声で繋がるマッチングアプリが無くした“無機質さ”の壁 “新卒社長”に聞く『koely』誕生の経緯

声で繋がるマッチングアプリ、誕生の経緯

 若年層を中心に、日本でも重要な出会いの場となっているマッチングアプリ。特に外出自粛期間が続く昨今は、オンラインによる人とのつながりが多く求められており、マッチングアプリを経由したオンライン飲み会なども増加傾向にある。

 そんななかでも、2月13日にリリースされた「声」でマッチングするアプリ『koely(コエリー)』は、この期間にぴったりのサービスといえるだろう。相手のプロフィールを見て8秒経つと自動的に電話がかかり、着信を受け入れると3分間の会話が可能というのが最大の特徴。誰かと話したい夜にうってつけのサービスというわけだ。

 同サービスを運営するCAmotionは、株式会社サイバーエージェントの子会社であり、同社の選抜インターンを勝ち抜き、大学在学中に起業したCEOの村岡紗綾氏が、この革新的なマッチングアプリを生み出した張本人だ。今回は彼女にインタビューを行い、サービス立ち上げの経緯やマッチングアプリに対する自身や世間の“価値観の変化”などについて、じっくりと話を聞いた。

「目の前の相手を感じられることで、傷つけようとする気持ちが減るのかも」

村岡紗綾氏

ーー今回リリースされた「koely」は、”声”に特化したサービスになっています。コンセプトを決めたきっかけはなんでしょう?

村岡紗綾(以下、村岡):元々マッチングアプリを使っていたんですが、基本的にカードが並んでいて「フリック」したあと、お互いが気になってたらメッセージを交換する、という仕組みですよね。そうなると、やり取りを始めようとなったときに、お互い「よろしくお願いします」の羅列になってしまうというか。フリックがきっかけなので当たり前にそうなってしまうと思うんですけど、その体験自体が「無機質だな」と感じて。「メッセージを始める前に、より相手のことが分かるような仕組みを作れないかな?」と考えた時に“電話”の機能を思いつきました。声を交換、声でお互いやり取りすることで相手のことをより深く、あたたかみのある形で分かるかなと。

ーーkoelyの事業内容はいつから決められていたのですか?

村岡:私が内定者の時からなので、大学4年生からですね。もっと言えば、会社を起こしたきっかけが大学3年生の冬のインターンだったので、その時に提案した内容から変わっていません。マッチングアプリを自分が使ってたっていうところもありますし、今自分たちがサイバーエージェントで何をやるか考えたときに、マッチングサービスは元々あるからその知見が活かせるし、そこに加えて「電話を使おう」「3分間にしよう」というkoelyの原型はその時点で揃っていました。

ーーそのインターンシップで大変だったことは。

村岡:意外と「協力すること」って難しいなと。自分で何でもできちゃうって思ってしまうんですけど。そうじゃなくてみんなの力を合わせて、チームの成果を最大化するにはどうしたらいいのか、という動きをすることが大変でした。人によって向き不向きもありますし、短い期間の中で相手のことを理解することが必要なので。

ーー運用を始めてみて、どの世代に人気があるというデータが出ましたか?

村岡:若い人が多いですね。男女比は6:4くらいで男性が多いです。

ーーkoelyをリリースした時の反響やその後で想定外なことはありましたか。

村岡:最初は安心安全な通話を提供するのが大変そうだなと思っていました。そこを想定して、セキュリティをちゃんとしようとしていたんですが、意外と通話中に相手を傷つけたり、明らかに不快になるような内容で話す人は少なくて。私、趣味で「人狼ゲーム」やってるんですが、人狼ゲームにも音声だけのボイス(チャット)とかチャット形式とか種類が色々あるんですよ。ただ、ボイス(チャット)だと、人狼って基本的に疑いっていうネガティブな感情を人に向けるようなゲームなので、ちょっと言い方がキツくなりがちなんですよね。その点でテキストのチャットと比較すると、ボイスチャットは暴言がないことに気づいたんです。テキストチャットは簡単に良くない言葉を使うんですけど、ボイスチャットでは良くない言葉を表現を変えているように感じました。目の前の相手を感じられることで、変なことを言ったり、傷つけようとする気持ちが減るのかもしれないと気づけたのは収穫ですね。

ーーちなみにそのセキュリティについては、どのような機能を設定しているのでしょう?

村岡:安心安全な通話体験を提供する目的で、監視のために通話内容を録音しています。例えば通話で不快な思いをしたユーザーから通報があった場合、その通話を文字起こししますし、NGワードが引っかかったら自分たちで実際に聞き直します。実際に聞いて悪意があると判断した時には、対象のユーザーに注意喚起や適切な処置をしています。文脈は電話とテキストでは全然違うので、そこの判断には気をつけています。

ーープロフィールを見てから8秒で自動的に通話がスタートしたり、通話時間に3分という制限時間が設けられているのは、心理学的な発想からですか?

村岡:何か調査があった訳でもないんですけど、発信までの時間は元々制限しようと思っていました。マッチングアプリとかは特にそうなんですが、相手のプロフィールを詳細まで見ようとするのも気になっている証拠なので、運営側としては「話した方が早いじゃん!」と思って(笑)。8秒という秒数は、並べられた情報をどのぐらい見てたら8秒が経つのかというところから計算した数字です。5秒経てば大体のユーザーは見られるので、プラス3秒。実際通話が始まったときに、「勝手に掛かっちゃった!」っていうのをコンタクトのきっかけにしてもらえればと思ってます。3分については、3分で相手の第一印象が分かるってよく言われているので、そのぐらいなのかなと(笑)。3分っていう時間はアプリ「斎藤さん」で実際に時間を測った時に、話が盛り上がった方だと3分では短く感じて、ある程度これくらいでいいかなという人は3分間くらいでちょうどいいなと思ったので、そこを目安としました。

ーーちなみに、電話が苦手な人でも利用できますか?

村岡:できます! 例えば、会う前にちょっと話すだけでもいいのであれば、普通のマッチもすることができます。いきなり「電話しなくちゃ始まらない」って訳ではないです。マッチして気になった人だけと電話する、という使い方もできますから。

ーーkoelyでは日によってトークテーマが設けてあるので、話題が思いつかない人にとってとても便利ですよね。このルールはどういう経緯で?

村岡:「どんなきっかけだと電話しようとするんだっけ」というのを考えた時に、やっぱり話す内容がイメージできないとキツいなと思ったんです。なので、トークテーマをこっち(運営)側が用意してあげたらいいんじゃないかなと思って、1日ごとに設定することにしました。あと、テーマがないと、話を上手く回せない人にとっては結構キツいと思うんです。ただ、トークテーマが用意されてたら、「この番組見てるんだ」とか「映画好きなの?」とか、話すきっかけが生まれてくるかなと。

ーー「元々マッチングアプリを使っていた」とのことですが、現在も色々なマッチングアプリを使っているんですか。

村岡:普通にユーザーとして使うことはありますね。「タップル誕生」、「Tinder」とか……ほとんど入ってます。海外のアプリもあって、研究も兼ねて入れています。

ーーそのなかで最初に始めたマッチングアプリは?

村岡:最初は「Tinder」と「タップル誕生」です。「Tinder」は大学で流行っていたので始めました。その派生で何か他の恋活アプリを調べて「タップル誕生」をダウンロードしたんです。

ーーマッチングアプリで出会ったり、付き合ったことはありましたか?

村岡:あります! 「Tinder」で出会って付き合った方もいますよ。……その後「Tinder」で浮気されたんですけど(笑)。

ーーマッチングアプリきっかけで出会った時、どのような会話をするんですか。

村岡:マッチングアプリで出会ったからと言って、話の内容を変えることはしないですね。仕事の話などもしますよ。私の場合は相手のことが分からないと会えないので、元々趣味が合う人とマッチして、趣味の話をすることが多いですね。最近はご飯屋さんやカフェに行っても、隣のテーブルに座っている人達から、きっとマッチングアプリで出会ったんだろうなという雰囲気を感じることも多くあって。本当に増えてるんだなと実感します。そういう人たちって、始めたきっかけとか当たり障りない会話をしているので、職業柄分かっちゃいます(笑)。

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