「ベルリンの壁」全貌を1000枚の写真とインスタで再現 世界からも反響の企画、なぜ実現?

ベルリンの壁の全貌をインスタに

 2019年11月9日、ベルリンの壁崩壊30周年を機に開始した、クリエイター満永隆哉氏によるソロプロジェクト「BERLIN WALL ONLINE」。満永氏が自らスマートフォンのパノラマモードで撮影したベルリンの壁の全貌(改修中範囲を除く、2019年当時撮影可能な全ての範囲)を、約1000枚の画像へと分解し、そのままInstagramに手作業で投稿を行ったプロジェクトである。

 
 
 
 
 
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 通常ベルリンの壁がSNSで紹介される際は、代表的なアートの一部分しか掲載されない。しかし「BERLIN WALL ONLINE」は、Instagramのプロフィール機能の特性を活かし、この歴史的な壁の壮大な全貌・機能をそのままオンラインへ移植している。このようなグラフィティやミューラルアートはゴーイングオーバー(上書き)され、更新されていくため、本プロジェクトは壁の状態の記録としても機能しており、グラフィティの文化的側面や観光機能ごとオンラインに移植している。

(画像=BERLIN WALL ONLINE)

 そんな「BERLIN WALL ONLINE」のオフライン個展「BERLIN WALL TOKYO」が、11月9日から11月14日の期間で開催された。会場では、Instagramで上で繋ぎ合わせた「ベルリンの壁(East Side Gallery)」のパノラマ撮影データを、8Kプロジェクションでスクロール。等身大のパノラマ映像の前には、ウォーキングマシーンも設置してあり、実際にベルリンの壁沿いを歩いている感覚を味わうことができる。SNSでは一部しか切り取ることができないアートワークを約3m・ 横幅300m以上で再現し、個展は大盛況に終わった。

(画像=BERLIN WALL ONLINE)

 また、こちらの個展では、300メートル以上の壁画を1/200サイズにしたマスキングテープ「THE BERLIN TAPE」が販売された。150個限定で販売された「THE BERLIN TAPE」は、「分断の象徴」であるベルリンの壁を「繋がりの象徴」へと変換するプロダクトである。デザインに繰り返しはなく、2019年当時のベルリンの壁を再現したテープとなっている。価格は購入者次第となっていたが、150個全て完売し、売上総額140,752円はベルリンの壁の保存活動に寄付されるようだ。

 改めて、テックエンタメレーベルHYTEK Inc.の代表、そして自身もパフォーマーとして活動している満永隆哉氏に「BERLIN WALL ONLINE」はどのようにして生まれたのかを聞いた。

(画像=BERLIN WALL ONLINE)

ーーこのプロジェクトを始めたきっかけを教えて下さい。

満永隆哉:2019年当時、両親がドイツのハイデルベルクという地域に住んでいたので、遊びにいったのがきっかけでした。音楽などの文化よりも、クリスマスマーケットやお城などがあるようなところです。2019年はベルリンの壁崩壊30周年でもあったので、あの有名な、政治家がキスをしている絵(『神よ、この死に至る愛の中で我を生き延びさせ給え』)だけでも写真を撮ろうとベルリンの壁に行きました。でも実際に行ってみると、あの絵はほんの一部で。30年もミューラルアートが維持されている場所は、世界中を探しても他にはないなと思いました。

ーー大体は上書きされますよね。

満永隆哉:そうなんですよ。ゴーイングオーバー(上書き)されていくことはわかっていたので、この2019年の絵を保存していこうと思ったのです。iPhoneのパノラマモードで撮影したのですが、日中は観光客がいるから撮れないので、延泊をして、夜明けの人がいないタイミングで、当時公開されていた300m〜400mをパノラマ撮影しました。そのパノラマを948枚に分割して、手作業でアーカイブをしたのが『BERLIN WALL ONLINE』です。

ーー最初からInstagramのプロフィールを利用して、アーカイブをしようという構想はあったのですか?

満永隆哉:パノラマを撮影しながら、思いつきました。一部分だけではなく、この長さがあるからこそ「国と国を分け隔てていたものだ」というインパクトがあると思ったのですが、それを一覧できるものがオフィシャルにはなかったんですよね。写真一枚で収まるものではないので。壁を一覧できるUIはないのだろうか?と思っていたら、Instagramのプロフィール欄が合致した感じです。

ーーこの長さをパノラマで撮影するとなると、スムーズにはいかないと思われます。

満永隆哉:曲がっちゃったり、自転車や犬などが通ったらやりなおしなので、撮った場所を記録しながら何回かにわけて撮りました。ゴーイングオーバーされた絵を保全する期間があり、改修している部分があったりするので、撮影可能な範囲は全て撮影しました。撮影は1時間以内に収まったと思います。

(画像=BERLIN WALL ONLINEのInstagram)

ーーInstagramのアカウントにはどのような反応がありましたか?

満永隆哉:アカウントが完成したと思って放置しておいたら、自然と通知がくるようになって。ベルリンの人たち以外にも、オンラインの友達ができましたね。特にコロナ禍なのもあって、熱いDMがくるようなりました。いまでは世界中の観光客がベルリンの壁に訪れたときの写真を投稿する際にタグ付けしてくれるようになりました。

ーー今回、それをオンラインからオフラインに移行しました。

満永隆哉:今年が日独友好160周年で、その空間を東京に持ってこれたのはよかったです。このウォーキングマシーンで歩くと、ベルリンの壁沿いの散歩を追体験できるんですよ。壁が崩壊する前に現地に住んでいたおじいさんが来てくれて、何度も歩いていたのが印象的でした。「こんなに長いんだ」というのを実感してもらえると思います。壁の高さも再現していて、音はライブカメラで今のベルリンの音を引っ張ってきています。なので、この空間はまさにベルリンなんです。ちなみに、このウォーキングマシーンにある足跡は、僕がパノラマを撮影したときに実際に履いていたエアフォースワンの足跡です。

(画像=BERLIN WALL TOKYO)

ーーこのように歴史的な建造物に、様々なアーティストがオフィシャルで作品を描き続けている場所は日本にはないと思います。

満永隆哉:僕が撮影したベルリンの壁のイーストサイドギャラリーには、作者の情報を記載するキャプションなどもあって、アートワークとして都市と共存していると感じました。他にもベルリンには大きなミューラルが複数あって、建物の余白がリーガルウォールになっている場所も多いです。「国と国を隔てていた象徴」をアートに昇華したように、日本とはアートに対する土壌の違いがあると感じました。このようなパブリックスペースにおけるアートが日本にも浸透していくような取り組みを、もっと増やしていく活動も今後行っていければと思っています。

■満永隆哉
1991年生まれ、千葉県出身。12歳の時に訪れた海浜幕張駅前のストリートバスケットボールコートにて、パフォーマンスカルチャーと出会い影響を受ける。大学進学後に休学、国内外でのパフォーマー生活を経て2015年に総合広告代理店に入社。平日はクリエイティブ職として制作業務に従事し、金曜深夜から休日はパフォーミングアーティスト兼演出家として活動する5年の二重生活の後、テックエンタメレーベル HYTEK Inc.を創業。クリエイティブ職としてはグローバルクライアントのプロモーション/PR/コピーライティングを担当し、ACC・OCC・販促会議賞・JAAA広告賞・朝日広告賞・文化庁メディア芸術祭・WIRED CREATIVE HACK AWARDなど受賞。パフォーミングアーティストとしては「mic™️」名義で国内外で活動し、フリースタイルバスケットボールやダンスを基軸にモノ・場所・文脈などの制限を活用した身体表現を行う。2018年2月には所属チーム大阪籠球会で、日本人フリースタイルバスケットボーラーとして初めてアメリカNBA公式戦でのオープニングパフォーマンスを実現、TEDxKEIO・大型フェス・TVなど様々な舞台にも出演。表方と裏方としての二重生活で体感した「カルチャーを作るのではなく、残る設計を。」という思想の元に「Cultural Architect」として、文化の設計図を描くことを生涯の目標とする。

HYTEK:https://hytek.co.jp/

Takaya Mitsunaga:https://www.takayamitsunaga.com/

Berlin Wall Online:https://www.instagram.com/berlinwall_online/

(画像=BERLIN WALL ONLINE)



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