エッジの立った「にじさんじ元一期生」における、モイラの“柔和で強い個性”

にじさんじ・モイラの“柔和で強い個性”

 これは多くのライバーが雑談中に明かしていることだが、自身のライバー活動と同時に仕事に勤めている方々、いわゆる兼業ライバーは現在でも多くいる。これまで筆者が連載で取り上げていたにしさんじライバーは、専業であることが多かった。しかし、モイラは現在でも兼業でにじさんじライバーを勤めていると思われる。

 彼女のツイッターを見てみると、“天界でのご公務”に関する話題がたまにあり、雑談中に触れることもしばしば。

 彼女のYouTubeチャンネルを見てみると、この3年間で配信した動画数が他の元一期生に比べると少ない部類にあたる。特に2020年以降の配信数は少なく、上記ラジオのなかでも度々ちひろが「少ないだろ!」とイジることもしばしばある。

 配信ペースはかなり不定期で、1週間のうちに3日連続で配信したかと思えば、一気に2週間以上も配信をしないなんてこともある。仮に3人でのラジオ配信が無かったことを想像してみれば、昨年2020年11月には2回しか配信していないという状況でもある。

 スローな活動ペースながら、穏やかで柔和なムードが配信内のムード、バーチャルタレントとして頑張っている方が多い中で、こういったペースの活動はある意味ではレアな存在だといえよう。

 3Dとしてライブに出演してきたのはこれまで2度あり、早々と3Dデビューを果たした彼女。2021年3月27日にはYouTube上での3Dお披露目配信をした。この配信には元一期生全員が駆けつけ、TV番組『徹子の部屋』と『ごきげんよう』をモチーフにした番組セットをバックに1対1でトークし、3年間の思い出や自分自身への印象などを語る回となっていた。

 2021年2月9日には、自身の3周年配信として初めての飲酒配信をした。滑舌や言葉遣いが普段よりも砕けており、会話の内容も明るい話題から徐々に湿っぽい話題へと移っていく。身近にあった出来事を語りあい、初期のころを思い出を探るように振り返り、元一期生の面々や自身へのファンに感謝を述べていった。

「始めた当初は短期間なのかなと思っていて、楽しいことを短い間でギュギュっと詰めようとしていた。でもこうして長く続くようになったとき、いまのお仕事との一緒にやろうと思ったとき、どうしたらいいか悩むことはあった。『もう自分はいらないのでは?』と思ったこともあったけども、そういうタイミングで楓ちゃん(同期である樋口楓のこと)が声をかけてくれたり、ちーちゃんとアキくんが毎週日曜にラジオをやろうと声をかけてくれた」

「動画のサムネイルもこいぬ(モイラのファンネーム)たちが書いてくれたファンアートを使ったり、雑談配信にコメントがなければ急に面白い話とかアドリブができないし、みんな見てくれているだけでも嬉しい」

 自身のペース感を保った配信活動を心がける彼女を含めた元一期生8名らは、家族にも似たムード感や結束力をもった独特なコレクディブともいえよう。他のVTuberらでは育まれにくいだろうし、今後のシーンの中でも易々と生まれるようなものではない。言ってしまえば、にじさんじが持つ“無二の宝物”だ。

 鋭いエッジが立った表現、口喧嘩のような煽り合い、長年培ってきたトーク力など、8人が揃えばできないことがないようにも見えてくる。そういったなかで、彼女のゆったりとした空気感は改めて強い個性となって立ち現われる。10月31日にぴあアリーナMMで開催予定の『initial step in NIJISANJI』では、彼ら元一期生8名がメインとなって披露される。どういった内容になるか、どんな姿を見せてくれるのか、いまから非常に楽しみである。

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