VTuberとストリーマーの“壁”を壊した、奈羅花の負けず嫌いとゲーム愛
現在のVTuberシーンにおけるトップランナーの一社であるにじさんじ。そのなかにおいてもタレントの活躍する分野は日々拡がっている。
メインとなる生配信に加え、事務所が主導する企画への参加や監修、主に一人ひとりのライバーが主導となって進む歌ってみたなどの動画のほか、ここ1年ほどはエンターテインメントのフィールドで、アーティストとして陽の目を浴びる者も増加している。
今回は、FPS〜サバイバルゲームを通じて多くのバーチャルタレントやストリーマーらと活躍している奈羅花について紹介したい。
奈羅花は2019年12月29日、前回紹介した来栖夏芽、ましろと共にデビュー。その後現在まで活躍しつづけてきているが、先輩としてともに交流してきた天宮こころは、奈羅花についてこう話している。
「奈羅花はこの世に10人くらいいて、人生10人分、10回分のオタク人生を歩んできているんだよ。多分1歳ごろからオタクをしているんだ」
奈羅花はアニメ・ゲーム・インターネット界隈の様々なジャンルに精通しており、真っ当な「オタク女子」と言っても差し支えない知識と熱量を持ち合わせたバーチャルタレントだと言えよう。その全てを書ききることは出来ないが、なるべくご紹介できればと思う。
まず、FPS〜サバイバルゲームのスキルはにじさんじ女性ライバーのなかでも随一の腕前であり、現在ではそのスキルはにじさんじファンにも知れわたっている。だがデビュー後から1年ほどは『VTuber最協決定戦 ver.APEX LEGENDS』に笹木咲、ラトナ・プティらと出場するに留まっていたうえに、そもそもFPSゲームの配信自体も現在に比べると少なめで、真の実力を知る人は少なかった。
彼女がこの当時「ゲーム配信」や「ゲームをプレイすること」についてどのように考えていたか、彼女の言葉をいくつかピックアップしまとめてみよう。
「ゲームでは勝たないと楽しくないタイプだった。『勝つ』ことにしか興味がなかった」
「チーム戦のゲームはめちゃくちゃ熱くなっちゃう。『奈羅花、なんか怒ってる?』なんてコメントが来るかもしれないし、あたしと同じ温度感でやってくれる人が中々いなかった」
「昔のあたしは、ゲーム下手なやつがゲーム配信する理由がマジで分からなかった。『なんでゲームヘタなやつがゲーム配信して、それを見てるの?』って」
「『Apexを配信でやらないんですか?』とコメントとかで言われたら、『あたしよりも上手い人やプロが配信しているんだから、それを見ればいいじゃん?』って答えていた。FPSが好きな人ならこの気持ち、わかるでしょう?」
もしも同じような言葉を、界隈や立場が違う方が答えていたら、一瞬にして非難のコメントが殺到するだろう。
それもそのはずで、『AVA(Alliance of Valiant Arms)』『Overwatch』『PUBG』『Apex Legends』などをプレイしてきたFPS強者な彼女は、『Overwatch』を2000時間以上プレイしてきており、「(Overwatchプレイ中)倒す敵のフォーカスが合わない」という理由で、当時気になっていた男性と絶縁したことも笑い話のように語ったことがある。
ここまでのゲーマー気質だからこそ「試合に負けることは許されない」「上手くなければいけない」という思考は根強く残り、ある種当然だったのだろう。
マシュマロでやってるゲームが男前過ぎてバ美肉かと思ってましたっていわれにゃらかです
AVA.OW.PUBG.エクバ.LOL.VALORANTが目立ちがちですが!!
ぷよぷよとか!どうぶつの森とか!ポケモンとかもしてます!
おんなです!!!!!!
— 奈羅花✖🍳 (@Naraka_2434) April 1, 2021
そんな彼女にとっての転機は、2021年1月26日にまでさかのぼる。Twitterで「配信外で好成績を取りまくっている」とツイートしたことをきっかけに、久々にApex配信をし始めると、配信内外で次々と高順位・高ダメージを取り続けた彼女。
そのなかでも「運で取ってる」「プレイを代行している」などのコメントが届いていたというなかで、『第4回 Crazy Raccoon Cup Apex Legends』の出場者を募っていたCrazy Raccoon所属のプロゲーマー/ストリーマーだるまいずごっど・ありさかの両名に直談判、同大会へ出場することを選んだのだ。
3人初めての顔合わせ配信では、ゲーム内最高ランクのプレデターランクのプレイヤーであった2人にも負けず劣らずのFPSプレイを配信で見せつけ、「あと5年は姫になれん」「ありえん上手い」「姫は姫でも武装している姫」と絶賛されることになる。
さまざまにボケてイジりつづけるだるま、イジられながらもツッコむ奈羅花、自由に肩入れして茶々を入れるありさか、というトリオ漫才がこの時点ですでに形になっており、笑いが絶えることない配信となった。
その後の配信や、大会練習となるカスタムマッチ、本大会でも同じような雰囲気で配信が続き、結果は3人も驚きの総合5位に輝くことに。
以降もコラボ配信をするだけではなく、互いが関わっていない配信中でもお互いが名前を挙げることも多く、10月15日に開催された3Dお披露目配信にゲストとして2人を呼び寄せたのも当然だといえよう。にじさんじの3Dお披露目のゲストにストリーマーが参加する初めてのケースになったが、彼ら2人は自身のバーチャルタレント活動を一変させた恩人だと言えるのだ。
「『ゲームは楽しくて面白い』ということを思いださせてくれたのがあの2人だった」
「自分の推しがプレイしていればそれだけで楽しい、1年も配信やってきてそのことに全然気づけていなかった!」
「だるまさんとありさかさんがいなかったら、あたしは辞めようと思っていた。『Apex Legends』を配信でプレイして、コメデター(注:生配信中の配信者に対して様々な中傷や文句をコメントする人を指すネットスラング)が湧いてきて、『こんなつまんねー奴らにゲーム見せるのなんて面白くない。辞めよう』と思っていた」