示した。

※数字はすべて2022年3月末時点のもの。

任天堂の勢いと底力を体現する一作に。

これからはじめるスプラトゥーン

 快調な滑り出しを見せている『スプラトゥーン3』だが、現状の売上本数が今作に対する評価であるかと言われればそうではない。なぜならその数字を裏付けているのは、前作の評価に基づいた期待感であるからだ。はたして今作の出来はどうなのか。

 まず私が感じたのは、『スプラトゥーン3』がシリーズらしさをそのまま受け継いだうえで、細部にアップデートを加えた作品であるという点だ。同タイトルには、新たなブキや新たなスペシャル(シリーズにおける必殺技のようなもの)、新たなステージなど、さまざまな新要素が追加されているが、根幹の遊び方は前作までとほとんど変わらない。カジュアルマッチの「ナワバリバトル」、ランクマッチの「バンカラマッチ」などがその中心だ。

 しかし、UI/UXの面では、プレイヤーへの細やかな配慮がうかがえる。「前作からデータを引き継ぐことで、無条件に思い入れのあるブキを手に入れられるチケットの存在」「おなじくデータを引き継ぐことで、プレイヤーレベルを一定まで上げなくてもランクマッチへと入れる仕様」「シングルプレイ・マルチプレイに対応した2つのランクマッチシステム」「ブキの試し撃ちができるマッチロビー」などはその一例である。

 多くのファンが求めていたのは、前作までとおなじ楽しみ方ができる前提のもとに、少しの新しさ・少しの快適さを加えた最新作だったはず。『スプラトゥーン3』に盛り込まれたひかえめな進化は、シリーズの立ち位置を正確に認識している制作チームのファインプレーというほかないだろう。ゲームカルチャーの歴史を見ると、続編に大きなテコ入れを施した結果、魅力が半減してしまった作品も珍しくない。

「積み上げてきた信頼は守りつつ、プラスアルファの新たな魅力を提案する」

 これこそが“シリーズの正統進化”とも言える方向性だったのではないだろうか。

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