にじさんじ 葛葉、叶、ROF-MAOによる、強烈に「ポップ」な一夜 『Aim Higher』に感じたアーティストとしての成長

にじさんじ『Aim Higher』レポ

 2022年7月27日、バーチャルライバーグループ・にじさんじが主催する『Kuzuha & Kanae & ROF-MAO Three-Man LIVE「Aim Higher」』が横浜のぴあアリーナMMにて開催された。

 まず、この大舞台へと至るまでの流れを大雑把ながらもまとめようと思う。

 2021年10月21日に結成し、2022年4月13日に1stミニアルバム『Crack Up!!!!』を発売。この日に向けて着々と準備を練ってきた加賀美ハヤト、剣持刀也、不破湊、甲斐田晴の4名によるROF-MAO。

 自身のBirthday Event『Kuzuha Birthday Event 「Scarlet Invitation」』を2021年11月10日に開催し、2022年3月9日1stミニアルバム『Sweet Bite』をリリース。ユニバーサルミュージック内のレーベル・Virgin Musicからメジャーデビューを果たした葛葉。

 ライブ当日である2022年7月27日にLantisより1stミニアルバム『flores』をリリースし、メジャーデビュー当日にライブで楽曲を初お披露目した叶。

 にじさんじ所属の男性VTuberとしてさまざまなライブステージを踏む機会があった6名が、音楽レーベルに関わった身の上で音楽ライブを開催するということ、しかも1万人レベルのアリーナの立ち見エリアが埋まり、超満員のなかでライブを披露する。まさにメモリアルな一夜になった。

 本日出演する6人のうち4人、葛葉、叶、加賀美、剣持は、2020年2月13日にZeppFukuokaで開催された『にじさんじ JAPAN TOUR 2020 Shout in the Rainbow!』に出演していたメンバーでもある。それから2年と数か月の間にアリーナ公演までたどり着いた。その足跡は大きな成長と変化なのは間違いない。

 登場する6人のなかには初めてライブステージに立つ者もいたが、そもそも「1万人以上レベルの観客を目の前にする」ということ自体、にじさんじが開催してきた数多あるライブイベントでも初めてのことであったはず。ステージから広がる光景は、誰も見たことのない未体験の光景であったはずだ。

 緊張感あるムードとは裏腹に、観客のムードは始まる前から柔らかかった。会場内でも映されていたライブ直前番組内でイブラヒムがトチったときに、笑い声があがるムードがライブ開演直前まで会場にはあった。

 18時になると会場は暗転、3枚の大型スクリーンにはカウントダウンとともに出演メンバーの名前が並んでいき、ライブがスタートしていった。

 1番手に登場したのはROF-MAOの4人。歌い始めたのは「New street, New world」だ。彼らはミニアルバム『Crack Up!!!!』のジャケットでも着ていたROF-MAO衣装で登場。このタイミングで初3Dでのお披露目となり、普段のビジュアルに慣れているファンからは「ワッ」と声が漏れるような盛り上がりだった。

 2曲目に歌い始めたのは「Let's Get The Party Started!」と、ミニアルバムのなかでもライブ向きかつハイテンションな曲で盛り上げていく。

 この曲のなかには甲斐田と不破による掛け合いがあり、原曲ではイケメンな表情を見せたところからリスナーに殴られるという流れになっていたが、この日のライブでは2人のトークで盛り上げ、加賀美が横から岩を投げてツッコむという流れになっており、4人が無人島でサバイバル生活をしていた際のエピソードを忠実に盛り込んでいたことに思わず笑ってしまった。

 MCではライブイベントに初出演となった甲斐田から順々に観客にリアクションを求めていったり、新衣装の話しになれば「回ってみなさんにお見せしましょうか」という流れから剣持がキレイな前転を見せてくれるというボケまで、終始彼ら4人のワチャワチャとした会話で盛り上げてくれる。

 3曲目に披露したのは、まさかのORANGE RANGE「キリキリマイ」。「僕ら4人には縁もゆかりもあるような曲ってないんだよね」と剣持さんが切り出すと、「番組収録中に脳内BGMがこれになることがある」と加賀美社長が切り返す。彼らを中心にして放送されているレギュラー番組『木10!ろふまお塾』の、あの破れかぶれにも近い思い切りの良さや高揚感の裏側が見れた気がした。

 さて、この日のライブでまず目を奪われたのは、出演するメンバーらの3Dボディの表現が向上していたことだろう。

 舞台演出・照明のスピーディーな展開や体に照りつけるような描画、光と影部分のコントラストをうまくアニメ的に表現してみせるなど、ステージ上の変化をリアルタイムで3Dボディに反映していく革新的なライブを見せてくれていた。

 1曲目の「New street, New world」では頭上斜め後ろからのライトが照らされ、髪の毛・上半身へと流れるように光と影がついていくのが確認でき、その後には真後ろ・左・右から彼ら4人を捉え、MC中にはまさに「にじさんじ “LIGHT UP TONES”」でも見られたような「3Dボディを立体的に捉える」ようなカメラアングルが随所に見られた。

 これまでの3D技術に加え、現実世界の変化をビビッドにバーチャルな存在に反映していくという演出力・AR技術が、ついに有観客ライブイベントにも登場したのだ。

 いままでのライブイベントでは左右に動くことでしか表現できなかった彼らの動きを、左右ではなく前後の見え方にも意識が向いているのが受け取れる場面があった。「I wanna! You wanna!」だ。

 この曲はダンスチューンの盛り上げナンバーであるのだが、どうしても並列で並んで踊ることを強いられる以上、例えばK-POPアーティストが魅せる「カルグンム(刀群舞)」のようなキレと集団美に溢れたダンスのように見せるのは当然難しいだろう。

 代わりに「3Dボディでここまで動かせる」というロマンで、ライブを盛り上げ緊張感を保つことになる。この曲では、4人で一気にバク転をしてみせて大きな拍手が沸き起こったのがそれに当たるだろう。

 本来ならプロのダンサーでもない彼らがバク転に挑戦して見事成功させるという点に驚かされるところだが、ここでバク転を見せた際に、ボディの横からカメラで捉えていたところに対して、前から後ろへとバク転をしているという点に驚いた。このカメラアングルと4人の動きは、AR技術を導入して「奥行き」を意識していたからだろう。

 そんなライブ演出の違いも見せたところで、5曲目には7月21日に歌ってみた動画として発表されたザ・リーサルウェポンズの「きみはマザーファッカー」を歌っていく。

 「F」ワードを含んだ侮辱的なメッセージをあまりにも元気よく純粋無垢な衝動で歌っている楽曲だが、このおバカ加減やB級なコミックソングを全力で歌いきっていこうというスタンスこそ、「にじさんじ」「ROF-MAO」らしさを貫く核であることは間違いない。

 6曲目と7曲目にはミニアルバムに収録されている「ラックハック」「知っている手紙」を披露する。加賀美を中心にしてハイトーンかつ明るい声色を持った4人が揃っていることもあり、4人が同じくメインメロディを一緒になぞるように歌うと爽快感や突き抜け方が段違いだ。

 8曲目でROF-MAOが最後に歌ったのは「前進宣言」。赤・黒に彩られた照明演出から、原曲とは違った外した歌い方やフェイクを使って歌っていく4人。先ほどの2曲から一気に空気を変えて「強かさ」を強調した1曲で、4人のステージは締められた。

 筆者が別のメディアで彼らにインタビューをしたとき、加賀美ハヤトはライブに向けて危機感を持っていると口にしていた。そんなこともあって、少し身構えて見させてもらったが、ボケとツッコミを入れ込んだMCはもちろんのこと、ワングレードあがった舞台演出に支えられたライブパフォーマンス、4人のボーカルは統一感という点で曲ごとにピタリと符号していた。

 笑いとシリアスさも兼ね備えながら、ネガティブさやポジティブさにも触れて、リスナーの心を本気で揺らしに来ていた。4人のポテンシャルを十全に生かして今のROF-MAOが叩き出せる最高点を見ることができたライブ出会った。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる