Sonyの新技術「イマーシブリアリティ・コンサート」は、アバターの視線から”現実の追体験”を加速させる

Sonyの新技術「イマーシブリアリティ・コンサート」は、アバターの視線から”現実の追体験”を加速させる

 2020年は世界的なパンデミックにより、リアルライブの開催が難しくなった一方、配信ライブが急速に普及した年でもあった。その中でも昨年4月にオンラインゲーム『フォートナイト(Fortnite)』内で行われた人気ラッパーのTravis Scottによるバーチャルライブ「Astronomical」は、VR空間を使った仮装のライブ体験を普及させるきっかけになったといえる。

 「Astronomical」で提示されたのは、バーチャルならではの現実ではあり得ない表現やリアルライブにはない再現性、さらには現実の追体験性。それらの価値はのちに、同種のオープンワールド系プラットフォームを会場にしたkZm「VIRTUAL DISTORTION」、バーチャル渋谷での「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス」、そして、今年1月初頭に行われた乃木坂46による「乃木坂46 LIVE IN 荒野」でも踏襲されていた。

 このように振り返ってみると、先述のようなバーチャルライブならではの体験は、バーチャルライブ自体が世間に浸透するとともに、リアルライブにはない価値として浸透してきた印象を受ける。そして、バーチャルライブの進化はまだまだ止まらない。そんな予感とともに期待を膨らませてくれるのが、Sonyが発表した「イマーシブリアリティ・コンサート」だろう。

 「イマーシブリアリティ・コンサート」は、今月コロナ禍の影響により、初のオンライン開催となった電子機器の見本市『CES 2021』で発表されたもので、Sony Music Entertainmentとアメリカの大手電気通信事業者のVerizonが提携し、開発された新たな没入型のVRコンサート体験だ。

 『CES 2021』での発表では、Sony Music Labelsの社内レーベル「Epic Records」に所属するアーティスト、Madison Beerをフィーチャー。3DモーションキャプチャーでモデリングされたMadison Beerのアバターが、バーチャルで忠実に再現した、ニューヨークに実在する音楽ベニュー・ソニーホールでパフォーマンスするティーザー映像が配信された。

 このフル映像は、今冬後半に公開が予定されており、その際にはティーザー映像でMadison Beerのアバターが披露している「Boyshit」に加えて、彼女が2月26日にリリースする予定のデビューアルバム『Life Support』の収録曲がメドレーで披露されるという。映像は、PlayStation VR、Oculus VRといったVRデバイスに加え、2D映像が各種映像ストリーミングチャンネルより配信される予定だ。

 ここで改めてティーザー映像を観てみよう。このグラフィックのクオリティ、特に動きに関して、海外メディアのVarietyは、”まだまだ超洗練されたアニメーションの域に過ぎない”と少々辛口で評しているが、それでも先述のような前情報がなければ、一見しただけではリアルかバーチャルなのかの判断はつきにくい、というのが筆者の正直な感想だ。

BOUNDLESS by Sony – Madison Beer Invites You to an Extraordinary Concert Experience

 バーチャルライブ、特にアーティストをアバターという形でリアルに再現していく作業に関して、ゲームの世界には一日の長があり、その点に関しては、ゲームファンからするともしかしたらある程度見慣れたものなのかもしれない。そのため、より”リアルなアーティスト”に近づくための「再現性の進化」に対する期待は少なからずあるが、今回の「イマーシブリアリティ・コンサート」で注目したいのは、VRデバイスを使用し、仮想のライブ空間にアクセスすることで、アーティストの視線をリアルに体験できるという点だ。

 公開されている舞台裏の紹介動画のひとつにおいて、開発に関わったイマーシヴVFXおよびインタラクションエグゼクティブプロデューサーのAlex Henningは、「バーチャル空間でロックスターを再現する上で重要なのは、繊細なところにまで細心の注意を払うこと」と語り、リアルの世界における「会場にいるファンがパフォーマンスするアーティストと視線が合えばうれしい」という体験を踏まえ、その要素を取り入れていることが明かされている。つまり、バーチャルライブを観ているファンが、パフォーマンスするアバターと視線が合うという、”現実の追体験”要素が組み込まれていることは、この手のバーチャルライブにおける新たな試みであり、さらなる没入体験の鍵を握る部分だと言える。

Making Madison Beer’s Immersive Reality Concert Experience

 また、その細かな”現実の追体験”要素が活きてくるのも、実在する音楽ヴェニューを忠実にバーチャルで再現するからこそだろう。去年の例でいえば、「VIRTUAL DISTORTION」や「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス」では、多くの人にとって見慣れた渋谷駅前がバーチャルで再現されていたことによって、観る側の感情も高まり、没入感を高める大きな要素になっていたことは間違いない。

 ”現実で見慣れた場所”という点を考えれば、日本でも昨年12月に”クラブやライブハウスなど実在する場所をヴァーチャル空間上に忠実に再現し、最新テクノロジーでライブやDJ、その場所の持つ魅力もアップデートする”オンライン空間サービス『ve-nu』がローンチされた。初回は東京のベニュー、青山蜂の25周年を記念したバーチャルパーティーとなったが、青山蜂のように長きに渡り東京のシーンを支えてきた、音楽好きにとって愛着のあるベニューであれば、”現実の追体験”の場所としては申し分ないだろう。特にこのようなご時勢であればなおさらだ。

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