DNA診断による“マッチング”は運命の相手への最短距離なのか? Netflix『The One:導かれた糸』と現実社会の婚活から考える
現実社会でも広がるDNA婚活
『The One』はフィクションだが、現実の社会でもDNAを使っていると謳う婚活サービスは始まっている。
ジーンパートナージャパンでは婚活サービスの提供とともに、DNAを用いたカップルの相性診断サービスを提供している(参照:https://www.genepartner.com/index.php/demoresult?language=jp)。魅力度、関心の種類、互いに惹かれあう度合い、妊娠の相性、総合結果の5つの項目で二人の相性を数値で診断してくれるそうだ。
全国で結婚相談所を展開するノッツェでも、DNAマッチングサービスを導入している。このサービスでは、相手の顔が見えない御簾(みす)ごしに男女を対面させるところから始まるらしい。「見た目の先入観を排除するため」だそうだ(参照:https://www.sankei.com/life/news/190601/lif1906010003-n1.html)。この記事では、「相性がいいとわかっていたから話しやすかった」や「暗示効果もあったかも」という参加者の声も紹介している。愛という不確かな領域では、相性がいいと言われれば、確かに何らかの自信につながり、関係を築く上で効果的に働くかもしれない。
しかし、科学で愛を証明してもらわないと愛があるのか確信が持てないというのは、いささか寒々しい気分にもなる。愛に科学的根拠は必要なのだろうか。自分と相性の良い相手を見つけるのは確かにとても大変な作業だ。相性がわからないからこそ、世の中には愛で傷つく人も溢れている。
愛とは、そもそも思い込みという側面もある。テクノロジーで根拠を示されれば思い込みを強化することもできるだろう。本当にDNA情報に愛の情報も含まれるのかはわからないが、こうしたサービスが一般化した時、私達の社会における恋愛活動はガラリと代わり、愛とはなんなのかという根本的な問いかけが一層深くなっていくのかもしれない。
■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。
Netflixオリジナルシリーズ『The One: 導かれた糸』独占配信中