自主規制に公的認証制度ーーマッチングサービス「健全化」への道のり
着実に成長を続け、日本のデートカルチャー、ひいては人の出会いのあり方を変えつつある「マッチングアプリ」市場。マッチングエージェント/デジタルインファクトの調査によれば、2015年に120億円だった国内のオンライン恋活・婚活マッチングサービスの市場規模は、2020年には600億円を超え、2023年には852億円に到達すると予測されている。
一方、リクルートブライダル総研「婚活実態調査2017」によれば、2015年に結婚した人のうち、11.3%が「婚活サービスで相手を見つけている」と回答。結婚相談所やイベントも含めての数字だが、10人に1人を超えおり、また2016年に結婚した人のうち、恋活アプリの利用者は5人に1人(20.5%)に及んでいる。20代の若い世代では、37.6%が「婚活サービスでできた恋人とは趣味が合いそう」と回答しており、着々と、恋愛・結婚におけるインフラ化が進んでいることがわかる。
また、20代から40代の男女1000人を対象にした、調査機関Love techラボの「オンライン恋活・婚活意識実態調査」によると、「恋活・婚活サービスを使うのはふつう?」という問いに対し、「とてもそう思う」が20%、「ややそう思う」が60%と、「そう思う」との回答が計80%という結果になっている。同調査では、恋活・婚活中の人のうち32.4%がマッチングサービスを実際に利用していると回答しており、すでに所与のものとして、マッチングサービスが受け入れられている、という見方もできそうだ。
さて、今回、マッチングサービスの開発担当者に話を聞くなかで浮上してきた業界の「課題」は、多くの問題が取りざたされた「出会い系」という後ろ向きなイメージの払拭、業界全体の健全化だ。すでに一定程度進んでいると思われるが、特に、都市部だけでなく、地方にも利用者層を広げるなど、市場全体のベースアップを図る上では「テレビCM」の解禁は大きなテーマであり、そのためにも公的な認証などの仕組みづくりが急がれている。
2015年に設立された「一般社団法人結婚・婚活応援プロジェクト」(MSPJ)は昨年、インターネット婚活サービスを提供する7社で、「MSPJ インターネット婚活サービス分科会」を発足。国民生活センターの意見も参照しつつ、業界に求められるサービスのあり方について、議論を進めてきた。そして今年2月には、公益社団法人日本生産本部サービス産業生産協議会品質・認証委員会策定による「結婚相手紹介サービス事業認証制度に関するガイドライン」に準拠した、自主規制基準「MSPJ 7つの約束」を発表している。
第一に、「より強固な個人確認の徹底」。不適切なユーザー、業者の参加を防ぐためにも、本人確認の徹底は欠かせない取り組みだ。また「独身確認」も掲げられており、成婚カップルの誕生を推進するため、既婚者の利用は禁止とされている。「出会い系サイト」の初期においては、ユーザーのステータスは自己申告であることがほとんどで、相手の性別すら疑わしいことも多かった。現在は身分証明書による本人確認、フェイスブック認証などに加え、顔全体が正しく認識できる写真の提出を義務づけるサービスも多く、そのなかにおいては、悪意のあるユーザーとマッチングする危険性は大きく下がっている。
また、マッチングサービスはあくまで個々人のつながりをつくるものであるため、トラブルに発展しても「自己責任」のイメージがつきまといがちだ。そのなかで、今回の自主規制には「ルール違反の監視」「ブラックリスト(即時退会ルール)の運用」が挙げられている。個人確認の徹底も安全性を高めるための取り組みと言えるが、いわばその網にかからなかった悪質なユーザーを排除することも重要視されているようだ。ユーザーは「実名に顔写真つきで悪いことをする人はいないだろう」と油断していても、24時間体制の監視システムを運用しているサービスもあり、信頼性を高める取り組みは続いている。