『CES 2021』で『Galaxy Buds+ BTS Edition』がベストオブイノベーション受賞 選出の背景を考える

『Galaxy Buds+ BTS Edition』がCESベストオブイノベーション受賞

BTSの爆発的人気から分かる事

 ここでBTSの市場価値にも目を移してみたい。元々人気のあったBTSだが昨年は特に世界的大ブレイクした事も記憶に新しい。BTSの大ブレイクは、パンデミックの影響と切っても切れない関係だと筆者は解釈している。

 昨年の4月以降各地で行われたロックダウンや緊急事態宣言の影響で、多くの人々が家を出ることを許されずストレスフルな状況で日々を過ごさなければならなくなった。ステイホームの動きは地域や国によって程度の差はあるものの、概ね全世界的に平等に課せられたタスクだったと考えられる。

 映画やコンサート、演劇も全て興行をストップされ、テレビもリモートものが増えた。ただでさえストレスフルな生活を強いられている中で、新しいエンタメを楽しむ機会も奪われたのがこのパンデミックだった。

 BTS初のフル英語楽曲『Dynamaite』がリリースされたのは、そんなコロナ禍が少しだけ沈静化した8月終わりである。1980年代ポップチューンを思わせる軽快なリズムと確かな歌唱力、「人生はダイナマイト」という、コロナ禍に於いて存在感を放つポジティブなメッセージ、そして真似したくなるような魅力的なダンス。これらの要素があいまってBTSの人気は爆発したのは言うまでもない。

 事実、『Dynamaite』は9月の米Billboard「HOT100」チャートの第1位を3度も獲得するメガヒットとなった。

 また、BTSが韓国のグループであることも人気の理由の一端を担っていると筆者は考える。昨年は米国アカデミー賞の作品賞にの『パラサイト』が選ばれ、アジア映画初の快挙を成し遂げるなど、韓国コンテンツは今世界で注目されている。

 その裏には現代におけるダイバーシティへの注目度の高さがある。人種の垣根を越えて人気を博すBTSの存在は、アメリカにおいても多くのマイノリティ(人種、性別、年齢問わず)を元気づける存在であり、実に「現代的」な価値観の象徴ともいえる。

BTSの世界的なブレイクと名機イヤホンの華麗なる共演が決め手

 さて、ここでイヤホンの話に戻ろう。そんなBTSの大ブレイクを受けて2020年の秋に『Galaxy Buds+ BTS Edition』が発売された。テクノロジーの見本市である『CES 2021』でこのモデルが注目された背景には、もちろんBTS人気は切っても切り離せないだろう。

 新型の『Galaxy Buds+ 』が完全ワイヤレスイヤホンの中でもクオリティ面において高い信頼性を誇っている点、ファン向けの機能とはいえイヤホンケースに特殊な機能を搭載する等のイノベーション、単なる人気アイドルの枠を超え社会現象と化したBTS人気を鑑みると、『Galaxy Buds+ BTS Edition』がベストオブイノベーションに選出された事も頷けるはずだ。

韓国プロダクトと韓国コンテンツは世界の中心にいる

 K-POPや映画、ドラマなどの現代の韓国コンテンツや、Samsungプロダクトなど韓国が生み出す先進的なイノベーションには脅威を感じざるを得ない。まさに世界の最先端をひた走っていると言っても過言ではない。その背景には韓国側の努力のみならず、世界的に「多様性を重んじる」文化が浸透しつつある事も見て取れる。

 筆者自身は買えるものなら全てSamsung製のプロダクトに埋め尽くされたいほどSamsungを信頼しているが、残念ながら日本国内での需要は思っている以上に低いため、その素晴らしいプロダクトの数々がほとんど輸入されていない。良いプロダクトを使う選択肢がないのは、実に悲しい出来事だと思う。

 日本においてもイノベーションを爆発させるためには、本当の意味で世界のイノベーションの市場の中に頭まで浸かる必要があるのではないか。それは何もプロダクト業界のみならず、エンタメなどのコンテンツ市場でも言える事だと考えている。

■長門繭
フリーライター兼イラストレーター。ブログ運営を中心に2016年からライターとして活動を開始し2018年に独立。エンタメ系、旅行、テック、時事など得意分野は幅広い。現在はイラストレーターとしても活動中。

トップ画像:Amazonより

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