テック業界における経営者・ディレクターの「適性」とは? narumin × としくに(huez/渋都市)と考える

テック経営者・ディレクターの「適性」って?

 直感的な操作で視覚的なプログラミングができる、TouchDesignerをはじめとしたノードベースビジュアルプログラミングツールをメインとした週末ワークショップやイベントの主催、およびデジタルエンターテインメント領域のコンテンツ開発を行うクリエイティブコミュニティ『Tokyo Developers Study Weekend』(以下、TDSW)の共同創業者であるnaruminによる連載「Behind the Tech People」がスタート。

 同連載では、naruminがホスト役として、テックで世界を彩り、社会を前進させ、各々の理想を実現化させるクリエイター・経営者のヒストリーを聞き出し、これからクリエイターを目指す人たちの一助になるための対話を、全十回にわたって繰り広げていく。

 第一回は『TDSW』の運営にも携わり、ビジュアライズアーティスト集団「huez(ヒューズ)」を率いる渋都市株式会社の代表取締役・としくにをゲストに迎え、彼の異色な経歴や味わった挫折、経営者・ディレクターの「適性」などについて話を聞いた。

■narumin / Yuki Narumi
TDSW | Tokyo Developers Study Weekend co-founder
1996生まれ。大学在学中にノードベースソフトウェアを中心としたビジュアルプログラミングの週末勉強会を定期主催するTDSWを立ち上げる。世界中のクリエイター、アーティスト、ソフトウェア開発企業と連携しながら技術知見の共有と蓄積への貢献を活動指針とし、作り手の好奇心やニーズをキャッチアップした企画制作を行っている。

■としくに
ステージディレクター・演出家。渋都市株式会社代表取締役市長。演劇領域での舞台監督や、メディアパフォーマンスの「インターネットおじさん」などの活動を経て、2016年に渋都市株式会社を設立し、代表取締役に就任。「笑い」と「ホラー」をテーマとして、既存の枠組みを越えた映像・空間演出のディレクションを手掛ける。

narumin:まずはとしくにさんの自己紹介をお願いします。

としくに:渋都市株式会社では経営者として携わっており、ビジュアライズアーティスト集団「huez(ヒューズ)」ではディレクションやチームマネジメント、プロモーションなどを行なっています。

narumin:huezにはどんなクリエイターが在籍していて、どんな仕事をしているのでしょうか。

としくに:プログラマー、エンジニア、VJ、映像作家、照明、ディレクターなど複合的なチームとして活動していますね。もともとは音楽やコンサートの演出や照明の案件をやっていて、今でも6割強はその仕事になっています。最近ではデパート催事場で開催されるアニメ系の映像のテクニカルディレクションやシステムエンジニアリングを手がける仕事もやっていて、コロナ禍では配信ライブやバーチャル空間のライブ演出の仕事も増えてきました。

narumin:すごい多岐にわたっていて、まるで「何でも屋」ですね(笑)

としくに:よくhuezでは「光っているところなら、全部いけます」と表現しているんですよ(笑)。光っているところをhuezで全部取りまとめれば、「細部にわたって精密な演出ができるのでは」という思いから活動を始めるきっかけになっているんです。“光りもの屋”と表現してもいいかもしれません。

ーーありがとうございます。ここからは経営者以外にもさまざまな顔を持つとしくにさんの経歴について伺いたいです。

としくに:そうですね、私は10代後半から20代前半まで演劇をやっていたんです。演じる役者のほか脚本も書いていたりしていました。また、手弁当でやっていた公演では舞台や美術、大道具などの裏方もやっていて、演劇に関わる仕事は一通りこなしていたんですよ。

narumin:なるほど。演劇の世界が始まりだったと。

としくに:でも、自分で立ち上げた劇団をつぶしてしまったんです……。いまは経営者なのでちゃんとしていますが、24、25歳くらいのときは本当に金癖が悪くって。最終的にはお金が立ちいかなくなってしまい、実家に帰れなくなってしまいました。

narumin:そうだったんですか。20代で大変な時期を経験されているんですね。

としくに:借金だらけで劇団周りの人から信用を失い、20代半ばでつながりや人脈が一旦ゼロになりましたね。

narumin:その後はどうされたんですか?

としくに:知人の知人の知人、言うなれば他人に近い距離感の人が渋家(シブハウス)をやっているというのをたまたま聞いて。そこで話を聞きにいったら、そのまま住むことになったんですよ。

 渋家ではコミュニティストのような振る舞いをしていましたね。自身を振り返ると、いっときお笑い芸人を目指していたので、芸能事務所にも通っていたこともありましたが、「何かこれをやりたい、こうしていきたい」というのが20代前半で全部折れてしまった。先の劇団の件もありますが、自分はプレーヤーになるのは無理だなと悟ったんです。

narumin:そこからプロデューサー・ディレクター的な立ち位置を意識し始めたと。

としくに:そうですね。自分って集中力には欠けるし、飽きっぽい性格なんですよ。役者やエンジニアなどのクリエイターって、一つのことにガッと集中できないと務まらないですよね。演劇を例にすると、公演をやる場合は同じ会場を借りて何ステージも繰り返すわけです。始めはいいんですが、3ステージ目くらいで正直飽きちゃう(笑)。たとえ自分が書いた脚本でもそうなんです。

narumin:自分が書いた脚本でも、ですか。

としくに:はい。ただ、演者に「何をしたいか」と聞き、それをまとめて一番成立しそうな脚本を書くみたいなことはやっていました。そう思うと、演出は得意でしたね。昔から人を束ねて動くことをしていましたが、実は自分で立ち上げた劇団以外、0→1を経験したことがないんですよ。渋家も今やっている会社もhuezも、元を立ち上げた人がいて、後から関わりを持つようになったんです。

narumin:なるほど。ただ、としくにさんが関わっているコミュニティは大きくなっている印象を受けます。

としくに:自分の特殊能力だと思っているのが、会社やチームなどの「コミュニティをハックする」こと。コミュニティ内に入ってメンバーの話を聞いていると、いま、どこが課題で何に悩んでいるか、そのコミュニティの問題点がわかるんですよ。なんかおおよそ予想がついちゃう。そういう意味ではコミュニティストやアジテーターのような、1→10や10→100に長けているのかもしれません。



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