平野紗季子がPodcastでの発信や「Sound Up」を経て気づいた、“声を上げること”の重要性
ポッドキャストで声を上げることの力
ーー 「Sound Up Japan」プログラムでは、企画・運営を担当するファシリテーターとして参加されています。
平野:Spotifyさんから「Sound Up」プログラムのご依頼をいただきました。コンセプトは、マイノリティの声を拾い上げて、世の中に発信していくということでした。日本では「女性」がテーマになっているので、女性のポッドキャスターがもっと増えたらいいよねということで、お声がけいただきました。
ただ、私自身は食オタクであって、ポッドキャストのプロフェッショナルではないので、お役に立てるのか不安ではありましたね(笑)。もうひとりの樋口聖典さんがポッドキャストを研究しつくした達人のような方なので、そのメソッドを私も勉強させてもらっていました。
ーー「Sound Up」のコンセプトについてどう思いましたか?
平野:本当に素晴らしいなと思いました。世の中に多様な声が生まれるというのは、すごく価値と意義がある。私は同じ女性の立場として、どうチアアップするかということが求められていたと思います。
Spotifyのサポート体制がめちゃくちゃ万全に整っていることにも感銘を受けて。声を上げるために何ひとつ障壁があってはならない、といったスタンスなんですMacBookやマイクなどのデバイス等の制作環境も各参加者に提供されるなど何から何まできめ細やかでした。さすがのプロジェクトだと思いましたね。
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ーー平野さんはファシリテーターとしてどういうことをされましたか?
平野:「Sound Up」は、グローバルで展開されているプログラムで、これまでの経験をもとにした育成プログラムがすでにメソッド化されてるんですよね。私たちもレクチャーを受けながら、日本流にアレンジし支援を行いました。
参加者の皆さんの企画にアドバイスをしたりしました。私はコピーライターの経験があるので、タイトルやコンセプトのブラッシュアップのお手伝いをしたり。世の中で声を上げて活躍している女性のお話を聞く機会を設けたり。本当にありとあらゆる角度から関わりました。
ーー参加者の方とはどういうやりとりがあったのでしょう?
平野:「届けたい内容とその相手」が明確な方も多く、そのコンテンツと当該のターゲットをどう繋ぐかという部分で一緒に頭を悩ませたりしました。特に社会的な課題を扱うコンテンツが多くあったこともあり、そこには難しさやデリケートさがあるなと。
たとえば、中高生に向けて性教育をもっとカジュアルに伝えたいという企画がありました。それをどうやって落とし込んでいくのか。「10代というターゲットをもっと広げて考えたほうが結果的には伝わるかな?」「どういうビジュアルやコミュニケーションだったらいいだろう?」など、考えることは無限にあるので、一緒に一つずつ丁寧に考えていきました。
教えるというよりも、サポートするような感じでしたね。皆さんそれぞれに既に素晴らしいコンテンツを持っている。あとはそれをどのような形ならよりよく届けられるか、という部分でお手伝いをしていったという感じですね。
ーー参加する中で何か感じたことはありますか?
平野:声を上げるということは、生半可な覚悟ではできないことだと思いました。多くの人に向けて発信するリスクもあるし、自分が傷つくこともある。勇気を持って集まってくれている方達の思いが折られることがあってはならない、という気持ちで伴走していました。
ーー平野さん自身が影響を受けたような部分もあるのでしょうか?
平野:すごく刺激になりました。勇気を出して前に踏み出すことで、多分きっとまたどこかにいる孤独な誰かを救えると思うんです。「そうだ、私もそう思ってた」とか「ああ、自分だけじゃなかったんだ」とか。そういう連鎖が増えていったらいいなと思います。
私自身、そうやって誰かを……といっても、私はただおいしいものについて語っているだけなんですけど(笑)。でも、私が食べることの幸せを語ることで、リスナーの方から「こういう幸せが世界にあったんだ」「人生が楽しくなった」と言ってもらえることがあります。私も自分の思いを言葉にすることで、また誰かと分かちあい繋がっていく、その喜びを大切に、発信を続けていけたらいいなと思っています。