『電音部』1st LIVEにみた、音楽主導コンテンツとしての強靭さ

『電音部』1st LIVEレポート

 バンダイナムコエンターテインメントが贈る、ダンスミュージックをテーマにした音楽原作キャラクタープロジェクト『電音部』。まるで“トラックメイカー大富豪”とも言わんばかりに、アニソンに限定しない幅広いフィールドから作家が集まり、良質な楽曲を数多く量産している同作だが、現在はなんと新曲を40週連続でデジタルリリース中。まさに音楽を軸としたメディアミックスの最高峰的なモンスターコンテンツだ。

 そんな同作より、10月30日、31日に東京・立川ステージガーデンにて『電音部 1st LIVE -Make Waves-』が開催された。同公演では、キャラクターを演じる声優キャストのライブセットを披露するものとして作品初のワンマンライブに。本稿では、劇中のアキバ、ハラジュク、アザブ、シブヤエリアの全12名が集結し、生パフォーマンスならではの楽しさを届けた同ライブについて、初日公演の模様を中心に振り返っていきたい。

 今回のセットリストの概観をまとめると、まずは各エリアが順にメンバーソロ曲を3曲、ダンス部パートを1曲、最後に3名全員でのユニット曲を1曲披露するという5曲構成だ。この“ダンス部”とは、ユニット毎にコンセプトに合わせた専属のダンサー陣とコレオグラファーが付くというもので、声優キャストによるステージの独自性を高めるエッセンスとして、非常に力の入れ具合を感じた(こうしたコンテンツには珍しく、男性ダンサーが登場した新鮮さについても言及しておきたい)。

 トップバッターは、神宮前参道學園(ハラジュクエリア)。まずは、長谷川玲奈(犬吠埼紫杏役)が“27時すぎのアニクラのボルテージ”を煮詰めたかのような最高楽曲こと「good night baby」をドロップ。ゆるめなラップやスクラッチが心地よく、早くも本公演への期待感が“間違いじゃなかった”と確信させてくれる。続けて、自身のカウントダウンをきっかけに、ダンサーがドロップで一気に踊り出すという、DJ的な立ち振る舞いが光った大森日雅(水上雛役)「Chick Chick love♡」や、電波チックな“青文字系”楽曲こと小坂井祐莉絵(桜乃美々兎役)「電脳ロリポップ」もまた見事だった。

 そこからダンサー陣のパフォーマンスを挟みつつ、ユニット曲「シロプスα」では、PC上でエディットしたボイスサンプリングのような掛け合いを、キャスト3名がステージ上でパトンパスしあう。こうした楽曲の再現も生歌唱だからこそ一層に臨場感が膨らむものだ。ところで、筆者は本公演をオンラインで視聴していたのだが、まだライブ序盤にも関わらず、低音の“鳴り”が一般的なライブと比較して桁違いに優れていることに気付かされた。きっと、会場の出音はもっと“ヤバかった”のではないだろうか。

 続くは、帝音国際学院(シブヤエリア)……なのだが、メンバーが登場したのはなんと、ステージ上のスクリーンの内側。ここからの光景は、“そのカルチャー”を知っている人からすれば見慣れたものだろうが、当日の観客の大半を占めていただろう声優ファンにとっては、目新しさがあったのではなかろうか。本稿が初見の読者に向けて念のため解説しておくと、彼女たちは全員がバーチャルライバーグループ・にじさんじに所属するバーチャルタレントなのである。

 同界隈といえば、Yunomiやケンモチヒデフミといった『電音部』にも楽曲提供経験のあるクリエイターが腕を奮っている領域なだけに、この作品なりのリスペクトもあるのだろうか。彼らこそ、ここでの披露曲をプロデュースしていないまでも、ハツラツとした歌声を響かせた星川サラ(大賀ルキア役)「JUNGLE WAHHOI」から、シリアスなテイストのシスター・クレア(瀬戸海月役)「ペトリコールを渡って」、ハードコアなサウンドで一気に攻め立てた健屋花那(鳳凰火凛役)「Shining Lights」まで、強靭な楽曲揃いだった。

 いわば、今回のライブは『電音部』と“にじさんじ”のクロスオーバーとする以上に、アニソン・声優・アイドル・バーチャルタレント・クラブミュージックという、様々な要素の接続地点となったわけである。この時点で、初ライブとしてはいい意味で語りどころが多すぎる。

 3番手には、港白金女学院(アザブエリア)より小宮有紗(白金煌役)が登場。tofubeatsの記名性高く、温もり溢れるホーンを背に、普段のイメージよりもあどけなく、キュートな歌声での「MUSIC IS MAGIC」が身体中に染み渡る。そこから澁谷梓希(灰島銀華役)が、パソコン音楽クラブ謹製のアーバンチューン「Haiiro no kokoro」にて、凛々しい歌声を響かせたところまでを含めて、アザブエリアの楽曲は街のハイソさを音楽に上手く投影しており、『電音部』楽曲でも異彩を放っていることが伝わってきた。

 そして、周囲の邪魔者を蹴散らすかのような爽快さを見せつけたのが、秋奈(黒鉄たま役)が歌う挑発的なブチ上げナンバー「いただきバベル」。三連符を随所に使った尻上がりなヒップホップ風のフロウは、ジャージークラブのトラックをさらに“治安の悪い”ものに。秋奈による天性の光沢感を持つ歌声とも際立った相性のよさを発揮していく。さらに、楽曲のキメである〈アタシみたく楽しくなりたきゃ 飛び跳ねろ〉の”ろ”の巻き舌も、ライブだからこそ何倍にも強調されていた。彼女はもちろん、楽曲プロデュースを担当したケンモチへの信頼が本当に止まらない。

 最後はついに、外神田文芸高校(アキバエリア)が登場。ここでは、堀越せな(茅野ふたば役)が、アイドル/サディスティック性が同居するアッパーチューン「アイドル狂戦士」、蔀祐佳(日高零奈役)が、目の前の視界がどんどん広がっていくような、“kz節”全開のエレクトロナンバー「Favorite Days」をそれぞれ歌唱。両者とも“主人公感”が眩しいステージだ。

 なかでも目を見張ったが“逸材”こと天音みほ(東雲和音役)による「Mani Mani」。TAKU INOUEが手掛けた、サックスの音色が印象的な2ステップ〜ガラージのトラックに対して、彼女のボーカルは浸透性がとにかく高く、瑞々しい。そもそも楽曲の難易度自体も高いのだが、あのハスキーさを帯びた爽やかな熱量を持つ歌声を、ステージでもそのまま出せてしまうことに圧巻だった。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる