なぜNetflixはECサイトを立ち上げたのか 目指すは“ディズニー化”?

なぜNetflixはECサイトを立ち上げたのか

 Netflixが、自社運営のECサイト「Netflix.shop」を6月にオープンした。現時点では米国のみの展開だが、徐々に世界各国に広げていくという。

 当サイトでは、アパレルブランドとNetflixオリジナル作品がコラボし、グッズを販売。今年1月に全世界の有料会員数が2億人を突破し、アカデミー賞受賞作品も軒並み輩出するなど、一貫としてコンテンツの制作に重きを置いてきたNetflixが突如始めたこの試みにどんな意図があるのだろうか。デジタル音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏は次のように語る。

 「Netflixはこれからもコンテンツの配信プラットフォーム事業を主軸にしていくことには変わりませんが、スクリーン以外でオリジナルコンテンツをいかに広げられるかに挑戦していると思います。今まではスマホやタブレット、TVなどの画面上でしか楽しめなかったコンテンツを生活の中に取り入れて楽しめるようにする。その延長線上にある手法の一つがこのECサイトとグッズ販売なのでしょう」

 現段階ではアニメ作品の『エデン』や『Yasuke -ヤスケ-』といったNetflixのオリジナルアニメのみを商品化し販売している当サイトだが、オリジナル作品はもちろん有料会員でないと観ることはできない。そもそもこのECサイトは会員向けのサービスなのだろうか。

 「購入にNetflixアカウントは必要ありません。ですが、観たことのない作品のコラボグッズを欲しいという人は少ないと思います。そのため、作品をすでに観て愛着を持った有料会員がまず最初のターゲット顧客だと思います。一方でこのECサイトでNetflixは収益化を図っているわけではないと感じます。グッズ販売はコンテンツマーケティング要素を含んでおり、コンテンツ制作に加えて『NetflixはIPビジネスの会社』というブランディングを強めるためではないでしょうか」

 ECサイトには、日本のセレクトショップの代表格でもあるBEAMSとアニメ『YASUKE-ヤスケ-』のコラボグッズも販売されていた。この意図については「各国にいきなり店舗を進出させるのはハードルが高い。都市や国の文化を理解し、消費者の文脈がわかっているブランドや店舗と組むメリットは大いにあります。また、BEAMSはセレクトショップのため、コラボグッズを店舗に置いても違和感がなく、さらにプレミアム感も出せます」と日本進出においての地盤を固めた戦略を予測する。

 また、今後グッズ化していく作品についてはいくつかの方向性が考えられると話す。

 「グッズ化には、ランキング上位を占める作品を取り上げるのは当然ですが、子どもに人気のコンテンツに注目するのもひとつの戦略かと。子どもが好きな作品のグッズを欲しがれば、親子でも購入することが多い。購買意欲に対する訴求度がより高いんです。

 ただ、人気作品が必ずしもオリジナルコンテンツとは限らないですよね。となると権利関係などが絡んでくる。そのため、今後はオリジナルコンテンツの制作者とはグッズのマーケティング展開も含めた契約形態で手を打っていく可能性もあると思います。世界への配信に加えて、グッズ化されて世界中の人の目に留まる店舗やECサイトに並ぶと、制作者のメリットにもなると思います」

 NetflixがコンテンツのIPを広げていこうとする動きがあるなか、動画配信サービスで同じような動きをしている競合他社は多くないが、「Amazonプライム・ビデオはその可能性が一番高い。世界規模のECサイト『Amazon』を持っていることは大きく、グッズ化した際には即座に販売開始が可能。『Amazon限定』で販売するなんてことも考えられます。今年5月に、映画スタジオのMGMを買収するなど、コンテンツもさらに増えていくことが予想されるため、自社IPをうまく広げていくのではないでしょうか」と今後のECサイト化、つまりライセンスビジネスを他サービスも進めていくことを予想した。

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