QuizKnockと考える、子どものうちから“考える力”を養う重要性 小学生との対話を重ねて得た学びとは?

QuizKnockと考える子どもの“考える力”

 東大クイズ王・伊沢拓司が中心となって運営する、エンタメと知を融合させたメディアQuizKnock監修の書籍『10歳からできる 自分のあたまで考えること』が、3月24日に発売された。

 本書は、「答えのない問題」に向き合うことの大切さを考える、次世代のための学習実用本。QuizKnockからのヒントやアドバイスをもとに、様々な「答えのない問題」に対して、向き合う楽しさや大切さを体験できる。

 YouTubeチャンネルだけでなく、アプリゲームから、謎解きイベント、講演会、書籍出版などさまざまな事業を通して、「楽しいから始まる学び」を伝えているQuizKnock。今回、子どもに向けた学習本を作るにあたって、得た学びや気付きなどを語ってもらった。

ーー昨年12月、QuizKnockがどう解く?プロジェクトで子どもたちと一緒に作った絵本『答えのない道徳の問題 みんなで!どう解く?』が、マクドナルドのハッピーセットとして販売されていました。これらの活動が、今回の本の制作につながったのでしょうか?

伊沢拓司(以下、伊沢): どう解く?プロジェクトのメンバーのみなさんやポプラ社のみなさんと知り合い、この考え方を読み物という形で表現できないかと思い、今回本を出すことになりました。

伊沢拓司

ーーみなさんとしても子どもたちとの触れ合いの中で学びがあったのではないですか?

伊沢:「子どもたちの発想が柔軟」みたいなのはある程度当然のことですけど、その根本にある「前提を取り去って考える」力は魅力的でした。子どもたちを導く立場として行ったんですけど、我々自身が学ぶ機会になりましたね。

こうちゃん:如何に前提を置かないかということで話しているつもりでも無意識のうちに前提を持っていたんだなって、子どもたちと話していく中で自分自身も気づくことは多かったですね。

ーータイトルには「10歳からできる」とありますが、これは世間的に言われている「10歳の壁」からですか?

伊沢:その辺りは出版社の方と相談して決めたのでなんともいえないんですけど、我々としては年齢の早い段階からチャレンジしていただきたい。ルビの振り方とかはいろいろお願いした部分もあったりします。10歳からというのは一つの基準でしかないかなとは思っているのですが、皆様のご意見を伺いながらの部分は大いにございます(笑)。

ーーそうだったんですね(笑)。10歳の壁とは、ものごとをある程度客観視して認識できるようになることによって起こるつまずきなどを意味する言葉ですが、さらにその下の「なぜなぜ期」は、子どもの思考力を育む時期とも言われていたりしますよね。

伊沢:知識という自分の外部にあるソースを用いて考えることは、必ずしも柔軟な発想を阻むだけではなく、時には発想の糧にもなりますから、周りのコーディネートによる部分もあるのかなと思います。小学4、5、6年生とはワークショップを重ねましたけど、10歳の壁だからというのは考えずに、コーディネートの面で我々が“なぜなぜ”を投げかけていく。子どもたちが言ったことを肯定的に受け取りつつ発展させる。そういったひと工夫があることによって、抵抗を超えていけるのかなというのは我々の実感でもあります。

須貝駿貴

須貝駿貴(以下、須貝):客観視できるようになっていることは、確かにこの本の前提にはあるかもしれません。人の考えを聞く、ということは、人と考えが違うということを受け入れなければなりません。自分ひとりで考えていたら「答え」に辿り着けない質問もあるし、周りの大人がそれを導くように子どもたちに質問するにはこうしたらいいですよ……というのも書いてあります。

 客観視することで恥ずかしくなって、考えることをやめちゃうみたいなことは周りのサポートで取り去ろうねと。「答えのない問題を考える」ということは、客観視できていた方がより深めることができるので、10歳ぐらいからだとより一層深い会話ができるんじゃないかとは思います。

山本祥彰(以下、山本):実際に小学生とワークショップで話し合ったりしたことで、彼らは彼らなりにいろいろ考えているんだなと思いました。それぞれがいろんなことを考えていることを前提にして、この本を通して向き合ってあげるのがいいのかなと思います。

左から須貝駿貴、山本祥彰

ーーQuizKnockは「QK GO」として全国の中高生向けの講演を行っていますが、今回はさらにその下の年齢に向けた事業ですよね。そうした子どもたちに向けて、意識した部分はありましたか?

伊沢:QK GOでも2、3校ぐらいは小学校に行ったんですけど、プログラムを全部小学生向けに作り直したんですよね。そういったこともあって、今回も身構えていたのですが、やはり最初は上手くいかなくて。実際に哲学対話をやられているアーダコーダのみなさんに「もっと子供の回答を待たないといけない」といったことなどを教えてもらったりしました。僕の場合、子どもから回答が出てこないと「質問がよくなかったのかな」と思って質問の投げ方を変えちゃったりしていたんですね。これは社会人の会議だったら全然ありなんですけど、子どもたちは別の質問がきたと思ってさらに黙っちゃったりして、コミュニケーションの方法一つとっても全然違うなと。我々としては何が正しいのかをデータとしても持っていなかったので、それらを教わりながら一歩一歩やっていきましたし、何十人、何百人の子どもたちと会話をしてきてようやく「なるほどね。こういう風に考えているのか。この仕草の時はこうだな」というのが少しづつ分かってきたという感じですね。

須貝:僕は小学生のとき、周りの大人から「賢いね」と言われることに「自分で考えるなんて普通だろ」と思っていたんですけど、この子たちも当然自分で考えているんですよね。別に「賢いね」「よく考えてきたね」とかは言わなくてもいいと思っていて。普通の一人の人間として考える。こっちが大人ぶるから萎縮して考えが出てこないというのはありえるかなと思うので、大人から子どもに対してというよりかは、大人と喋るときと同じように意識してやるようにしました。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる