“負けヒロイン”からの下剋上。にじさんじ・森中花咲の転機と成長譚

にじさんじ・森中花咲、“負けヒロイン”からの下剋上

 まず、彼女が自認するように「オタク」であったことは重要であろう。もともと少女マンガが好きだったことも影響して、徐々にガールズラブ系の作品も好きになっていった彼女は、『うたの☆プリンスさまっ♪』をきっかけにして乙女ゲームにもハマるなど、その嗜好範囲の広さ・寛容さがうかがい知れる。

 アニメにも強い愛着があり、いちばんに愛しているといえばディズニー作品だろう。「ライバー以外の仕事に就くとしたらディズニーキャスト」と豪語しており、ゲームプレイ中でも普段の雑談中でもディズニー関連の話題をほぼ必ずあげているほどだ。

 これまでにもにじさんじ所属のタレントとディズニーランドへ足を運んだことを何度となく報告したり、ディズニー専用の雑談枠を設け、2021年3月7日にはドーラ、花畑チャイカ、ジョー・力一の4人でディズニーソング3Dライブを行なったほどの熱量だ。

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 ハリー・ポッター関連も同じように好きということも踏まえて語弊を怖れずにいえば、真っ当なる女性オタクとしてのベースが森中花咲にはあるように見える。リスナーや同僚らにも受け入れやすい、それどころか彼らを理解するに十二分なセンスを持ち合わせていたのは見過ごしてはいけないはずだ。

 もう一つあげるとすれば、にじさんじとしてデビューする前までゲームにあまり触れることがなく、不慣れであったという点にある。苦手意識からデビュー後1年ほどは雑談配信、歌配信、ちょっとした企画配信で乗り切っていた。

 一見すればこれは弱点であろう。そのことについて、彼女は以下のように語っている。

「元々あたしがこれまでやってきたゲームといえば『ポケモン』シリーズくらい、それ以外はやったこともない、ただのディズニーが大好きな女の子だったの。『ゲーム配信をしてもいいですよ』となったとき、アプリのテスターとして入った自分としてはよく分からない状態だった」

「そもそも自分は雑談・企画・コラボの3つしかやってこなかったけど、ゲーム配信を求める声がにじさんじどころかVTuber全体にも増えて、ゲーム配信をする人が増えてきたのをみて、『これは時代にノらんとだめだ!』と思ってやり始めたのが『Minecraft』だった。そしたら1年後くらいには、それまでキツかった画面酔いがしなくなってた!」

 こうして2019年初めにゲーム配信をスタートした彼女は、『Minecraft』『Getting Over It』『みんなのリズム天国』『どうぶつの森』といったゲーム配信の定番タイトルから、『モンスターハンター:ワールド』『ARK: Survival Evolved』を難なくプレイできるまでゲームスキル・勘を養っていくこととなる。

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 2022年現在、森中花咲のゲーム配信と言えば『Apex Legends』だという人も多いだろう。多くの人気大会・スクリムに参加し、愛するキャラクター・バンガロールを操る彼女の姿を見つけることもあるはずだ。

 雑談好きなところからもうかがえるトーク力、熱心なオタク・スピリット、ゲームスキルがおぼつかないという点を打ち消そうとするゲーム配信へのチャレンジと向上心、「コラボした相手に楽しかったと思ってほしい」と口にだすほどに相手想いな気質などを備えた彼女には、にじさんじ内外のタレントと数多くのコラボが巡ることになり、公私をともにする友人も増えた。

 森中と公私を共にする友人と言って忘れてはいけないのは、御伽原江良の存在だろう。歌への愛情も強く、多くの動画・配信・イベントでその歌声を披露していた森中は、同じくディズニー好きでありプライベートで非常に仲の良かった御伽原とコンビを組み、petit fleursとして2020年春にNBCユニバーサル・エンターテイメントよりメジャーデビューをはたした。

 アルバム『premiere fleurs』やライブをこなしたpetit fleursとしての活動、ゲーム配信にも慣れ、大所帯となったにじさんじのなかでも存在感を放っていた彼女。

 そんな彼女の転機は、2021年上半期に訪れた。

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