共通するのは“DIY精神” PIZZA OF DEATHがテック分野に進出する理由

PIZZA OF DEATH、なぜテック分野進出?

クリエイター・高橋カズサの“個性”に迫る

チーフクリエイターでデジタルアーティストの高橋カズサ氏
Linercraft株式会社 チーフクリエイター&デジタルアーティストの高橋カズサ氏

――カズサさんは、フライング・ロータスとの出会いがきっかけで映像を始めたと聞きました。

カズサ:そうですね。フライング・ロータスに限らず、ヒロ・ムライさんが作る映像が大好きなんです。自分は映像表現においてユーモアを強く意識するんですけど、これはフライローや、ヒロムライさんの表現に影響を受けているなと感じます。

居山:〈PIZZA OF DEATH〉からすると、こういうカルチャーの人間がクリエイターとして入ってくれることも新しい感覚だよね。

磯部:そう。だから〈PIZZA OF DEATH〉と全然関係ない会社やアーティストとも仕事してもらいたいとも思っています。僕らも僕らで「そんなの作ったの!?」と驚きたいじゃないですか(笑)。

――現状ではSuspended 4thのトレイラーが表に出しているものだと思うのですが、2022年はどのようなアウトプットをしていきたいですか。

居山:短期的には、MVをはじめとした音楽系の映像を手がけることが多くなるかと思います。一方、長期的にはプラットフォームを作るための工程をしっかりと進めているところです。とはいえ人手はそこまで足りていないので、エンジニアをもっと増やしたいですし、所属クリエイターも徐々に迎え入れていきたい。DIYでできる範囲で、人も仕事も増やしていきたいですね。

――短期的には〈PIZZA OF DEATH〉のアーティストとの取り組みが中心になりますか?

磯部:そうしていきたいとは思っていないですね。ちょうど技術が蓄積されていたときに偶然配信リリースがあったので、なにかを作ってみようかとチャレンジしてみたのが、今回のSuspended 4thなんです。本来は「PIZZA OF DEATHのものだけを作っていくんだ」という凝り固まった考えには縛られず、「こういうものを作ったら別の形でチャンスがありそう」というものに関しては、別に〈PIZZA OF DEATH〉のアーティストとやる必要はないと思っています。もしかするとライブイベントのようなこともやるかもしれませんし、トーク・インタビューや個展などをリアルタイムで実施することもあるかもしれない。色々と面白いアイデアを実現していくつもりです。

居山:僕らは、映像制作会社みたいなことを主にするつもりはないんです。最初の方でも話したように、テクノロジーを使って、どうやっておもしろい経験を作っていくかが目的なので。

ロックバンドのライブにおける熱量は、オンラインで代替できるか?

グリーンバックも完備された、Linercraft株式会社のスタジオ
グリーンバックも完備された、Linercraft株式会社のスタジオ

――なるほど。いち音楽ファンとしての見方なのですが「〈PIZZA OF DEATH〉×テック」ということで「ロックのライブをオンラインやバーチャルなプラットフォームに乗せていく」と考えたときに、声を出したりダイブやモッシュをするあの現場の熱量を、配信映像や仮想現実は代替できるのか、というのは大きな壁としてあると思うのですが、どうでしょうか。

居山:そのテーマに関しては、まさにおっしゃる通りだと思ってます。単にライブを配信したり再現したりするだけでは面白くはならないし、ダイブやモッシュに代わる、盛り上がりの方法論・表現をテクノロジーを使って模索していく必要があると思っています。

 色々とアイディアはありますが、代替ではなくリアルライブでは味わえないような刺激や面白さを提供していかないといけないですね。

磯部:あとは観客と演者のインタラクティブなコミュニケーションが、どういう形で組み込まれていくかだね。ここについても、色々なみなさんが試行錯誤しているのを見てきましたが、いまのところ「これだ!」というものは見えてない気がしますね。

居山:そのへんはシステムの話だけではなく演出領域にも入ってくるので、カズサのようなセンスのあるクリエイターが仕切っていかないと、なかなか答えはでないと思います。なので、僕らが技術屋としてちゃんとした土台を作って、それをどう表現したらライブの熱さがでるかをクリエイターと一緒に考えていきたいと思っています。

末宗:テクノロジーはどんどん進化して、より現実世界に近い感覚的な「できる」ことが増えてくるでしょう。でも、「できる」から「実際にやる」に昇華させるのはまったく別次元の話。感性を大事に、アーティスト、クリエイター、技術者がより近い距離感でいろいろな視点をもちよってクリエイティブを詰めていくことで、その答えが見つけやすくなると思っています。

磯部:僕らはライブの熱さを誰よりも知っている人間なので、「あの熱さをそのまま表現するのは、脳にプラグを刺さないと無理なんじゃないか」と言ってしまいそうになるんですが(笑)、メインの楽しみ方はありつつ、「こっちもあるよね」とか「こっちもいいよね」と、別の技術やシーンに光が当たることは、技術や世の中が発展することによって起こりえると思います。だからこそ、なるべく柔軟でいたいです。

居山:だね。いまはだれも答えを持っていないので、トライ&エラーでフットワーク軽くいろいろチャレンジしたいですね。

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