連載:クリス・ブロードの「ガイドブックに載ってない日本」(第1回)
外国人YouTuberの僕が、“奇妙ではない”日本のアイデンティティに惹かれた理由
日本のアイデンティティって?
日本のアイデンティティは、目に見えるモノというより、人々の考え方や思想にあると思っています。例えば、私がいまこの連載をまとめるために会議室に入ったとき、編集者のみなさんはお辞儀をして迎えてくれましたし、名刺を渡す時にも、両手を使って渡してくれました。これは日本的な行動です。部屋に足を踏み入れた数分で、もう日本のアイデンティティが2つも表れています。イギリスでは名刺はモバイルの中に入っていて、やりとりは至ってカジュアル。合理的ですが、日本のように相手を尊重するコミュニケーションにはなりにくいんです。
またわかりやすいところで言えば、討論の仕方も日本人は独特です。例えば、街中で派手に舌戦を繰り広げている人を見たことがない。意見を対立させて、相手を黙らせてやろう、というコミュニケーションは、欧米ではよく見かけるものです。しかし日本では、一人ひとりが発言の順番を待ち、人の言葉に耳を傾けて、話し終わったら黙る。主義主張が苦手で、建設的なディベートができない、という見方もできますが、この「沈黙」という文化も非常に面白く、思慮深さにつながるものだと考えています。
次回はついに日本に降り立った私が、日本文化に触れ、「YouTuber」と呼ばれるまでのストーリーをお話ししたいと思います。
■Chris Broad(クリス・ブロード)
30歳、イギリス出身。YouTubeチャンネル「Abroad in Japan」を運営。登録者数250万人。日本を拠点に活動するトップ外国人YouTubeクリエーターとして200以上の動画を制作。東北地方太平洋沖地震に関するドキュメンタリーや、L’Arc-en-Cielのボーカルとして世界中にファンを持つHYDEのソロ活動密着動画など動画のジャンルは多岐にわたり、訪日インバウンド集客から実行まで行うTokyo Creativeと共に、日本各地の自治体や企業向けのコンテンツも制作している。2012年にALTとしてJETプログラムに参加し、英語教師として2,000時間以上を費やした後にフルタイムの動画クリエーターへ。夢はプロのフィルムメーカーになり、チョコレートでできた家を建てること。