ハマ・オカモト × ゲーム実況者・shu3対談 ジャンルの異なる2人が考える「良いもの」とは?
『好きだねぇ~!』って言わせたい
shu3:ハマさんにお聞きしてみたかったのですが、僕は、自分の作る動画の理想として、視聴後に「なんかよく分からないけど良いもの見たな」っていう感想が残るものを作れたらいいなと思っているんですが、楽曲制作や演奏における「良いもの」ってどういうものなのか、ぜひお聞きしてみたいです。
ハマ:そうですねぇ、音楽はもう伝統芸っていうか、よく昔から言われるのは「オリジナルのフレーズはもう誕生しない」とか、「新しい和音はもう無い」とかって説があるんですよね。それは本当にその通りだと思うんです。
その上でどうやって面白いものを人に届けるかという話だと思うんですが、例えば一口に「引用」といっても「パクり」と「オマージュ」って全然違うじゃないですか。明確に「こう違う」って言うのは難しいんですけど、そこには「透けて見える愛情を感じられるか」みたいな違いがあって。フレーズひとつとっても、曲一曲とっても、「これはパクりでしょ、やっちゃダメでしょ」って思われる引用もあれば、「うわぁもう! いまのフレーズ、アレじゃん!」っていう喜びや驚きを持って迎えられるようなオマージュもある。その2つを分けるのはやっぱり、作り手の愛情のベクトルだと思うんですよね。
そういうことって、別に歌詞カードに書いてあるわけでもない。「ここはアレをオマージュして作りました」とか書いてあるわけじゃないけど、それを感じ取れる瞬間っていうのは、リスナーとしてはたまらない喜びなわけです。で、僕はリスナーでありながらプレイヤーでもあるので、リスナーの人たちには自分が感じたような驚きを与えたい、同じような気持ちになってほしい、というのは常に思っています。
shu3:なるほど……!そういった面白さって、僕のような音楽の知識がない人にも伝わるものなのでしょうか?
ハマ:いま僕が話した例は、前提として”元ネタ”を知ってるていで話しましたけど、でも知らない人にとってはそれが”初めて”の出会いになるわけですよね。僕らが自分の好きな音やフレーズを自分なりに組み立てて楽曲を作って、その楽曲やフレーズに純粋に衝撃を受けてもらえるなら、それはそれで一つ、すごい体験として誰かになにかを与えたことになる。で、最初の方にもお話させていただいた、「思っていないことは言わない」とか、「嘘をつかない」っていう話にもつながるんですけど、僕は今話していたような「引用」の出典を、全部言うようにしてるんです。
だから自分たちの楽曲でも、「このフレーズはもうコレが好きすぎて、コレをこうしてオマージュしました!」ってちゃんと伝えるようにしてて。それをどちらも聴いた人がどういう体験をするのか、その話を聞くのが一番好きなんですよね。
そこで極端な話、僕らの曲よりも引用元の本家の音楽を好きになってもらえるのもすごく嬉しい。「あ、ここから引用してるんだ」って気づいてもらったときに、同時に僕らの愛情さえ伝われば、多分イヤな感じに受け取られることはないだろうって信じているので、それを含めて全部話すようにしていますし、それはリスナーとしてもプレイヤーとしても思うことです。
shu3の動画を見た時の気持ちも全く一緒です。好きなゲームの動画を見たら「そこ、いいよね!」って思うシーンがたくさんあるし、知らないゲームを観るときにも面白く観られる。「良いもん見たな」って、そういうことに繋がるのかな。
あと僕らの場合はライブとかもやるので、それはもうその日にしか起こらないものを現場で体感して貰う機会だから、一番「良いもの見たな」って思わせなきゃいけない瞬間です。ちょっと考え方は違っちゃいますけど、そういう意味ではいろんな機会がありますね。
shu3:「自分の好きなものを作品や演奏に込めること」が、「良いもの」につながっていくんですね。
ハマ:そうですね。「好きだねぇ~!」って言わせたい、みたいな。良いじゃないですか、なんか。言う方も嫌味じゃないと思うし。そこですよね。「ooに似てる!」「好きだねぇ~!」とか言われるのは基本うれしいですね。
shu3:確かに、「好きだねぇ~!」は自分にとっても最上級の褒め言葉ですね。
ハマ:時々、マイナスな言い方で「おれはニヒルに言ってやってるんだ」みたいな人を見かけるけど、そういう態度を取らせた時点で僕らのやったこと、やりたいことがすでに伝わってる証拠だと思うし。
僕らはたまに「レッチリのパクり」って言われるんですけど、「レッチリのパクりって凄くない!?」って(笑)。引用がすごいじゃんって。パクりと言われるのはあんまり好きじゃないけど、でも聴いた時の体験として「うわ、ooを聴いた時みたいだ!」と思わせてる時点で気付きだし、それを言いたいってことは、なにかしらのアクションにしたいエネルギーを楽曲が生んだということだし。僕らの楽曲が”なにかの気付き”になったなら良いなって思うようにしています。
shu3:なるほど……!ものすごく、タメになりました。今回ハマさんの話をお聞きして、これまで自分が持っていた「良いもの」というボンヤリしたイメージに、うまく自分の中で整理がついたというか、解像度が上がりました。
ハマ:いえいえ、むしろ同じこと思っているんだなって。ありがとうございました。