『Project:;COLD』総監督を直撃ーー反響を呼ぶ“SNSミステリー”はどのように作られ、どこへ向かうのか

『Project:;COLD』総監督インタビュー

ファンベースに根ざしたIPコンテンツの作り方

ーーここまでのお話を聞いていると、リリース以前のプランニング、リリース後の現在もかなり手間暇をかけられた企画だという印象を受けます。一方で以前、公式アカウントでマネタイズのプランはないとツイートされていましたね。マネタイズの予定がないのにこのような企画が動いているのはどういった背景があるのでしょう?

総監督:今までのIPコンテンツというのは、買うのとファンになってもらうのを同時にやる、というプロモーションが主だったと思います。そういったIPの作り方に一石を投じたいという想いがありました。買ってもらうこととファンになってもらうこと、これらは本当は別々のはずという問題意識です。なので『Project:;COLD』は、まず興味を持ってもらう、好きになってもらう。その後にみなさんに必要とされれば、商品も開発していく。それをちゃんと順番にやってみよう、というプロジェクトでもあるんです。

 なので、今回は興味を持ってくれる人を増やしていく、応援してくれる方を増やしていくってことに特化しています。ここではマネタイズを考えず、とにかく我々がやりたいことを一度やりきる。そこをしっかり見てもらいたいと思っています。

ーーファンになってもらった上で、その人たちと一緒に何かを作っていくというイメージでしょうか。

総監督:はい。今の時代は「一緒にやる」というのがキーワードだと思っています。ファンの方がこういう物が欲しいと言っている。では作りましょう、というのが次の時代のIPの作り方で、それを実践できればと思っています。例えば、全ての展開が終わった後に物語をダイジェストで見たいと言う人が大勢いるなら、それをやりましょう。もっと次の話が観たいという人がいるなら、それを作りましょう。そういった形で広がっていければ良いと思っているんです。

ーー新しいIPの作り方や違うエンタメ、今の時代だからこそできる表現の仕方とかを世に問うていくプロジェクトであると。それを強く意識したきっかけは?

総監督:新しいものが入り込む余地がどんどんなくなっている、という問題意識がありました。これだけ人気IPが飽和的に存在する中で、新しいものを作りました、買ってください、ファンになってくださいということへの苦しさというか。

 自分たちがやりたいことをやって、それを支援してくれる人がいる。そこからコミュニティが広がってくという、草の根から始まっていくコンテンツでありたいという願いが詰まっているところはあります。

ーーなるほど。たとえばクラウドファンディングに近い発想ということですよね。

総監督:支援の気持ちから生まれていくコンテンツという意味では近い形だとは思います。

 そうして始まったものにはいくつか前例があると思っていて、たとえば昔ニコニコ動画から始まった『カゲロウプロジェクト』とか、同人の世界から誕生した『ひぐらしのなく頃に』もそうですよね。何かすごい人気になることを目指したというよりは、もっと盛り上げたいという有志の気持ちが高まり、一つ大きなムーブメントを作っていった。

 「作りました、売ります」みたいなマーケットインな考え方ではなく、みんなで作っていくのが、ユーザーが積み上げていくコンテンツになるための唯一の方法だと思っているので、そこに対する一つの提案だという意識を持っています。

ーーそういう意味では考察や謎解き以外にもファンアートも出てきてますよね。

総監督:はい。これも我々の一存ではどうにもならない部分もあるんですけど、そういった活動は積極的にやってもらえればありがたいです。

 もちろん我々も「持ち出しでやって損したけど、盛り上がったからそれでいい」で終わってはいけないと思っています。また次の展開に繋げるために、何かしらのかたちで次の開発費用を得るための活動をしていく必要があります。

 最近のクラウドファンディングなどもそうであるように、お金の集まる仕組みが変わっていて、信用や愛情に対してお金が集まる時代になっていると思います。もし『Project:;COLD』の仕組みが機能すれば、マネタイズが難しくて量産できなかったARGなどはもっと発展できると思いますし、今回のようなSNSミステリーの枠組みを超えて、もっと新しいエンタメの展開方法として確立するだろうと、そういう仮説を抱いて、今まさにチャレンジしているところなんです。

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