“結婚したくない男性”は何を思う? すれ違う男女の価値観描く『結婚してとうるさくて』

“結婚したくない男性”は何を思う?

 男女の違いってなんなんだろう、と聞かれたら「一緒の部分を探すことの方が難しいのではないか」とすら思うこともある。キャリア観、恋愛観、そして結婚観……男女のすれ違いなんて、挙げだせばキリがない。

 でも、実生活の中で起こるすれ違いは、相手のことが好きだとなんとなく「すれ違ってなんてない」と自分を騙してしまうこともある。だからこそ他人の話を聞く時の方が、客観視しやすいものだ。

 そんな「男女のすれ違い」を客観的に俯瞰できるのが、ABEMAの『結婚してとうるさくて』なのである。

都会的なしごできイケメンが、結婚したくない理由

結婚してとうるさくて

 『結婚してとうるさくて』は、ABEMAの人気ドラマ『30までにとうるさくて』のスピンオフ作品だ。令和アラサーのリアルな人生観・結婚観を描く『30までにとうるさくて』では、主人公の遥(さとうほなみ)は長年付き合った彼氏とのセックスレスに悩んでおり、職場の男性と浮気をしてしまう。本編では、揺れ動く遥のリアルな心情描写が見どころだったが、浮気相手だった敏腕クリエイター・知也(柳俊太郎)の心情には焦点があたらなかった。

 本作では、そんな男性心理にもしっかりとスポットライトが当たった。29年間、決まった相手とは付き合わずに、複数人の女の子たちとグレーな関係を構築してきたプレイボーイの知也。仕事面では実績もある彼、なぜ恋愛面ではのらりくらりとした行動を続けてきたのだろう。

 恋愛ドラマのいいところは、同性に共感するだけではなく、自分では気づけなかった男性心理にも気付けることだ。『結婚してとうるさくて』では、知也を主人公として彼がこれまでグレーな関係を作ってきた女性たちとの関係が描かれていく。

 第1話の知也のお相手は“家庭的な女”、まりえ(今泉佑唯)。ストーリーはスーパーでの買い物シーンから始まる。ふわふわワンピースに白コートを身にまとい、セフレ的ポジションの彼に「春菊って家にある?」なんて聞けちゃう彼女。ある意味たくましさを感じるほど、計算された「女性らしさアピール」ともとることができる。

 しかし、そんな彼女を知也は「しっかりしているところもあるのに、なんとなく素朴でかわいらしい」と受け止めている。同性から見れば少々わざとらしいほどのあざとさも、物事を深く考えない男性から見れば全く問題ないのだ。知也の家にエプロンを持参してまで作り置きの料理を作ったりしているのに、知也の評価は「やりすぎずかわいらしい」だ。自分にメリットが多いうちは、多少の家庭的アピールもしっかりクリーンヒットするのかもしれない。

 しかし、そんなまりえにも焦りはある。グレーな関係だからこそ、結婚という次のステップでは、きちんとアピールをしなくちゃいけない。そんな思いもあって「そろそろ冷蔵庫大きいの欲しくない?」、「下着タンスに入れといたよ」など、出過ぎたアピールをしはじめてしまう。ここまで来ると、知也も「侵食されている」と感じはじめてしまう。同棲や結婚という責任の発生する関係が匂わされた瞬間に、男性の心はふと曇ってしまう。

 不景気の今「男性だからといって一家の大黒柱と見られることは重く感じてしまう」という人も多い。知也自身、女性遊びにも法的縛りが課されたり、自分の財産を年収の低い女性に分け与えるような感覚に、違和感を感じている。「なんのために結婚するのか」は彼自身の中ではっきりしておらず、結婚はただ責任と面倒事が増えるネガティブイベントでしかない。

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