“ブラック公務”の兼業VTuberから、新たなステージへ 春崎エアルの魅力を語りたい

春崎エアルの魅力を語りたい

 現在のVTuberシーンにおけるトップランナーの一つであるにじさんじ。そのなかにおいてもタレントの活躍する分野は日々拡がっている。

 メインとなる生配信に加え、事務所が主導する企画への参加や監修、主に一人ひとりのライバーが主導となって進む歌ってみたなどの動画のほか、ここ1年ほどはエンターテインメントのフィールドでアーティストとして日の目を見る者も増加している。

 デビューから順を追うように紹介してきた本連載。元1期生、元2期生、元ゲーマーズ組の次は2期にわたる元SEEDs組。前回は成瀬鳴について書いたが、今回は彼と苦楽をともにしてきた春崎エアルについて記していこう。

 2018年6月8日に成瀬鳴らと4人グループ「にじさんじVOIZ」としてデビューした春崎エアル。

 ショートカットの青髪、右目下にはホクロがあり、着こなす洋服は貴族のようなカッチリとした白いスーツをはじめとし、カジュアルなパーカーとゆるめのパンツのセットアップ、さらにはスーツ衣装よりもガッシリとした品のあるアイドル衣装と、その好青年ぶりがさらに引き立つビジュアルで、多くのファンの心を掴んできた。

 前回紹介した成瀬鳴とおなじく、デビュー直後にVOIZがひと月も経たずに活動を休止するようになり、春崎は2018年8月9日にSEEDs2期生の第1弾として転籍。成瀬鳴と同じく早々にリスタートを図ることになった。

 にじさんじに所属している/していないに関わらず、VTuberとして活動することと本業のお仕事を両立している方は数多い。VTuberシーン全体を見通せば「兼業タイプ」がマジョリティであり、VTuberを主にしている「専業タイプ」にして活動している者は数少ない。むしろ「専業になれるだけの活動力がある・強い意気込みがある」として受け取られ、ファンからより強い応援がなされることが多いだろう。

 春崎を知るにじさんじのファンの多くは、「春崎エアルは王子としての公務が激務」「ブラックな職場に勤めている」といったイメージを持っていることだろう。彼は兼業するかたちでこれまで活動してきた。

 その激務ぶりは、普段の配信活動を通しても十二分に伝わるところだった。とある月には10回~15回と頻繁に配信したかと思いきや、翌月には一気に3回ほどしか配信することができないというパターンが何度もあった。

 「朝から深夜まで働きづめでさ……」と口にするのももはやテンプレート。深夜の時間帯で配信中に、“公務先の上司”から連絡が飛び込み、急遽対応したこともあったほど。これには流石に「こんな深夜に送ってくんなよ!」「知らない、明日やりまーす」と冗談めかして苛立っている姿を見せていた。

リスナー「そろそろ固ツイ更新しろ!」僕「はい。」

 2019年の初めには過労による自律神経の失調・脱水症状の影響で入院になり、復帰配信では「残業時間が月で128時間になったことがあった」とやんわりとした口調で明らかにするなど、そのオーバーワークな働きぶりがファンのあいだで知られることになった。

 「感情論ででしかないけど、この世のブラック企業は全部つぶした方がいい」「ブラック企業潰れろボイスを販売しよう」と冗談めかして話すこともあったときにはあったが、それ以上に「配信をどのようにすべきか?」にもより注力していたのが春崎らしい。

 2021年11月に『スプラトゥーン2』を使用した「にしスプラ大会」に参加した際、大会当日の朝2時に帰宅し、そのまま12時間ほどぶっ通して練習していたところ、チームメイトの天宮こころに「マジで寝てください」「寝ないと怒ります」と言い詰めてしまったほど。

【漫画】寝不足ダメ絶対!二足のわらじな王子を心配する仲間たち【マンガ動画】

 自身の同期であるラトナ・プティとエリー・コニファーが健康上の理由で活動を止めてしまっていたことも怒った遠因としてはありそうだが、もちろん主な理由としてはエアル本人が健康に害ある生活を送っており、大会中に倒れられたら困るからだ。

 なんの疑問もなく夜中から昼過ぎまでゲームしつづけてしまう辺りに、春崎の「廃人気質」が見えてくる。

 そんななか、2022年8月末を一区切りにして公務を休職することになったのは、にじさんじファンのなかでもまだ知らない方もいるであろう。実質的には退職ということもあり、彼もまた「専業VTuber」へと変化したのだ。

 その後にコラボ配信した長尾景からは「公務を辞めたということは、いまは王子じゃなくなったってこと?」「王子にあこがれる一般男性になったんじゃないんですか?」とグレーゾーンギリギリのイジリもありつつ、「一日が経つのが遅い。朝6時から深夜2時まで働いていたときは1日が長かったけど、いまは有り余ってる」とあまりのギャップに戸惑いがあるようだ。

 そのなかでも「友だちといっぱいゲームしたい」とハッキリと口にしている春崎。元々の廃人気質な一面からみると、これまでほとんどしてこなかった長時間のゲーム配信を好むスタイルに変化する可能性も捨てきれない。

 「王子、配信しないでちゃんと寝よう?」というセリフを言わなくて済むかどうかは、これからの彼の動き次第であろう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる