連載:クリス・ブロードの「ガイドブックに載ってない日本」(第8回)

YouTuberを目指す人に伝えたい「ファンとの付き合い方」 登録者200万人越え、外国人YouTuberの僕が教えられること

 世界に向けて日本の魅力を発信し続けている英国人YouTuber、クリス・ブロードによる連載『ガイドブックに載っていない日本』。最終回となる8回目は、ファンとの付き合い方や今後の活動について、そして、これからYouTuberとしての成功を目指す人たちに伝えたいことを聞いた。

第0回:外国人YouTuberである僕が「日本人が見落としている日本の魅力」を伝えるためにできること
第1回:外国人YouTuberの僕が、“奇妙ではない”日本のアイデンティティに惹かれた理由
第2回:外国人YouTuberの僕が、東日本大震災翌年に移住した日本で感じた“難しさ”
第3回:東北在住の英国人が、教師を辞めて世界的YouTuberになるまでの話
第4回:ザ・ロックや『ブレイキング・バッド』主人公も反応……世界的YouTuberになった僕の“量より質”な成功体験
第5回:外国人YouTuberの僕から見た、“日本の変わるべき部分”
第6回:外国人YouTuberの僕が“福島のドキュメンタリー”で限界を感じた話
第7回:日本在住・外国人YouTuberの僕が、新型コロナへの日本政府の対応に思うこと

ファンとは友人のように

 私はYouTubeでライブ配信をすることがあるのですが、最初の1時間で1万人くらい視聴者が来てくれます。そうすると、まるで自分の家に1万人のゲストを招いたハウスパーティを開いたようで、共に楽しんでいる感覚になるんです。パーティを開いてゲストと関わらないなんてありえませんから、一緒に話し、楽しみます。ファンのことはとても大事な友人のように思っています。

 そんな友人たちには、私もできる限りのことをしたいと考えています。例えば、あれはたしか2014年のこと。「日本に住みたいのだけれど、どうすれば良いか」という相談のメールをもらいました。そこで、私が知る限りの日本で仕事を探す方法や住む方法を書いて返信しました。

 それから3年半が経ち、NATSUKIと札幌にいくとホテルのチェックインカウンターで働いていたひとりの外国人が「クリス! 僕だよ!」と話しかけてきました。その時のメールの彼でした。彼は札幌で働き口を見つけ、素晴らしい時を過ごしていると、感謝の言葉を口にしました。

 あの時のメールのやりとりがきっかけで、男性が実際に日本に住むようになったとは知らなかったので驚きました。彼に限らず、メールで相談してきた人が日本で英語教師になったりもしています。自分のアドバイスが誰かの将来像を形成することに役立つなんて、本当に素晴らしいことです。動画に限らず、僕の活動やパーソナリティを信頼して声をかけてくれる“友人”たちは、今後も大切にしていきたいと考えています。

 またファンに限らず、私が相手にしているのは常に人間である、ということを意識しなければならないと考えています。

 人は、一度抱いた感情を決して忘れないものです。例えば、3年前に誰かと会って話をしたとしましょう。その時にどんな会話をしたのかは具体的に覚えていなくても、相手が自分に対してどんな態度をとったのか、どんな感情を抱いたのか、ということは覚えているはずです。

 もし渋谷で私のことを知る誰かに話しかけられたとして、その人を邪険に扱ったなら、その人は数年、数十年、もしかしたら百年に渡って「『Abroad in Japan』のクリスってやつは、最低なやつだった」と覚えていることでしょう。

 そんなこともあり、私は出会った人に決して失礼なことを言わないよう心がけていますし、短気を起こすこともありません。私と出会った人には、私に対して良い印象を持ってほしい。

 どんなに嫌なことがあって、何もかもが憎く嫌気がさしていても、道ですれ違った人から「こんにちは! あなたの動画のファンですよ」と言われたら、足を止めて笑顔で話をします。もしあなたと出会う機会があったら、この本についてお話しできたらいいなと思います。

オリンピック延期による影響

 さて、2020年に東京でオリンピックが開催される予定でしたが、新型コロナウイルスが原因で延期されてしまいました。私の周りでも、残念がっている人が多いように思います。

 去年の3月に新型コロナウイルスに関する動画を作った当時は、「オリンピックがキャンセルされるなんて考えられない」と話しましたが、それが延期という形で現実のものとなってしまいました。この文章を執筆している2021年7月現在の世界状況を考えると、規模を縮小しての開催を試みてはいるものの、思い切ってキャンセルすることもできたのではないかなとも思います。外国人が日本に旅行できたり、日本に注目する理由は、オリンピックでなくてもたくさんあると僕は信じています。

 いずれにしても、オリンピックに関連して制作したいと考えていた動画の企画は、すべて中止になってしまいました。例えば、日本の観光の仕方や知っておくべきエチケット、「東京でやりたい100のこと」など、オリンピックを観にやってくる外国人観光客向けの動画です。観光客がどれだけ入ってこられるかわかりませんし、エチケットについては新型コロナウイルスの前後で変わってくるでしょう。

 一刻も早く事態が収束し、日本旅行をより楽しむための動画を届けられることを願っています。

関連記事