Post Malone ×『ポケモン』バーチャルライブから探る、現代ヒップホップとゲームの関係性

Post Malone ×『ポケモン』バーチャルライブを見た

 ラッパーとシンガーの境界線を乗り越えたボーダレスな音楽性で、音楽ファンから高い支持を得るPost Malone。そんな彼が日本時間2021年2月28日に、誕生から25周年を迎えた大人気ゲームシリーズ『ポケットモンスター(以下、ポケモン)』とコラボレーションし、バーチャルライブ「P25 Music Presents: Post Malone Virtual Concert Experience!」を行った。

 同ライブは、ポケモンの25周年を記念し、1年を通じて行われる『P25 Music』のプログラムの第一弾。音楽レーベル「ユニバーサル ミュージック グループ」と「ザ・ポケモン・カンパニー」がタッグを組んで実施した初めてのプログラムだ。

 今回、ポケモンとコラボしてバーチャルライブを行ったPost Maloneは、以前より子どもの頃から同作のファンであることを公言。初期のポケモンをプレイするためにゲームボーイカラーをまだ保持していることも明かすなど、ポケモン愛が深いことでも知られる人物だ。そんな彼はイベントに先駆けて新曲となる「Only Wanna Be With You (Pokémon 25 Version)」を公開しているが、同曲では『ポケットモンスター 金・銀』のゲーム内に登場する「タンバシティ」という町のBGMがサンプリングされたこともあり、ポケモンファンの間でも当日のパーチャルライブに対する大きな期待が寄せられていたに違いない。

Post Malone - Only Wanna Be With You (Pokémon 25 Version)

 昨年のTravis Scott『Astronomical』以降、多くのバーチャルライブが行われてきたこともあって、今では"バーチャルならではの現実では実現できない"演出を取り入れることが、この手のライブでは定番化してきている感がある。今回のライブにおいても3DCGで再現されたPost Maloneのアバターは、人気曲の「Psycho」、「Circles」、「Congratulations」、先述の「Only Wanna Be With You」などにあわせて、最初に姿を現したバーチャルで再現されたコンサートホールから、光るキノコが幻想的な雰囲気を醸し出す森、海辺や海中、溶岩が流れる洞窟、荒涼とした平原など次々にステージを移動。約13分間のバーチャルライブでは、ただ曲を並べて再生するのではなく、シャウトするようなアドリブ的な歌い方も含まれるなど、リアルライブを意識した音源が使われたことも印象的だった。

P25 Music Presents:Post Malone Virtual Concert Experience! #Pokemon25

 バーチャルライブではよく、ライブを行うアーティストのイメージをバーチャルで再現できることがメリットとして挙げられる。それがファンに高い没入感を与える一因になっているが、今回のライブでは、ポケモンとのコラボプロジェクトであることが重視され、アーティストの世界観を再現するよりも、「いかにして、"Post Malone"というキャラクターが、ポケモン25周年の盛り上げ役として機能するか」 に重きが置かれていたように感じた。

 ポケモンシリーズは最新作として今年4月末に『New ポケモンスナップ』が発売される予定だが、今回のライブ演出はその"テレビゲームの世界観"をベースにしたものであることが、すでに公開されている同作のトレイラーからうかがえる。そのことからPost Malone、ポケモンシリーズ両方のファンであればあるほど今回のライブ映像に対する没入度は高かったことだろう。

【公式】『New ポケモンスナップ』PV “ようこそ!レンティル地方”篇

 また、先述のようにPost Maloneはポケモン好きであることを公言しているラッパーだが、ヒップホップの世界においては「ポケモン」のようなテレビゲームに影響を受けることは珍しいことではない。過去にも有名ラッパーが、テレビゲームに関するリリックをラップすることは多々あり、ゲーム音楽はヒップホップのトラック制作における伝統的手法であるサンプリングの音ネタとしてこれまでに幾度となく使われるなど、ある意味でテレビゲームはヒップホップにおけるルーツのひとつになっている。

 それだけにヒップホップとテレビゲームのつながりは強く、実在のラッパーが登場した格闘ゲーム『Wu Tang: Shaolin Style』や『Def Jam Fight For NY』などがヒップホップファンをゲームの世界へと誘う大役を果たして以降、そのつながりはさらに強化されてきた。例えばKanye Westが実母をテーマにしたテレビゲームを企画したほか、最近でも若手ラッパーのTrippie Reddが新作アルバムリリースと同時にオンラインで曲を聴きながら遊べるゲーム『Trippie Redd Runner』を公開していたり、『Playstation 5』や『Xbox Series X』のプロモーションをラッパーとコラボして行うなど、その関係性は以前にも増して深まっている。

Def Jam Fight for NY - Snoop Dogg Vs Joe Budden at Crow's Office

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