VJや映像演出でも重用される“ビジュアルプログラミング”の魅力とは? 『TDSW』代表・naruminに聞く
昨年から続く新型コロナウイルスの感染拡大で外出自粛などが続いたことにより、おうち時間で何かを学ぶ学生や社会人が増加している。そのうちのひとつがプログラミングだ。Webサイトの制作などに必要な「Java」や「PHP」などを学ぶのもいいが、ローコード・ノーコードといった言葉もバズワードになりつつある現在、直感的な操作で視覚的なプログラミングができる、TouchDesignerをはじめとしたノードベースビジュアルプログラミングツールに手を出すのもいいだろう。
そこで今回は、ノードベースビジュアルプログラミングツールをメインとした週末ワークショップやイベントの主催、およびデジタルエンターテインメント領域のコンテンツ開発を行うクリエイティブコミュニティ『Tokyo Developers Study Weekend』(以下、TDSW)の共同創業者であるnarumin氏を取材。ノードベースビジュアルプログラミングにおける一大コミュニティとなっている『TDSW』の成り立ち、メインとして取り扱っているソフトウェア「TouchDesigner」の魅力、ワークショップ(勉強会)やイベントを開催するにあたって心がけていることやオンラインへの移行、コミュニティの転機となったイベントなどについて、話を聞いた。
「TouchDesignerは、ビジュアルプログラミング学習の入門にちょうどいいソフトウェア」
ーーまずは『TDSW』の基本情報と、naruminさんの経歴を教えてください。
narumin:『TDSW』の正式名称は『Tokyo Developers Study Weekend』で、名前の通り東京を拠点にした、開発者やプログラマー、クリエイター、アーティストのために、ノードベースビジュアルプログラミングツールの週末勉強会を実施しているコミュニティプロジェクトです。私が代表で、ほかに3名のメンバーがいます。ひとりは、昨年末バンクーバーから東京に引っ越してきて、今は空間演出ユニット「huez」に所属している原田康さん。原田さんには、海外展開や開発系の仕事を担当していただいています。もうひとりは、渋都市株式会社代表のとしくにさん。悩んだときにアドバイスをもらったり、会計周りをお願いしたりしています。あと最近、アルバイトで機械学習と視覚化について研究をしている大学生の心強いメンバーが入りました。
『TDSW』を立ち上げたのは私が大学2年生のときで、当時は制作会社でインターンをしていました。東京駅のプロジェクションマッピングを手がけたNAKED, INC.をはじめ、いくつかの企業にプログラマーとして入ったのですが、デジタルを使ったエンターテインメント市場がそんなに大きくないことを知り、自分が作り手に専念するよりも、クリエイター同士が交流する場を作ることに興味が移ったんです。その辺りの知識をつけるために、マーケティングや起業支援を事業とする企業でのインターンも経験しました。今年7月からはテクニカルディレクションを中心に行うBASSDRUMという組織にプロジェクトマネージャーとして参加しました。
ーーノードベースのビジュアルプログラミングに興味をもったのは、NAKED, INC.さんでのインターンがきっかけですか?
narumin:そうですね。最初はopenFrameworksというオープンソースツールキットを使っていたのですが、コードを書かなくてもプログラムができるTouchDesignerがアツいとNAKED社内の一部で話題になっていて、私も興味を持ちました。ちょうどそのとき開発担当になっていた案件で、TouchDesignerを使用する指示が出ていたこともタイミングがよかったです。
ーーTouchDesignerに初めて出会ったときの印象はいかがでしたか。
narumin:openFrameworksを使っていたときは、プログラムがそんなに得意ではなかったこともあり、開発にすごく時間がかかっていました。設計をしっかりしないとツギハギだらけになってしまうし。そんなときTouchDesignerに触れてみて、自分がこうしたいと思ったことをその場ですぐに表現できて、消すことも、追加することも直感的にできることや、そのスピード感に驚きました。UIもかっこいいし、触っていてすごく楽しかったんです。
ーーその感覚が第一印象だとして、いま改めてTouchDesignerの魅力を語るとすれば?
narumin:円を1つ書くにしても、テキストコードだと数学や関数を知らないといけなくて、覚えることやプロセスがたくさんありますよね。それを端折って、視覚的にアウトプットして、スケッチみたいなものができるのが魅力だと思います。知識がなくても、グラフィックを作る楽しさを感じられますし、アーティストやクリエイターが、ビジュアルプログラミングを学習する入り口としてとても良いツールですね。
ーーTouchDesignerは、ここ数年でユーザー数が増加していますよね。加えて『TDSW』も認知度が上がっていて、いろんな状況が追い風になっている気がします。
narumin:『TDSW』を始めた当初は、プロジェクションマッピングが注目されていて、チームラボがライブ演出を担当するなど、リアルな世界にデジタルを統合して、体験や空間を拡張するのが流行りはじめていたんです。当時は国内での先行事例も少なく、ほぼ新規事業として取り組む企業や組織が多かったと思います。コードで書くと膨大な工数がかかったり、現場で急に変更が必要になったときの対応が難しいという課題があったと思います。そんなときに、機能を簡単に追加・削除できて結果がすぐに見られるTouchDesignerが、ニーズにマッチしたんじゃないでしょうか。
『TDSW』に関していえば、すごくニッチな分野なので人口は少ないんですが、なんとなくこういうことがやりたいという人は各地にいたんです。そこに『TDSW』ができて、「TouchDesigner」というタグから検索でたどりついた人たちを集めて、知識を共有するようになりました。定例で月2回くらい開催していくうちに、徐々に口コミで広まっていきました。知識が集約されているアクセスポイントがなかったところにタイミングよく『TDSW』ができたから、一気に集まって広がっていったんだと思います。
ただ『TDSW』はTouchDesignerだけに特化したコミュニティではなく、ノードベースのリアルタイムグラフィックソフトを使っていて、直感的にグラフィックプログラミングができるソフト全体を包括してやっています。TouchDesignerをメインソフトウェアメインソフトウェアとしつつ、それでできないことを周辺ソフトでカバーしていたのが始まりですね。
ーー現在『TDSW』扱っているツールや言語は、他にどんなものがありますか?
narumin:Houdini, Notch, 単発企画としてUnreal Engine, vvvv, Smodeなども取り上げてきました。80%くらいはTouchDesignerですが。