テレビとYouTubeの現在地(第3回)
フジテレビ・FODが目指すのは“共存”のための“差別化” 激化する動画配信市場で見せた「テレビ局の制作力」とは
FODの強みは、コンテンツを一気通貫で制作できること
さらに野村氏は「コミックからドラマまで、一気通貫して制作できるのがFODの大きな強みとなっている」と続ける。
「原作開発から制作、配信まで一挙にできるのがFODの特徴です。そして取り扱うコンテンツが豊富だからこそ、相互に連携させて話題化を醸成することも可能で、例として恋愛復讐ドラマ『スイートリベンジ』が挙げられます。もともとドラマの企画書として提出された作品だったのですが、まずはFOD発のオリジナルコミックとして出してみたところ、女性を中心に爆発的な人気作品として知られるようになり、2021年3月に満を持して実写ドラマ化しました。原作のコミックが有名になったのを機に、オリジナルドラマとして再び世に出すことで、新たなユーザーの獲得に繋げられた成功事例だと考えています」
また、コロナ禍の影響で巣ごもり需要が高まったが、FODにおけるユーザーニーズはどのような変化があったのか。
「今までFODを視聴してこなかった年配ユーザーが増えてきていて、旧作をおうち時間で一気に見たいという需要が高まりました。また、TikTokでバズったことから、2007年の北乃きいさん主演のドラマ『ライフ』が急に視聴ランキングが1位になるなど、SNSからの流入から旧作が見られるなどの面白いトレンドの動きも見られました。それで言えば、FODは70,000本以上のコンテンツを配信していますが、まだまだユーザーの志向に合わせた形でレコメンドできていないと感じています。今後さらにユーザーと良い作品との出会いを創出できるようにサービスを進化させていきたいですね」
FODが目指すのは「共存」のための「差別化」
これからもさらなるユーザー獲得を目指すべく、FODの事業を担う野村氏に、
今後の展望を最後に聞いた。
「動画配信市場はここ数年ずっと伸長していて、これからもさらに拡張していくでしょう。我々FODとしては、競合他社と『共存』という意識のもとでサービスを差別化しながら運営していくつもりです。その上でFODならではの独占配信やオリジナル作品を提供し、ユーザーに選ばれるように取り組んでいく予定です。
また、モバイルのみならず、近年はApple TVやAndroid TVなどのスマートテレビ需要も高まっているので、端末を問わずにFODの動画コンテンツを楽しんでもらえるように、ラインナップの拡充や顧客満足度を向上させられるように尽力していきたいですね」