『エルデンリング』と『ポケモンレジェンズ アルセウス』の共通点。「オープンすぎないワールド」が大作ゲーム発展のカギ?
2022年、すでにいくつもの注目タイトルがリリースを迎えているビデオゲーム業界だが、なかでも頭ひとつ抜けた話題作といえば『Pokémon LEGENDS アルセウス』と『ELDEN RING』の2作であると言っても過言ではないだろう。
この2作には、とある共通点がある。それは「オープンワールド・ゲームが持つ魅力を大きく取り入れながらも、完全なオープンワールドではない」という点だ。では「完全なオープンワールド」とはなにか? ということを考え始めると、少々ややこしい話をしなければならない。
ビデオゲームに関する用語は、Webのコミュニティを中心に広まっていく中で、徐々に形を変えて浸透していく性質上、明確な定義の存在しないバズワードになりがちであり、「オープンワールド」という言葉の意味にも、かなりの幅が存在する。しかし、この言葉の浸透に大きく貢献した『グランド・セフト・オート』シリーズや『The Elder Scrolls』シリーズ、近年なら『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』などの作品群の共通点から考えるならば、「(屋外の)フィールドが、すべてシームレス(読み込みなどで途切れることがない)に繋がっている、3D空間を舞台としたゲーム」というのは、オープンワールドに当てはまるゲームかどうかの、ひとつの指標と言えるだろう。
加えて「ゲームの進捗によるフィールド移動の制限が、ごく序盤を除いてほとんどない」というのをオープンワールドのゲームにありがちな仕様のひとつと考えると、この用語が当てはまるゲームの特徴を、もう少し補完することができそうだ。「ごく序盤を除いて」というのは、チュートリアル中に限っては、行動範囲が制限されているゲームが多いため。また「ほとんど」という言葉をつけたのは、ストーリーの進展によって新たなエリアが解禁される、新たな移動手段の解禁により行ける場所が増える、というゲームが、オープンワールドとされるタイトルの中にも決して少なくないからだ。
定義論とも言えない、曖昧な指標の提示に終始してしまったが、それくらい、オープンワールドという言葉の使われ方は、多様化してしまっているのが現状だ。ひとまず本稿では、「(屋外の)フィールドが、すべてシームレスに繋がっている、3D空間を舞台としたゲーム」であること、そして「ゲームの進捗によるフィールド移動の制限が、ごく序盤を除いてほとんどない」ことの2点が、「オープンワールドらしいゲーム」であることの条件とした上で、話を進めていこう。
なお、本稿の執筆のために少し調べた限りでは、国内におけるオープンワールドという言葉の成り立ちや定義問題、英語圏における用法との差異などの事情については、ニコニコ大百科の「オープンワールド」の項目が、かなり詳細にまとまっていた。より突き詰めて考えてみたい人は、参考にしてみるといいかもしれない。
「完全なオープンワールド」ではないからこその新鮮さ
このように考えていくと、いくつものフィールドが個別に存在しており、ゲームの進捗に応じて新たなフィールドが徐々に解禁されていく『アルセウス』や『ELDEN RING』が「完全なオープンワールドではない」というのは、ある程度の納得を得られるのではないかと思う。
現に、『ELDEN RING』のメディアによるレビューを読むと、オープンワールドではなく「オープンフィールド」という言葉が多用されている。これはオープンワールドのようなすべてがシームレスな世界ではないが、それに準ずる広大な空間がゲームデザインの特徴になっていることを指しているのだろう。
『アルセウス』で言えば、本作を公式で「オープンワールド」と呼んだ記述はなく、一方で先日発表されたばかりの次回作『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』は、オープンワールドになることを公式Twitterが明言している。『アルセウス』と『スカーレット・バイオレット』の間にあるゲームデザインの差異により、「オープンワールド」という用語の使用において一線を引いていることが分かるだろう。
『ポケモン スカーレット・バイオレット』
新たな冒険の舞台は、なんとオープンワールド😳✨境目なくシームレスに広がる街や大自然…
そこで息づくポケモンたち…😌💭待ち受ける新しい出会いに、今からワクワクが止まりません‼💓#ポケモンSV #ポケモンプレゼンツ pic.twitter.com/phx4NzBQpc
— 【公式】ポケモン情報局 (@poke_times) February 27, 2022
一方で、『アルセウス』と『ELDEN RING』に共通する「広大なフィールドで、プレイヤーが自発的に目標を見つけ、ある程度自由な順番で攻略していく」といったゲームデザインについては、オープンワールドのゲームにも相応の歴史ができ、そのゲームデザイン上のノウハウが開発者たちに広く共有されたからこそ、取り入れられた要素であるというのは間違いないだろう。
こうした、完全なオープンワールドではないが、オープンワールドのエッセンスを取り入れたゲームというのは、過去にも少なくない数がリリースされている。『ゼノブレイド』シリーズ(例外的に『ゼノブレイドクロス』は完全なオープンワールドである)や『NieR:Automata』、2018年の『ゴッド・オブ・ウォー』などがこれに該当し、メディアによる紹介で、こうしたタイトル群を指して「準オープンワールド」や「セミオープンワールド」という言葉が用いられたこともあった。